新副隊長編
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「月見酒といくか。
この辺で待っててくれ」
示された縁側からは、稽古ができる程度の庭が見えた。
池があったり、花が植えられていたりという事はなく、必要最低限に整えられている簡素なものだ。
塀の上に三日月が優しく浮かぶ。
やはり父の斬魄刀は、父らしいものだったと思った。
「なんだ座れよ」
酒瓶と盃を持ってきた一心の淡い笑みに会釈して腰を下ろす。
「硬ぇなぁ、胡座 にしろよ」
一々茶々を入れるのが鬱陶しいようでいて、相手を思ってのことだということは、傍で見てきたからこそわかる。
彼は隊を背負っていく人だ。
白哉は足を崩し、盃を受け取った。
注ぎあった酒を両者は煽る。
「あー堪んねぇな!」
志波の血を引く者らしい笑顔だ。
この性格に惹かれる部下が多いことも知っているが、自分にはその素養はない。
だが副隊長として彼に負けるつもりはさらさらない。
自分は、自分の道を進むと白哉は決めていた。
「副隊長はあの日、迷われた。
何故です」
「いきなり1番答えにくいことから聞くんだな、お前」
「霞大路家について私に話す許可が隊長から出ているのでしたら、私が大霊書回廊を探しまわる前に教えてくださった事でしょう。
そうでないならば尋ねるだけ無駄です。
私が教えていただける可能性があるとしたら、それは副隊長、貴方の事だけだ」
「賢い部下を持ったもんだぜ、全くよぉ」
あの夜 が如月が死んだ、そして一心が白哉を咲の救援に向かわせた晩のことは確かめるまでもない。
一心は頭を掻いた。
そう言う一方であわよくば何かを聞き出そうとしているであろう事は、一心も気付いていた。
だからこそ言葉を慎重に選ぶ。
「お前とあいつの確執は明らかだ。
お前ら自身接触を避けているし、隊長まで避けさせている。
万が一があるとまずいからな」
「それ程私は信用がありませんか」
真剣な瞳に一心は首を振る。
「蒼純副隊長の件は、お前にもキツかっただろ。
あいつにもキツかった。
信用とかそういう問題じゃねぇよ」
「私情を挟む程、私は、卯ノ花咲は愚かだと」
「じゃあ聞くが、あいつと対峙した時、一瞬でも蒼純副隊長のーー親父さんの事が頭を過 ぎらなかったと言えるか?」
部下がわざとそんな言い方をしていると分かった上で、一心は言い、白哉はつっと視線を落として口をつぐんだ。
「過ぎろうが過らまいが、任務に差し支えさせるような事など」
「お前はあいつを恨んでいる」
「違う」
「仇だろ、そう言う目だ」
「違う」
「蒼純副隊長が亡くなった案件の報告書だけじゃねぇ。
あいつの報告書、お前全部探したろ。
理由は」
「違う!」
一心はため息をついて頭を掻いた。
「責めてねぇ」
「違うと言っただけです」
眉間に皺を刻む青年にため息をついて、一心は再び口を開いた。
「……昔話だ。
有名な話だが、俺の親父は謀反を起こしてな。
海燕んとこの父親も殺しちまってよ」
それは白哉も知っていた。
自分が生まれる少し前の話だったはずだ。
「青臭い餓鬼だったが、俺はその謀反を訴えに走ったんだ。
父は総隊長に斬られて死んだ。
んなクソみたいな親父の事はいいんだけどよ。
その後没落した志波家を引っ張ってくれたのが親父の弟だった。
本当の兄貴みてぇにしてくれてて、その叔父が頼りだったわけよ」
没落した貴族への世の対応など、想像に容易いが、恐らく想像以上に辛い目にあうことだろうと思った。
「その叔父がさ……殺されたかけた卯ノ花に気を取られた上司の技に巻き添えくらって死んじまったんだ。
死んだ理由を知ったのは俺が入隊してからだから、死後50年以上してからだ。
でも……なんつーか、その時は許せなくてな。
仇みてぇに思ったわけよ」
苦笑して空を見上げながら、彼は話した。
「そのうち俺にも、自分の手で仲間や仲間だったやつを斬らなきゃならねぇ時も何度か来た。
斬った後独りになると、叔父や卯ノ花の事が自然と思われる。
白哉、お前も仲間を斬った事はあるだろう……苦しいだろ」
白哉は盃に映る月を見た。
彼の言う事は事実だ。
白哉も部下を粛清の為斬った事がある。
その日夢に見たのは、自分に父を殺したと告げた、あの怒りに燃えた冷たい咲の瞳だった。
この辺で待っててくれ」
示された縁側からは、稽古ができる程度の庭が見えた。
池があったり、花が植えられていたりという事はなく、必要最低限に整えられている簡素なものだ。
塀の上に三日月が優しく浮かぶ。
やはり父の斬魄刀は、父らしいものだったと思った。
「なんだ座れよ」
酒瓶と盃を持ってきた一心の淡い笑みに会釈して腰を下ろす。
「硬ぇなぁ、
一々茶々を入れるのが鬱陶しいようでいて、相手を思ってのことだということは、傍で見てきたからこそわかる。
彼は隊を背負っていく人だ。
白哉は足を崩し、盃を受け取った。
注ぎあった酒を両者は煽る。
「あー堪んねぇな!」
志波の血を引く者らしい笑顔だ。
この性格に惹かれる部下が多いことも知っているが、自分にはその素養はない。
だが副隊長として彼に負けるつもりはさらさらない。
自分は、自分の道を進むと白哉は決めていた。
「副隊長はあの日、迷われた。
何故です」
「いきなり1番答えにくいことから聞くんだな、お前」
「霞大路家について私に話す許可が隊長から出ているのでしたら、私が大霊書回廊を探しまわる前に教えてくださった事でしょう。
そうでないならば尋ねるだけ無駄です。
私が教えていただける可能性があるとしたら、それは副隊長、貴方の事だけだ」
「賢い部下を持ったもんだぜ、全くよぉ」
一心は頭を掻いた。
そう言う一方であわよくば何かを聞き出そうとしているであろう事は、一心も気付いていた。
だからこそ言葉を慎重に選ぶ。
「お前とあいつの確執は明らかだ。
お前ら自身接触を避けているし、隊長まで避けさせている。
万が一があるとまずいからな」
「それ程私は信用がありませんか」
真剣な瞳に一心は首を振る。
「蒼純副隊長の件は、お前にもキツかっただろ。
あいつにもキツかった。
信用とかそういう問題じゃねぇよ」
「私情を挟む程、私は、卯ノ花咲は愚かだと」
「じゃあ聞くが、あいつと対峙した時、一瞬でも蒼純副隊長のーー親父さんの事が頭を
部下がわざとそんな言い方をしていると分かった上で、一心は言い、白哉はつっと視線を落として口をつぐんだ。
「過ぎろうが過らまいが、任務に差し支えさせるような事など」
「お前はあいつを恨んでいる」
「違う」
「仇だろ、そう言う目だ」
「違う」
「蒼純副隊長が亡くなった案件の報告書だけじゃねぇ。
あいつの報告書、お前全部探したろ。
理由は」
「違う!」
一心はため息をついて頭を掻いた。
「責めてねぇ」
「違うと言っただけです」
眉間に皺を刻む青年にため息をついて、一心は再び口を開いた。
「……昔話だ。
有名な話だが、俺の親父は謀反を起こしてな。
海燕んとこの父親も殺しちまってよ」
それは白哉も知っていた。
自分が生まれる少し前の話だったはずだ。
「青臭い餓鬼だったが、俺はその謀反を訴えに走ったんだ。
父は総隊長に斬られて死んだ。
んなクソみたいな親父の事はいいんだけどよ。
その後没落した志波家を引っ張ってくれたのが親父の弟だった。
本当の兄貴みてぇにしてくれてて、その叔父が頼りだったわけよ」
没落した貴族への世の対応など、想像に容易いが、恐らく想像以上に辛い目にあうことだろうと思った。
「その叔父がさ……殺されたかけた卯ノ花に気を取られた上司の技に巻き添えくらって死んじまったんだ。
死んだ理由を知ったのは俺が入隊してからだから、死後50年以上してからだ。
でも……なんつーか、その時は許せなくてな。
仇みてぇに思ったわけよ」
苦笑して空を見上げながら、彼は話した。
「そのうち俺にも、自分の手で仲間や仲間だったやつを斬らなきゃならねぇ時も何度か来た。
斬った後独りになると、叔父や卯ノ花の事が自然と思われる。
白哉、お前も仲間を斬った事はあるだろう……苦しいだろ」
白哉は盃に映る月を見た。
彼の言う事は事実だ。
白哉も部下を粛清の為斬った事がある。
その日夢に見たのは、自分に父を殺したと告げた、あの怒りに燃えた冷たい咲の瞳だった。