墨染桜編
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白哉は銀嶺の視線に促されるままに、自らの霊絡を一本取り出す。
銀嶺の隣では浮竹も穏やかに控えていた。
紅いそれは血の色のようである。
そして目の前で深く首を垂れる咲にも、同じく赤い赤色従首輪があり、鈍く光を反射した。
霊術院の入学祝いに贈られた髪紐をふと思い出した。
彼女は何を思いあの髪紐を選んだのだろう。
贈られた時は咲と母との過去など知りもしなかったからただの偶然だと思って受け取った。
だが朽木邸にあれだけ出入りしていたのだ。
母月雫 と親交もあったはずだ。
だからこそ紅い紐に通された真珠 が美しい髪紐を選んだに違いないと、今ならば思うーー月の雫とは真珠の別名なのだから。
祖父の話によれば母を斬らねば自分がこの世に産まれることは無かった。
彼女が母を殺さなければ、自分はここにはいなかった。
だが親しかった者を、それも朽木家次期当主の妻を殺す覚悟とは如何程か。
しかも母を操り死に追いやった響河は、謀反後も咲に執着していたという。
彼の腹心の部下であった為に罰された事も考えると、恐らく咲は響河とも親しかった。
父蒼純とのような信頼関係を築いていたとしても、なんらおかしい事はない。
咲は、どれ程の思いで自分を見守ってきたのだろうかーー
「白哉」
珍しく物思いに耽る白哉の後ろから、祖父が促すように呼んだ。
目の前で平伏す咲は、これから白哉の直属の部下となる。
響河の部下であったように、そして蒼純の部下であったように。
幼児の頃は見上げていたのに、いつの間にか平伏す程小さくなったその姿。
背丈も、立場も、力も、全てが逆転した。
「面を上げろ」
咲は驚いたように顔を上げた。
視線が、ぶつかる。
平伏したまま赤色従首輪の上に霊絡を落とせば儀式は済むと、白哉も咲も言われていたのだ。
白哉は屈むと霊絡を、丁寧にその首に巻きつけた。
彼女は口に出さなくとも、これで白哉の気持ちの全てを汲んでくれるだろうと思ってのことだ。
霊絡は赤色従首輪に溶け込むように消えていく。
それと同時に今までよりも明確に彼女の霊圧を感じるようになった。
色紙に引かれた墨の様な明確な感覚。
彼女の命は白哉の手の中にあるも同然となった。
所定の方法で霊圧を込めれば、遥か遠くにいる彼女を絞殺することさえできる。
逆に彼女の霊圧の強弱も詳細に捕らえられる様になったことから、彼女が戦闘で危機的状況にある事がわかれば助けに向かう事もできる。
生かすも殺すも、白哉次第という訳だ。
「励め」
「御意」
短い言葉の遣り取りが全てだった。
2人の邂逅に、浮竹は穏やかに微笑む。
ー その辛さがきっと、彼の糧になる ー
ー傷で済むならそれでいい。生きて欲しいんだ ー
白哉との絶縁の為に朽木家に向かう咲は折れそうな顔でそう言った。
その覚悟が、無事に実を結んだのだ。
願いが叶う事の少ないこの世でそれが叶ったのは、単 に2人の努力の賜物であると浮竹は思っていた。
願わねば叶う事も叶わないのは百も承知。
それでも願い続けることのなんと苦しい事か。
愛しい女の嬉しそうな様子に見当違いの苦しさを感じる自分を、大概であると心の内で嘲笑った。
銀嶺の隣では浮竹も穏やかに控えていた。
紅いそれは血の色のようである。
そして目の前で深く首を垂れる咲にも、同じく赤い赤色従首輪があり、鈍く光を反射した。
霊術院の入学祝いに贈られた髪紐をふと思い出した。
彼女は何を思いあの髪紐を選んだのだろう。
贈られた時は咲と母との過去など知りもしなかったからただの偶然だと思って受け取った。
だが朽木邸にあれだけ出入りしていたのだ。
母
だからこそ紅い紐に通された
祖父の話によれば母を斬らねば自分がこの世に産まれることは無かった。
彼女が母を殺さなければ、自分はここにはいなかった。
だが親しかった者を、それも朽木家次期当主の妻を殺す覚悟とは如何程か。
しかも母を操り死に追いやった響河は、謀反後も咲に執着していたという。
彼の腹心の部下であった為に罰された事も考えると、恐らく咲は響河とも親しかった。
父蒼純とのような信頼関係を築いていたとしても、なんらおかしい事はない。
咲は、どれ程の思いで自分を見守ってきたのだろうかーー
「白哉」
珍しく物思いに耽る白哉の後ろから、祖父が促すように呼んだ。
目の前で平伏す咲は、これから白哉の直属の部下となる。
響河の部下であったように、そして蒼純の部下であったように。
幼児の頃は見上げていたのに、いつの間にか平伏す程小さくなったその姿。
背丈も、立場も、力も、全てが逆転した。
「面を上げろ」
咲は驚いたように顔を上げた。
視線が、ぶつかる。
平伏したまま赤色従首輪の上に霊絡を落とせば儀式は済むと、白哉も咲も言われていたのだ。
白哉は屈むと霊絡を、丁寧にその首に巻きつけた。
彼女は口に出さなくとも、これで白哉の気持ちの全てを汲んでくれるだろうと思ってのことだ。
霊絡は赤色従首輪に溶け込むように消えていく。
それと同時に今までよりも明確に彼女の霊圧を感じるようになった。
色紙に引かれた墨の様な明確な感覚。
彼女の命は白哉の手の中にあるも同然となった。
所定の方法で霊圧を込めれば、遥か遠くにいる彼女を絞殺することさえできる。
逆に彼女の霊圧の強弱も詳細に捕らえられる様になったことから、彼女が戦闘で危機的状況にある事がわかれば助けに向かう事もできる。
生かすも殺すも、白哉次第という訳だ。
「励め」
「御意」
短い言葉の遣り取りが全てだった。
2人の邂逅に、浮竹は穏やかに微笑む。
ー その辛さがきっと、彼の糧になる ー
ー傷で済むならそれでいい。生きて欲しいんだ ー
白哉との絶縁の為に朽木家に向かう咲は折れそうな顔でそう言った。
その覚悟が、無事に実を結んだのだ。
願いが叶う事の少ないこの世でそれが叶ったのは、
願わねば叶う事も叶わないのは百も承知。
それでも願い続けることのなんと苦しい事か。
愛しい女の嬉しそうな様子に見当違いの苦しさを感じる自分を、大概であると心の内で嘲笑った。