新副隊長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「三席になってすぐだった。
部下を粛清せねばならなくなた時、卯ノ花と副隊長が救援で駆けつけた。
当然、叔父さんのことが頭を過った。
……でも実際あいつが人を殺める姿は、想像以上に痛々しかった。
お前も分かってんだろ、あいつはそうせざるを得なかったから、親父さんに刃を向けた。
……親父さんの為だ」
「その人の為に、その人自身を殺めること等、あって良いのでしょうか。
命を奪ってまで、何を」
「若いなぁまったくよぉ!」
真剣な顔でそう頑なに言葉を紡ぐ白哉の背中を、一心がばんばんと叩き、盃の酒が波立ち危うく溢れかけた。
「ほら飲め飲め!」
「私は」
「もー飲めって!
なんだ?もう酔ったか?」
白哉は一心を睨みつけると酒を煽る。
「お、いい飲みっぷりじゃねぇか!」
そしてさらに注がれる酒を飲み、また一心も飲んだ。
「お前はさ、死んでも護りてぇモンとかねぇのか?
ほらよく言うじゃねぇか、誇りだとか、家族だとか」
「ありません」
「ほお」
きっぱりと言い切る白哉に、一心は顎を撫でた。
「人は生きてこそ。
命を捨てる覚悟をするなら、その気力で刀を振るうべきです」
月を見上げ、はっきりとそう言い切る姿は、先に一心が言ったようにやはり、若さ故の眩しさがあった。
一心は件 の夜を思い出す。
美しかった蒼純の顔を覆い始めた角の生えた白い仮面。
死神と虚の狭間で、歯を噛みしめなが絞り出された声。
ー 咲……私を ー
彼は何と言おうとしたのだろうか。
その言葉を聞く前に銀嶺に報せに走った一心ではあったが、あの覚悟の瞳が語るのは、ひとつだ。
(殺せと……そう命じるつもりだったのだろう。
否、命じたに違いない)
「親父さんは……」
白哉の視線に射抜かれて口を噤む。
言わずとも伝わった、伝わってしまった。
「俺も最期を全て見たわけじゃねえから推測に過ぎねぇぞ。
お前が親父さんの死際をどう思っていようと」
「ではその推測では、父は何を護ったのです」
「……てめぇだよ。
虚となった時、何をするかなんて想像に容易い」
その言葉に白哉は目を見開いた。
常識だ、霊術院の1年生の教科書に出て来る程ーー虚となった者は心の穴を埋めるため、生前大切にしていた者を襲う。
だがそれは、虚となった者の話。
寄生された場合は、寄生した虚の意識に従い人を襲うはずだ。
(父は、寄生されたのではなく、虚と化した と言うのか!?)
一心はその失言に気付かぬまま酒を煽った。
記憶にこびり付いて離れないあの光景。
泣き崩れる咲の膝に頭を乗せる死体は、 鎖結 さけつと 魄睡 を貫かれていた。
死神生命を絶たれる致命傷だが、適切な処置を受ければ命を繋ぐことは出来たはずだ。
身体の弱かった蒼純ではあるが、白哉の言う生きる覚悟が有れば、と思わなくもない。
(彼は死を望んだのではないかーー)
一心は心のどこかでそう思っていた。
咲との事だけではない。
霞大路家との事も、彼の心に重くのしかかっていたに違いない。
いつから彼がその事を知っていたかは分からないが、愛妻家だったと言われている彼の心労は想像に容易い。
そして一心が知る蒼純は、それを切り捨てられる程の冷血漢とは程遠かった。
「命は大事なもんだってのは俺だってわかる。
遺された辛さや悔しさも。
けどよ、死んじまったその人の覚悟や苦しみを軽んじるような言い方はよさねぇか」
ちらりと部下を見ると、じっと何かを考えている。
凛と際立って美しいその姿はやはり、彼の父を思い出させる。
「ったー!!
辛気臭ぇ顔しやがって!」
その整った頭を掻き混ぜる。
「や、やめろっ!」
その手を青筋立てて慌てて振り払う姿に、どこかほっとする。
「よーっし!なら、俺は死なねぇよ。
お前の言う通り、生きる覚悟をこの背中で見せてやる。
だからお前も、追いかけてくる部下や後輩に見せてやれよ」
その言葉にはっとしたように白哉は顔を上げた。
それから微かに口の端を上げる。
夜風がその乱れた髪を流す。
「言われなくとも」
そんな2人の姿を、月が優しく照らしていた。
部下を粛清せねばならなくなた時、卯ノ花と副隊長が救援で駆けつけた。
当然、叔父さんのことが頭を過った。
……でも実際あいつが人を殺める姿は、想像以上に痛々しかった。
お前も分かってんだろ、あいつはそうせざるを得なかったから、親父さんに刃を向けた。
……親父さんの為だ」
「その人の為に、その人自身を殺めること等、あって良いのでしょうか。
命を奪ってまで、何を」
「若いなぁまったくよぉ!」
真剣な顔でそう頑なに言葉を紡ぐ白哉の背中を、一心がばんばんと叩き、盃の酒が波立ち危うく溢れかけた。
「ほら飲め飲め!」
「私は」
「もー飲めって!
なんだ?もう酔ったか?」
白哉は一心を睨みつけると酒を煽る。
「お、いい飲みっぷりじゃねぇか!」
そしてさらに注がれる酒を飲み、また一心も飲んだ。
「お前はさ、死んでも護りてぇモンとかねぇのか?
ほらよく言うじゃねぇか、誇りだとか、家族だとか」
「ありません」
「ほお」
きっぱりと言い切る白哉に、一心は顎を撫でた。
「人は生きてこそ。
命を捨てる覚悟をするなら、その気力で刀を振るうべきです」
月を見上げ、はっきりとそう言い切る姿は、先に一心が言ったようにやはり、若さ故の眩しさがあった。
一心は
美しかった蒼純の顔を覆い始めた角の生えた白い仮面。
死神と虚の狭間で、歯を噛みしめなが絞り出された声。
ー 咲……私を ー
彼は何と言おうとしたのだろうか。
その言葉を聞く前に銀嶺に報せに走った一心ではあったが、あの覚悟の瞳が語るのは、ひとつだ。
(殺せと……そう命じるつもりだったのだろう。
否、命じたに違いない)
「親父さんは……」
白哉の視線に射抜かれて口を噤む。
言わずとも伝わった、伝わってしまった。
「俺も最期を全て見たわけじゃねえから推測に過ぎねぇぞ。
お前が親父さんの死際をどう思っていようと」
「ではその推測では、父は何を護ったのです」
「……てめぇだよ。
虚となった時、何をするかなんて想像に容易い」
その言葉に白哉は目を見開いた。
常識だ、霊術院の1年生の教科書に出て来る程ーー虚となった者は心の穴を埋めるため、生前大切にしていた者を襲う。
だがそれは、虚となった者の話。
寄生された場合は、寄生した虚の意識に従い人を襲うはずだ。
(父は、寄生されたのではなく、
一心はその失言に気付かぬまま酒を煽った。
記憶にこびり付いて離れないあの光景。
泣き崩れる咲の膝に頭を乗せる死体は、
死神生命を絶たれる致命傷だが、適切な処置を受ければ命を繋ぐことは出来たはずだ。
身体の弱かった蒼純ではあるが、白哉の言う生きる覚悟が有れば、と思わなくもない。
(彼は死を望んだのではないかーー)
一心は心のどこかでそう思っていた。
咲との事だけではない。
霞大路家との事も、彼の心に重くのしかかっていたに違いない。
いつから彼がその事を知っていたかは分からないが、愛妻家だったと言われている彼の心労は想像に容易い。
そして一心が知る蒼純は、それを切り捨てられる程の冷血漢とは程遠かった。
「命は大事なもんだってのは俺だってわかる。
遺された辛さや悔しさも。
けどよ、死んじまったその人の覚悟や苦しみを軽んじるような言い方はよさねぇか」
ちらりと部下を見ると、じっと何かを考えている。
凛と際立って美しいその姿はやはり、彼の父を思い出させる。
「ったー!!
辛気臭ぇ顔しやがって!」
その整った頭を掻き混ぜる。
「や、やめろっ!」
その手を青筋立てて慌てて振り払う姿に、どこかほっとする。
「よーっし!なら、俺は死なねぇよ。
お前の言う通り、生きる覚悟をこの背中で見せてやる。
だからお前も、追いかけてくる部下や後輩に見せてやれよ」
その言葉にはっとしたように白哉は顔を上げた。
それから微かに口の端を上げる。
夜風がその乱れた髪を流す。
「言われなくとも」
そんな2人の姿を、月が優しく照らしていた。