新副隊長編
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「それから……卯ノ花咲のことを、まだ恨んで居るか」
白哉は微かに目を細め、緩く首を振った。
「あの時の咲はまるで、私をけしかけているようでした。
強くなる為、固い決意をさせるために。」
そんなふうに考えられるようになったのは最近だった。
自分の知る咲は、決して父を裏切る様な人物ではなかった。
父も全幅の信頼を置いていた。
だからこそ白哉は、咲が殺したと聞いて激怒したのだ。
どれ程彼女の裏切りを信じようとしても、信じられなかった。
父と咲の信頼関係は、幾多の死戦を共に乗り越えた者特有の、ただの上司と部下のそれ以上の強さだったはずだと。
ではもし、2人の信頼関係が最期の時まで決して崩れなかったのだとしたらーーいつしかそんな仮定が頭を過ぎるようになった。
答えは一つで、父を殺すことこそが父蒼純の命令 だったということになる。
だがそれは、自分の信じた強き父 の姿とは相反するものだ。
人は生きてこそ。命を捨てる覚悟をするなら、その気力で刀を振るうべきだという白哉の信条に、父は反する様な人であったというのか。
自分が最も尊敬する亡父の強さを疑うことなど、あってよいものだろうか。
咲の忠誠と父の強さ、そのどちらかが偽り 。
その答えを白哉はずっと出せずにいた。
だがもし、一心が口走った父の虚化が真実なのだとしたら、その死は虚に寄生されることより恐ろしい惨事。
「父の死は……」
「虚に取り憑かれたのとは様子が異なると彼奴は申していた。
虚化である、とも。
全ては伏せた真実だ」
それは酷く重く苦しい言葉であった。
四大貴族である朽木家から虚が出た。
虚化の研究をしていたと言われる者が追放されて久しい今、いくつかその原因は考えられる。
だが思慮深かった蒼純が犠牲になったことを考えると事の根は深く、裏切り者は然程遠い所にいるわけではあるまい。
膝の上の整った手を、白哉は白くなるほど硬く握りしめた。
ー 部下を思う甘さ、情に流される弱さ。
誇りのために命を諦める・・・あまりに無責任だ。
だから斬り捨てた ー
そう言い捨てる怒りに燃えた瞳。
彼女が願った自分であることを白哉は願い、口を開いた。
「彼女がいてこそ、今の私がある」
時は熟したと銀嶺は静かに頷いた。
「卯ノ花は……お主の名づけ親だ」
予想外の言葉に目を見開く。
「お前の母は、響河の力によって操られ、腹のなかのお前を殺そうとしていた。
当然必死に抵抗していたが、一人の力ではどうしようもなかった。
卯ノ花は母の腕を切り落とし、お前に名づけ、魂を呼びとどめた。
お前の母はお前を生むと力尽きたように死んだ。
彼奴はあの惨劇を白く眩ゆいお前の光で変えんと白哉と名付けたのだ。
そしてお前の父をも殺したーーあ奴は今も己を責め続けておる」
暗い表情を見せる咲を思い出し、白哉は俯く。
「腹心の部下でもあった卯ノ花を、響河は最後まで欲しがった。
絶望を味あわせ、自暴自棄にしたところを攫うつもりであったのだろう。
何度も窮地に立たせ、そして多くの信頼する者を殺させた。
それでも卯ノ花は護挺に忠誠をつくし、響河の封印にまで力を発揮した。
……そして平和を取り戻した暁に、四十六室によって見せしめに裁かれたのだ」
「まさかそれが赤色従首輪……」
「左様。
愚かな者が二度とあのような反乱を起こさぬ為に。
刑は150年の席官の剥奪と赤色従首輪の着用、1週間の晒し刑及びその間の絶食。
奴の霊圧は強い。
絶食後は死体のようじゃった」
白哉はじっと黙り込む。
2人の髪を、風がそっと揺らした。
「蒼純の時もそうじゃ。
私が止めるべきところを、不幸の巡り合わせであった。
あとを追って死ぬつもりであったのだろう。
だが蒼純はそれを許さず、白哉、お前を頼んだ。
……全ては彼奴の血の涙があってこそ」
自分の知る以上に護られていた事実と、彼女の意図によるとはいえ隔たれた月日を思うと、羞恥とも安堵とも怒りとも感謝ともつかぬ思いが胸に溢れ、思わず俯き固く目を閉じた。
「お前を、次の赤色従首輪の主とする」
静かな声が耳を打つ。
己の命を護る為にも受けた罰の鎖を握る。
それは恐ろしくもあり、彼女を護る最後の一手を握る救いでもあった。
白哉は深く、深く頭を下げる。
「……御意。」
白哉は微かに目を細め、緩く首を振った。
「あの時の咲はまるで、私をけしかけているようでした。
強くなる為、固い決意をさせるために。」
そんなふうに考えられるようになったのは最近だった。
自分の知る咲は、決して父を裏切る様な人物ではなかった。
父も全幅の信頼を置いていた。
だからこそ白哉は、咲が殺したと聞いて激怒したのだ。
どれ程彼女の裏切りを信じようとしても、信じられなかった。
父と咲の信頼関係は、幾多の死戦を共に乗り越えた者特有の、ただの上司と部下のそれ以上の強さだったはずだと。
ではもし、2人の信頼関係が最期の時まで決して崩れなかったのだとしたらーーいつしかそんな仮定が頭を過ぎるようになった。
答えは一つで、父を殺すことこそが
だがそれは、自分の信じた
人は生きてこそ。命を捨てる覚悟をするなら、その気力で刀を振るうべきだという白哉の信条に、父は反する様な人であったというのか。
自分が最も尊敬する亡父の強さを疑うことなど、あってよいものだろうか。
咲の忠誠と父の強さ、そのどちらかが
その答えを白哉はずっと出せずにいた。
だがもし、一心が口走った父の虚化が真実なのだとしたら、その死は虚に寄生されることより恐ろしい惨事。
「父の死は……」
「虚に取り憑かれたのとは様子が異なると彼奴は申していた。
虚化である、とも。
全ては伏せた真実だ」
それは酷く重く苦しい言葉であった。
四大貴族である朽木家から虚が出た。
虚化の研究をしていたと言われる者が追放されて久しい今、いくつかその原因は考えられる。
だが思慮深かった蒼純が犠牲になったことを考えると事の根は深く、裏切り者は然程遠い所にいるわけではあるまい。
膝の上の整った手を、白哉は白くなるほど硬く握りしめた。
ー 部下を思う甘さ、情に流される弱さ。
誇りのために命を諦める・・・あまりに無責任だ。
だから斬り捨てた ー
そう言い捨てる怒りに燃えた瞳。
彼女が願った自分であることを白哉は願い、口を開いた。
「彼女がいてこそ、今の私がある」
時は熟したと銀嶺は静かに頷いた。
「卯ノ花は……お主の名づけ親だ」
予想外の言葉に目を見開く。
「お前の母は、響河の力によって操られ、腹のなかのお前を殺そうとしていた。
当然必死に抵抗していたが、一人の力ではどうしようもなかった。
卯ノ花は母の腕を切り落とし、お前に名づけ、魂を呼びとどめた。
お前の母はお前を生むと力尽きたように死んだ。
彼奴はあの惨劇を白く眩ゆいお前の光で変えんと白哉と名付けたのだ。
そしてお前の父をも殺したーーあ奴は今も己を責め続けておる」
暗い表情を見せる咲を思い出し、白哉は俯く。
「腹心の部下でもあった卯ノ花を、響河は最後まで欲しがった。
絶望を味あわせ、自暴自棄にしたところを攫うつもりであったのだろう。
何度も窮地に立たせ、そして多くの信頼する者を殺させた。
それでも卯ノ花は護挺に忠誠をつくし、響河の封印にまで力を発揮した。
……そして平和を取り戻した暁に、四十六室によって見せしめに裁かれたのだ」
「まさかそれが赤色従首輪……」
「左様。
愚かな者が二度とあのような反乱を起こさぬ為に。
刑は150年の席官の剥奪と赤色従首輪の着用、1週間の晒し刑及びその間の絶食。
奴の霊圧は強い。
絶食後は死体のようじゃった」
白哉はじっと黙り込む。
2人の髪を、風がそっと揺らした。
「蒼純の時もそうじゃ。
私が止めるべきところを、不幸の巡り合わせであった。
あとを追って死ぬつもりであったのだろう。
だが蒼純はそれを許さず、白哉、お前を頼んだ。
……全ては彼奴の血の涙があってこそ」
自分の知る以上に護られていた事実と、彼女の意図によるとはいえ隔たれた月日を思うと、羞恥とも安堵とも怒りとも感謝ともつかぬ思いが胸に溢れ、思わず俯き固く目を閉じた。
「お前を、次の赤色従首輪の主とする」
静かな声が耳を打つ。
己の命を護る為にも受けた罰の鎖を握る。
それは恐ろしくもあり、彼女を護る最後の一手を握る救いでもあった。
白哉は深く、深く頭を下げる。
「……御意。」