墨染桜編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「緋真 、身体はどうだ」
その声にぱっと顔をあげる。
嬉しそうに笑うその顔は、日に日に女性らしくなり、白哉は微かに目を細めた。
その僅かながらの微笑みに緋真は顔を赤らめる。
彼女にしてみれば、白哉も会う度に麗しくなっていくのだ。
その2人の微笑ましい様子を知るのは、茶を出しに来た緋真が世話になっている呉服屋の使用人の老婆くらいだ。
彼女は穏やかに目を細めてから一礼し、部屋から出ていった。
「白哉様、今日は加減がいいの。
それで少し手を動かさせてもらっていて」
親切な呉服屋の夫婦は、奉公にきていた身とはいえ長年娘の様に可愛がった緋真を体調を崩した以降も追い出すことなく、こうして調子の良い時に仕事をさせるだけで引き続き住まわせてくれている。
その点においては、奉公先として咲にこの夫婦を紹介した京楽に感謝せざるを得ないと白哉も思っていた。
「そうか。
ならば……よい」
そうは言えど、彼女の身体は町医者ではもう手の施し用がない。
何でも魂魄の一部に傷が付いており、それが長い時間をかけて彼女を蝕んできたのだと言う。
気づいた時には既に手遅れであるというのが医者の見解であった。
緋真に尋ねたところで思い当たらないと言うし、悪戯に時を過ごすのにも嫌気がさしてきた為、これを機に彼女を朽木邸に引き取り、医療を施すことができればと、一人胸の内に算段していた。
幼い頃支えであった咲と絶縁状態となった白哉は、我が身を省みない鍛錬を続けていた。
何も信じず、ただ独りで強くなろうと心に決めて日々努める彼を支えたのは、緋真だった。
孤独から救い、父が白哉の中に遺した大切なものを拾い集め、父への尊敬と誇りを思い出させた。
咲との事も静かに見守り続けてくれたおかげで、副隊長となった暁には彼女との仲を戻すに至った。
席こそないものの、護廷の刃と言っても過言でない力を持つ咲との関係改善は、最早自分達だけの問題ではないことは聡い白哉は痛い程理解していた。
彼女の手綱を握り活躍させる事は、六番隊副隊長として欠かすことのできない重大な責務なのだ。
その全てを叶えるまで共にあり、その細腕で静かに白哉を支え続けた緋真は、いつしか白哉にとってなくてはならない存在となっていた。
彼女は最愛の恩人 ーー それは憧れと懸想とに縺 れた咲への激しい憎悪の先に見えた光だった。
「白哉様?」
沈黙に不思議そうに首を傾げる様子に、白哉は口を開いた。
「そうだ、もうすぐ遠征から咲が帰ってくる。
一度連れてこよう」
「まぁ、本当ですか!」
ぱっと頬を赤らめる姿に、良い知らせを届けられて良かったと思う。
「でもお忙しいでしょう?」
不安げな顔に小さく首を振り、彼女よりずっと不安げな顔をしていた咲を思い出す。
ー 私は、緋真さんに何も告げずに姿を消しました。
ただ放り出されて、不安だった事もおありでしょう ー
ー お前は信じたのだろう、彼奴を。
全てお前の見立て通りだ。
ただの幼い少女が、いつの間にか自分の力で関係を作り、職を得、生きられるようになった。
京楽や浮竹の知り合いも店に通うようになり、お得意様も増えたと喜んでいる。
……何より、彼奴はそんな事でお前を恨む者ではない ー
そう言うと、ようやく少し困ったように笑った。
「疎遠だった分戸惑いもあるようだが、会いたがっていた。
きっと、今までずっとそう思っていたのだろう」
彼女が会いに来なかったのは、白哉への態度を徹底する為だったのだろう。
言い換えれば白哉のせいでもあるわけだが、そう言うのは咲には不本意に違いない。
彼女は白哉を優先したのだ。
敬愛する 父蒼純の遺言を、叶える為に。
その声にぱっと顔をあげる。
嬉しそうに笑うその顔は、日に日に女性らしくなり、白哉は微かに目を細めた。
その僅かながらの微笑みに緋真は顔を赤らめる。
彼女にしてみれば、白哉も会う度に麗しくなっていくのだ。
その2人の微笑ましい様子を知るのは、茶を出しに来た緋真が世話になっている呉服屋の使用人の老婆くらいだ。
彼女は穏やかに目を細めてから一礼し、部屋から出ていった。
「白哉様、今日は加減がいいの。
それで少し手を動かさせてもらっていて」
親切な呉服屋の夫婦は、奉公にきていた身とはいえ長年娘の様に可愛がった緋真を体調を崩した以降も追い出すことなく、こうして調子の良い時に仕事をさせるだけで引き続き住まわせてくれている。
その点においては、奉公先として咲にこの夫婦を紹介した京楽に感謝せざるを得ないと白哉も思っていた。
「そうか。
ならば……よい」
そうは言えど、彼女の身体は町医者ではもう手の施し用がない。
何でも魂魄の一部に傷が付いており、それが長い時間をかけて彼女を蝕んできたのだと言う。
気づいた時には既に手遅れであるというのが医者の見解であった。
緋真に尋ねたところで思い当たらないと言うし、悪戯に時を過ごすのにも嫌気がさしてきた為、これを機に彼女を朽木邸に引き取り、医療を施すことができればと、一人胸の内に算段していた。
幼い頃支えであった咲と絶縁状態となった白哉は、我が身を省みない鍛錬を続けていた。
何も信じず、ただ独りで強くなろうと心に決めて日々努める彼を支えたのは、緋真だった。
孤独から救い、父が白哉の中に遺した大切なものを拾い集め、父への尊敬と誇りを思い出させた。
咲との事も静かに見守り続けてくれたおかげで、副隊長となった暁には彼女との仲を戻すに至った。
席こそないものの、護廷の刃と言っても過言でない力を持つ咲との関係改善は、最早自分達だけの問題ではないことは聡い白哉は痛い程理解していた。
彼女の手綱を握り活躍させる事は、六番隊副隊長として欠かすことのできない重大な責務なのだ。
その全てを叶えるまで共にあり、その細腕で静かに白哉を支え続けた緋真は、いつしか白哉にとってなくてはならない存在となっていた。
彼女は最愛の恩人 ーー それは憧れと懸想とに
「白哉様?」
沈黙に不思議そうに首を傾げる様子に、白哉は口を開いた。
「そうだ、もうすぐ遠征から咲が帰ってくる。
一度連れてこよう」
「まぁ、本当ですか!」
ぱっと頬を赤らめる姿に、良い知らせを届けられて良かったと思う。
「でもお忙しいでしょう?」
不安げな顔に小さく首を振り、彼女よりずっと不安げな顔をしていた咲を思い出す。
ー 私は、緋真さんに何も告げずに姿を消しました。
ただ放り出されて、不安だった事もおありでしょう ー
ー お前は信じたのだろう、彼奴を。
全てお前の見立て通りだ。
ただの幼い少女が、いつの間にか自分の力で関係を作り、職を得、生きられるようになった。
京楽や浮竹の知り合いも店に通うようになり、お得意様も増えたと喜んでいる。
……何より、彼奴はそんな事でお前を恨む者ではない ー
そう言うと、ようやく少し困ったように笑った。
「疎遠だった分戸惑いもあるようだが、会いたがっていた。
きっと、今までずっとそう思っていたのだろう」
彼女が会いに来なかったのは、白哉への態度を徹底する為だったのだろう。
言い換えれば白哉のせいでもあるわけだが、そう言うのは咲には不本意に違いない。
彼女は白哉を優先したのだ。