新副隊長編
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ー 貴方はきっと、強くなられる。
誰よりも、強く、優しい死神にお成りになる。
……私はいつか、そんな貴方に仕えたいです。
この罪が、許されるならば ー
まだ幼い白哉を抱いてそう涙した健気な咲の背中を、銀嶺は思い出していた。
絶望の中で、己の罪を悔い、そして残された未来を守らんとするそのか細い背中にかける言葉を、当時の銀嶺は持たなかった。
では今ならばどうか。
(否、今とて同じ。
彼女は私の知るあの人 と瓜二つであるのに、まるで異なる。
それは卯ノ花隊長が言う通り、当然の事。
あの人 が生きてきた数百の月日があるように、彼女にも彼女だけの数百の月日がある。
そして時代が変わった今、彼女と歩むのは、私ではないーー)
銀嶺は黙想を解き、気配に目を開ける。
自分の座る縁側に流れる風、降る光、庭の池の水音が息を吹き返した様に流れ込んできた。
(そうだ、ここからまた始まる)
「白哉です。失礼いたします」
「入れ。
こちらへ」
ついに白哉が副隊長となった。
その腕につけられた副隊長章は一心から引き継いだ物ーーその昔、蒼純が着けていたものだ。
促されるまま、室内に踏み込み、銀嶺と少し距離を置いて孫は座した。
「……幼い頃が懐かしいな」
「はい」
「幼い頃、お主はよくここで、卯ノ花の足に纏わりついておった」
その言葉に、白哉はふっと表情を暗くし、そして表情を引き締めた。
「お前が副隊長となる時、話そうと思ってきた事がある」
銀嶺は庭を眺め、一呼吸おいてから振り返り、話し始めた。
「明翠にはその昔、婿がいた。
響河という男だ」
あれほど美しい伯母がなぜ結婚しないのか、昔から不思議に思っていたが聞くことはなかった。
聞いてはならないことだと、賢い白哉は知っていたのだ。
「長い昔話だが、お前は知らねばならぬ。
忘れてはならぬ」
そして静かに語られた話は、自分の知らない、朽木家の過去。
祖父の義理の息子の物語だった。
「もし万が一その封印が解けた時はあの男を切ることこそ朽木家当主の務め。
あの悪しき者を再び陽の目にさらすことはならん。」
銀嶺の鋭く厳しい眼光は、いかなる反論も敗北も許さないと訴える。
「はい」
白哉は静かに頷いた。
「そしてその者こそそなたの母を殺した者だ。」
白哉は目を見開く。
己の母が生まれてすぐに亡くなったと聞いており、その存在は写真でしか見た事がない。
立派な死神で一番隊の五席を務めたが、病死した聞かされていた。
「血が繋がっていないとは言え、何を理由に家族に刃を……」
銀嶺は視線を落とした。
「儂の至らなさよ」
白哉の前で常に偉大であった祖父は、この時初めて小さく、弱々しく見えた。
一体祖父の何が至らなかったというのか。
その至らなさが何故、義理の息子に義理の娘を殺させたというのか。
白哉は眉を顰める。
祖父がその反逆者を救う道は、あったのかもしれない。
だがやはり、その響河が至らぬ者であったに違いないのだ、と。
そしてその夫が殺した義姉の子を育てる明翠は、何を思って白哉を見つめていたのだろうと、ふと疑問がよぎる。
政略結婚故に然程の想いも無かったのか、それとも、恐ろしい何かを腹の中に隠していたか。
薄暗さを感じさせぬ彼女の愛に育てられた身としては、前者を信じたいと思うも、真実は誰にも聞けまいと思った。
誰よりも、強く、優しい死神にお成りになる。
……私はいつか、そんな貴方に仕えたいです。
この罪が、許されるならば ー
まだ幼い白哉を抱いてそう涙した健気な咲の背中を、銀嶺は思い出していた。
絶望の中で、己の罪を悔い、そして残された未来を守らんとするそのか細い背中にかける言葉を、当時の銀嶺は持たなかった。
では今ならばどうか。
(否、今とて同じ。
彼女は私の知る
それは卯ノ花隊長が言う通り、当然の事。
そして時代が変わった今、彼女と歩むのは、私ではないーー)
銀嶺は黙想を解き、気配に目を開ける。
自分の座る縁側に流れる風、降る光、庭の池の水音が息を吹き返した様に流れ込んできた。
(そうだ、ここからまた始まる)
「白哉です。失礼いたします」
「入れ。
こちらへ」
ついに白哉が副隊長となった。
その腕につけられた副隊長章は一心から引き継いだ物ーーその昔、蒼純が着けていたものだ。
促されるまま、室内に踏み込み、銀嶺と少し距離を置いて孫は座した。
「……幼い頃が懐かしいな」
「はい」
「幼い頃、お主はよくここで、卯ノ花の足に纏わりついておった」
その言葉に、白哉はふっと表情を暗くし、そして表情を引き締めた。
「お前が副隊長となる時、話そうと思ってきた事がある」
銀嶺は庭を眺め、一呼吸おいてから振り返り、話し始めた。
「明翠にはその昔、婿がいた。
響河という男だ」
あれほど美しい伯母がなぜ結婚しないのか、昔から不思議に思っていたが聞くことはなかった。
聞いてはならないことだと、賢い白哉は知っていたのだ。
「長い昔話だが、お前は知らねばならぬ。
忘れてはならぬ」
そして静かに語られた話は、自分の知らない、朽木家の過去。
祖父の義理の息子の物語だった。
「もし万が一その封印が解けた時はあの男を切ることこそ朽木家当主の務め。
あの悪しき者を再び陽の目にさらすことはならん。」
銀嶺の鋭く厳しい眼光は、いかなる反論も敗北も許さないと訴える。
「はい」
白哉は静かに頷いた。
「そしてその者こそそなたの母を殺した者だ。」
白哉は目を見開く。
己の母が生まれてすぐに亡くなったと聞いており、その存在は写真でしか見た事がない。
立派な死神で一番隊の五席を務めたが、病死した聞かされていた。
「血が繋がっていないとは言え、何を理由に家族に刃を……」
銀嶺は視線を落とした。
「儂の至らなさよ」
白哉の前で常に偉大であった祖父は、この時初めて小さく、弱々しく見えた。
一体祖父の何が至らなかったというのか。
その至らなさが何故、義理の息子に義理の娘を殺させたというのか。
白哉は眉を顰める。
祖父がその反逆者を救う道は、あったのかもしれない。
だがやはり、その響河が至らぬ者であったに違いないのだ、と。
そしてその夫が殺した義姉の子を育てる明翠は、何を思って白哉を見つめていたのだろうと、ふと疑問がよぎる。
政略結婚故に然程の想いも無かったのか、それとも、恐ろしい何かを腹の中に隠していたか。
薄暗さを感じさせぬ彼女の愛に育てられた身としては、前者を信じたいと思うも、真実は誰にも聞けまいと思った。