新副隊長編
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「志波の十番隊隊長昇格を機に、彼奴を……白哉を副隊長に任じようと思う」
いつかの時と同じように、銀嶺と浮竹は対座していた。
その時と違う事と言えば、空気が明るいことだろう。
浮竹は穏やかに微笑む。
「そうですか」
「卯ノ花咲の赤色首従輪の主も彼奴に任せるつもりだ」
その決意に、深く頷く。
ゆっくりと目を閉じた。
再び開き、銀嶺を見つめた時、鳶色の瞳は優しく弧を描いた。
「分かりました」
どちらも護廷の人事の全てを担う浮竹に報告が不可欠な事項だ。
そしてそれらは同時に、多くの関係の変化を孕む。
咲と白哉の間で、この20年程の間は時間が止まっていると、浮竹は思っていた。
両者が互いを避け、周りの者も接触を避けさせてきた。
親の仇を取るべく心身共に鍛え上げた白哉は、その仇打ちという一点を除きさえすれば副隊長に相応しい人材であり、その唯一の汚点さえも、恐らく銀嶺の取り計らいさえあれば拭い去ることも可能だろう。
「君はともすると倅 のようだと思う。
私が語らずしても多くを悟る、聡い所がな。
だが息子を喪って私は、変わらねばならぬと思った」
銀嶺も穏やかに微笑む。
確かに彼は、息子を喪ってから柔らかくもなり、多弁にもなった。
一心は蒼純のように銀嶺の無言を聴く事はできない。
それは白哉においてもまた同じであった。
だが2人は蒼純という偉大な人の喪失を埋めるべく、六番隊の為に必死に働いた。
否、彼らだけではない。
六番隊の隊士皆が、蒼純の死を悼み、そして彼の志を護るべく努めた。
その存在が喪われて尚、蒼純ほ六番隊の支えであったのだ。
凛とした空気はそのままに、温もりがより集まり、この20年ほどを経て六番隊はまた新たな一歩を踏み出すこととなる。
だがそれに、不安はなかった。
「できた倅だ」
「ええ、本当に」
「孫も、よくできる」
「うらやましい限りです」
浮竹も深く頷いて微笑む。
こうして身内を褒めることなど、20年前の銀嶺では考えられなかったことだ。
「白哉と卯ノ花の時間は、止まってはおらんよ。
どちらも確かに進んでいる。
強い子達だ」
その言葉は予想外のもので、浮竹は思わず目を見開いた。
視線の先にある銀嶺の穏やかな瞳に、全てを見透かされたことを知り、恥ずかしくなる。
彼女の全てを自分は把握していると、そう思っていた訳ではない。
どれほど彼女の報告書を読み、彼女の人間関係に注意を払おうと、全てを知ることはできないのは分かっている。
分かっているはずなのに、心の奥底に潜む独占欲をくすぐられた事にも、そして自分の知らない咲の成長を語られたことにも動揺したし、それら全てを悟られた事を恥じた。
「隊長も長くなると己を殺すのがあまりに普通になり過ぎていかん。
これは自戒の念も込めてだが」
銀嶺は立ち上がった。
「君も 真っ直ぐで清く聡い。
策の為に己を取り繕うことも、己を犠牲にする事も、難無くやってのけるだろう。
だがその分自分の心に対して不器用だーー君には 前に進んで欲しい」
前に進むことを辞めた息子を思う背中は、偉大な先輩のもので、浮竹は彼の影の中で微かに顔を歪めた。
「君一人で何もかもを背負う必要はない。
例え隊長であろうと、元を正せばただの魂魄。
それ以上でもそれ以下でもない。
急ぎはせん、勇気を持て」
「私は……」
「歳をとるとお節介が過ぎてよくない。
だが、大切なものを預けるならば、言葉は過ぎるくらいで良いのかもしれないと、最近思うようになった。
……そうでない君はまだ若いぞ、十四郎君」
鳶色の瞳を閉じ、若輩者は唇を噛んだ。
いつかの時と同じように、銀嶺と浮竹は対座していた。
その時と違う事と言えば、空気が明るいことだろう。
浮竹は穏やかに微笑む。
「そうですか」
「卯ノ花咲の赤色首従輪の主も彼奴に任せるつもりだ」
その決意に、深く頷く。
ゆっくりと目を閉じた。
再び開き、銀嶺を見つめた時、鳶色の瞳は優しく弧を描いた。
「分かりました」
どちらも護廷の人事の全てを担う浮竹に報告が不可欠な事項だ。
そしてそれらは同時に、多くの関係の変化を孕む。
咲と白哉の間で、この20年程の間は時間が止まっていると、浮竹は思っていた。
両者が互いを避け、周りの者も接触を避けさせてきた。
親の仇を取るべく心身共に鍛え上げた白哉は、その仇打ちという一点を除きさえすれば副隊長に相応しい人材であり、その唯一の汚点さえも、恐らく銀嶺の取り計らいさえあれば拭い去ることも可能だろう。
「君はともすると
私が語らずしても多くを悟る、聡い所がな。
だが息子を喪って私は、変わらねばならぬと思った」
銀嶺も穏やかに微笑む。
確かに彼は、息子を喪ってから柔らかくもなり、多弁にもなった。
一心は蒼純のように銀嶺の無言を聴く事はできない。
それは白哉においてもまた同じであった。
だが2人は蒼純という偉大な人の喪失を埋めるべく、六番隊の為に必死に働いた。
否、彼らだけではない。
六番隊の隊士皆が、蒼純の死を悼み、そして彼の志を護るべく努めた。
その存在が喪われて尚、蒼純ほ六番隊の支えであったのだ。
凛とした空気はそのままに、温もりがより集まり、この20年ほどを経て六番隊はまた新たな一歩を踏み出すこととなる。
だがそれに、不安はなかった。
「できた倅だ」
「ええ、本当に」
「孫も、よくできる」
「うらやましい限りです」
浮竹も深く頷いて微笑む。
こうして身内を褒めることなど、20年前の銀嶺では考えられなかったことだ。
「白哉と卯ノ花の時間は、止まってはおらんよ。
どちらも確かに進んでいる。
強い子達だ」
その言葉は予想外のもので、浮竹は思わず目を見開いた。
視線の先にある銀嶺の穏やかな瞳に、全てを見透かされたことを知り、恥ずかしくなる。
彼女の全てを自分は把握していると、そう思っていた訳ではない。
どれほど彼女の報告書を読み、彼女の人間関係に注意を払おうと、全てを知ることはできないのは分かっている。
分かっているはずなのに、心の奥底に潜む独占欲をくすぐられた事にも、そして自分の知らない咲の成長を語られたことにも動揺したし、それら全てを悟られた事を恥じた。
「隊長も長くなると己を殺すのがあまりに普通になり過ぎていかん。
これは自戒の念も込めてだが」
銀嶺は立ち上がった。
「君
策の為に己を取り繕うことも、己を犠牲にする事も、難無くやってのけるだろう。
だがその分自分の心に対して不器用だーー君
前に進むことを辞めた息子を思う背中は、偉大な先輩のもので、浮竹は彼の影の中で微かに顔を歪めた。
「君一人で何もかもを背負う必要はない。
例え隊長であろうと、元を正せばただの魂魄。
それ以上でもそれ以下でもない。
急ぎはせん、勇気を持て」
「私は……」
「歳をとるとお節介が過ぎてよくない。
だが、大切なものを預けるならば、言葉は過ぎるくらいで良いのかもしれないと、最近思うようになった。
……そうでない君はまだ若いぞ、十四郎君」
鳶色の瞳を閉じ、若輩者は唇を噛んだ。
