新副隊長編
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「和解……」
咲は溢れそうな程目を見開いた。
獏爻刀の秘密と、四六室にそむいた潜入捜査。
表向きには霞大路家とは和解されたのだと、四番隊の病室に見舞った一心は語った。
「何故です、証拠は揃ったはず。
如月殿だって」
「如月は死んだ。
獏爻刀に操られ、総隊長に粛清された。
表向きには虚との戦闘で心理操作されたため、総隊長に厳正に処理された事になっているがな」
「そんなっ!では副隊長はなぜ私の元に」
「行き違いだ」
視線を逸らしため息混じりで言う姿に、彼を責める様な言葉を吐いた自分を恥じた。
誰よりも後悔しているのは、一心自身なのだと咲は思い、視線を落とす。
「申し訳ありません……」
「勘違いするなよ、俺はお前の元に向かったことを後悔してる訳じゃねぇぞ」
その言葉に恐る恐る彼を見上げる。
「お前の元にいかなければお前が死んでいた。
俺は、2人ともを救える選択をしなかった自分を悔いているんだ。
如月の妹さんへの思いも、叶えてやれなかったしな」
その言葉に、銀嶺の決意を思い出し咲も胸を痛めた。
その俯く姿に、一心は目を細める。
蒼純の死んだ晩のことが、彼女の心にどれ程巣食っていたか、貫井がその記憶を選んだ時点で想像するに余りある。
救援信号を受けた時、その場にいた白哉も連れて行くか迷ったが、蒼純に纏わる確執から彼を戦場に連れ出さなかった。
蒼純の最期について知るものは銀嶺、一心、咲、そして藍染の4名と、その報告を聞いた総隊長山本、死体解剖を行った卯ノ花のみであった。
如月も貫井の技により知った可能性はあるが、彼はその秘密を抱えたまま還らぬ人となった。
問題は貫井である。
任務の失敗の報告に続けて、蒼純を恨みかつ彼の死の真相を知った貫井の生存を聞いた銀嶺の霊圧は、静かな怒りにより冷たく肌を刺すように波立ち、一心は恐怖に鳥肌が立った。
ギリギリまで追い詰めたのに取り逃がした自分の甘さを一心は悔いたし、恥じた。
だが銀嶺は一言も一心を責めはせず、静かに背を向けた。
「あやつらの事は、誰にも言うでない」
静かな声はなんの感情も感じさせなかった。
どれ程の理性で押さえ込んでいる事だろう。
抱えるその心の闇を、一心は痛ましくも思い、そしてそれを耐え切る背中に、隊長の器たるものを知る。
一心が卍解を手にして3年。
卍解を手にすると、誰もがいずれは隊長の座に就くことになる。
だが自分にその器が有るはずがないと、目の前の銀嶺を見ていると思わざるを得ない。
そしてその器になるのはいくら待っても来ないだろうと、己の無力を悔いるのだった。
この任務は、関わった者全てに後悔を残し、そして白哉には両親の悲劇への大きな手掛かりを与えたのだった。
霞大路家の研究室のある蔵の中で、雲井の前に貫井が平伏していた。
「死の危険があれば自死を選べと教えたはずだが」
「……申し訳ありません」
噛み締めた歯の隙間から苦しげに吐き出される声に、彼が何としてでも生き残ろうとしたその憎しみと怨みが感じられた。
「俺はもう2度と敗北を喫することはしないと違います。
だから頼む、どうか、俺の砕我を獏爻刀として鍛え直してくれ。
斬魄刀では役不足だ。
……頼む!!」
雲井は額を擦り付ける貫井から見えないのを良い事に、口の端を釣り上げた。
この言葉を待っていたのだ。
ある程度の能力のある者の刀でなければ獏爻刀として鍛え直した際に消滅してしまうことは今までの研究で分かった。
浅打から作った獏爻刀では如月の様な上位席官でさえ精神を保つのが難しい。
研究材料は、不足していた。
「お前のその心意気買ってやろう。
……じゃが次はない、覚悟しろ」
咲は溢れそうな程目を見開いた。
獏爻刀の秘密と、四六室にそむいた潜入捜査。
表向きには霞大路家とは和解されたのだと、四番隊の病室に見舞った一心は語った。
「何故です、証拠は揃ったはず。
如月殿だって」
「如月は死んだ。
獏爻刀に操られ、総隊長に粛清された。
表向きには虚との戦闘で心理操作されたため、総隊長に厳正に処理された事になっているがな」
「そんなっ!では副隊長はなぜ私の元に」
「行き違いだ」
視線を逸らしため息混じりで言う姿に、彼を責める様な言葉を吐いた自分を恥じた。
誰よりも後悔しているのは、一心自身なのだと咲は思い、視線を落とす。
「申し訳ありません……」
「勘違いするなよ、俺はお前の元に向かったことを後悔してる訳じゃねぇぞ」
その言葉に恐る恐る彼を見上げる。
「お前の元にいかなければお前が死んでいた。
俺は、2人ともを救える選択をしなかった自分を悔いているんだ。
如月の妹さんへの思いも、叶えてやれなかったしな」
その言葉に、銀嶺の決意を思い出し咲も胸を痛めた。
その俯く姿に、一心は目を細める。
蒼純の死んだ晩のことが、彼女の心にどれ程巣食っていたか、貫井がその記憶を選んだ時点で想像するに余りある。
救援信号を受けた時、その場にいた白哉も連れて行くか迷ったが、蒼純に纏わる確執から彼を戦場に連れ出さなかった。
蒼純の最期について知るものは銀嶺、一心、咲、そして藍染の4名と、その報告を聞いた総隊長山本、死体解剖を行った卯ノ花のみであった。
如月も貫井の技により知った可能性はあるが、彼はその秘密を抱えたまま還らぬ人となった。
問題は貫井である。
任務の失敗の報告に続けて、蒼純を恨みかつ彼の死の真相を知った貫井の生存を聞いた銀嶺の霊圧は、静かな怒りにより冷たく肌を刺すように波立ち、一心は恐怖に鳥肌が立った。
ギリギリまで追い詰めたのに取り逃がした自分の甘さを一心は悔いたし、恥じた。
だが銀嶺は一言も一心を責めはせず、静かに背を向けた。
「あやつらの事は、誰にも言うでない」
静かな声はなんの感情も感じさせなかった。
どれ程の理性で押さえ込んでいる事だろう。
抱えるその心の闇を、一心は痛ましくも思い、そしてそれを耐え切る背中に、隊長の器たるものを知る。
一心が卍解を手にして3年。
卍解を手にすると、誰もがいずれは隊長の座に就くことになる。
だが自分にその器が有るはずがないと、目の前の銀嶺を見ていると思わざるを得ない。
そしてその器になるのはいくら待っても来ないだろうと、己の無力を悔いるのだった。
この任務は、関わった者全てに後悔を残し、そして白哉には両親の悲劇への大きな手掛かりを与えたのだった。
霞大路家の研究室のある蔵の中で、雲井の前に貫井が平伏していた。
「死の危険があれば自死を選べと教えたはずだが」
「……申し訳ありません」
噛み締めた歯の隙間から苦しげに吐き出される声に、彼が何としてでも生き残ろうとしたその憎しみと怨みが感じられた。
「俺はもう2度と敗北を喫することはしないと違います。
だから頼む、どうか、俺の砕我を獏爻刀として鍛え直してくれ。
斬魄刀では役不足だ。
……頼む!!」
雲井は額を擦り付ける貫井から見えないのを良い事に、口の端を釣り上げた。
この言葉を待っていたのだ。
ある程度の能力のある者の刀でなければ獏爻刀として鍛え直した際に消滅してしまうことは今までの研究で分かった。
浅打から作った獏爻刀では如月の様な上位席官でさえ精神を保つのが難しい。
研究材料は、不足していた。
「お前のその心意気買ってやろう。
……じゃが次はない、覚悟しろ」