新副隊長編
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10回も重ねれば呼吸は激しく乱れたが、ようやく護廷の敷地へと足を踏み入れることができた。
夜も更け、見回りの隊士が来なければ人など通ることもない通りはがらんとしていて不気味だ。
汗が滴り落ちる。
霊力の消耗か、気が遠くなりかけ、頭を振る。
もう一息だと、己に言い聞かせて、足を動かすも、引き摺る様にしか動かない。
(だめだ、このままでは……)
ふと影が落ちる。
驚いて見上げると、そこには同じく驚き目を見開いた白哉がいた。
疲労と驚きから声が出ない咲は、バランスを崩して倒れ込み、白哉はその咲を思わず支えた。
「……四番隊へ」
耳元で硬い声でそう言って支えて歩き出す死覇装を掴む。
「ぎじゅ…っ……」
技術開発局と、そう言いたいのに言葉が続かない。
白哉は少しだけ考え、それから咲を座らせ、背中の籠を解き自分の背中に背負いなおした。
そして咲を抱き上げる。
「技術開発局だな」
微かに頷くのを最後に、咲は意識を手放した。
その頬に流れる涙を、白哉は一瞬躊躇った後にそっと拭く。
そして、素晴らしい瞬歩で駆けた。
彼をここへ送ったのは一心であった。
通信機がけたたましい音を立て、それと同時に直ぐ近くに偶然いた白哉に目を向け、そして一瞬躊躇った。
部屋に居たのは白哉一人で、命令するのに選択肢は無い。
即断することの多い一心にしては珍しい、と思った次の瞬間には、指示が出た。
ー 十一番隊隊舎付近で待機。
1刻して誰も来なければ戻っていいからな ー
窓から飛び出すその様子に、ただごとではないのだろうと思った。
咲の実力は知っている。
彼女は強いーー副隊長だった己の父を殺める程。
その彼女がこれほど疲弊していると言うのは、それなりの敵なのか、他に理由があるかだ。
死覇装とは異なる商人の様な服と籠から、潜入任務についていたのだろうと思う。
彼女との関係を絶ってから10年以上経っており、最近の彼女の任務内容など知らない。
元より副隊長の影として表には出て来ない彼女だ。
知らなくて当然であるが、蒼純存命中はそうではなかった。
具体的な任務内容こそ知らなかったが、もっと傍にいて、いつから遠征なのか、長期に渡るのか等秘密保持に関さない範囲で知っていたのだ。
白哉の憧れの人であったから。
技術開発局門を叩き、中に通される。
話は通っていたのだろう。
案内された部屋で阿近が振り返った。
「朽木八席、籠を預かります。
えーっと、卯ノ花さんはとりあえずそっちにでも」
指差された先のベッドに咲を横たわらせる。
胸元から見えた白を躊躇いがちに抜き出すと、何やらメモの様だ。
開くと何やら薬品の名前らしきもの並び、最後に記された「天貝」はおそらくメモを書いた者の名前だろうと推察された。
あまり見て良いものでもないだろうと紙を元通り折り、籠を下ろす。
「助かりました。
これがなきゃ全て水の泡だったんでね」
受け取る阿近の言葉にやはり重要な任務だったのだろう事が伺えた。
籠とメモを渡すと、彼はベッドに横たわる咲に目を向けた。
「四番隊に運んでやってもらえますか?
こちらで把握している情報から言わせてもらうと、かなり辛い闘いだったようなんで」
「……分かった」
もう一度抱き上げ部屋を出る。
昔、彼女に背負われたり、助けられたりした事はあった。
その度に強い女だと思っていたが、いつしか自分の方が随分と大きくなっていた事に今更ながら気付く。
緋真のように小柄なわけではないが、やはり彼女は持っている力や背負う任務の重さを思うと、憎き仇とはいえやはり痛ましくも思えるほどであった。
夜も更け、見回りの隊士が来なければ人など通ることもない通りはがらんとしていて不気味だ。
汗が滴り落ちる。
霊力の消耗か、気が遠くなりかけ、頭を振る。
もう一息だと、己に言い聞かせて、足を動かすも、引き摺る様にしか動かない。
(だめだ、このままでは……)
ふと影が落ちる。
驚いて見上げると、そこには同じく驚き目を見開いた白哉がいた。
疲労と驚きから声が出ない咲は、バランスを崩して倒れ込み、白哉はその咲を思わず支えた。
「……四番隊へ」
耳元で硬い声でそう言って支えて歩き出す死覇装を掴む。
「ぎじゅ…っ……」
技術開発局と、そう言いたいのに言葉が続かない。
白哉は少しだけ考え、それから咲を座らせ、背中の籠を解き自分の背中に背負いなおした。
そして咲を抱き上げる。
「技術開発局だな」
微かに頷くのを最後に、咲は意識を手放した。
その頬に流れる涙を、白哉は一瞬躊躇った後にそっと拭く。
そして、素晴らしい瞬歩で駆けた。
彼をここへ送ったのは一心であった。
通信機がけたたましい音を立て、それと同時に直ぐ近くに偶然いた白哉に目を向け、そして一瞬躊躇った。
部屋に居たのは白哉一人で、命令するのに選択肢は無い。
即断することの多い一心にしては珍しい、と思った次の瞬間には、指示が出た。
ー 十一番隊隊舎付近で待機。
1刻して誰も来なければ戻っていいからな ー
窓から飛び出すその様子に、ただごとではないのだろうと思った。
咲の実力は知っている。
彼女は強いーー副隊長だった己の父を殺める程。
その彼女がこれほど疲弊していると言うのは、それなりの敵なのか、他に理由があるかだ。
死覇装とは異なる商人の様な服と籠から、潜入任務についていたのだろうと思う。
彼女との関係を絶ってから10年以上経っており、最近の彼女の任務内容など知らない。
元より副隊長の影として表には出て来ない彼女だ。
知らなくて当然であるが、蒼純存命中はそうではなかった。
具体的な任務内容こそ知らなかったが、もっと傍にいて、いつから遠征なのか、長期に渡るのか等秘密保持に関さない範囲で知っていたのだ。
白哉の憧れの人であったから。
技術開発局門を叩き、中に通される。
話は通っていたのだろう。
案内された部屋で阿近が振り返った。
「朽木八席、籠を預かります。
えーっと、卯ノ花さんはとりあえずそっちにでも」
指差された先のベッドに咲を横たわらせる。
胸元から見えた白を躊躇いがちに抜き出すと、何やらメモの様だ。
開くと何やら薬品の名前らしきもの並び、最後に記された「天貝」はおそらくメモを書いた者の名前だろうと推察された。
あまり見て良いものでもないだろうと紙を元通り折り、籠を下ろす。
「助かりました。
これがなきゃ全て水の泡だったんでね」
受け取る阿近の言葉にやはり重要な任務だったのだろう事が伺えた。
籠とメモを渡すと、彼はベッドに横たわる咲に目を向けた。
「四番隊に運んでやってもらえますか?
こちらで把握している情報から言わせてもらうと、かなり辛い闘いだったようなんで」
「……分かった」
もう一度抱き上げ部屋を出る。
昔、彼女に背負われたり、助けられたりした事はあった。
その度に強い女だと思っていたが、いつしか自分の方が随分と大きくなっていた事に今更ながら気付く。
緋真のように小柄なわけではないが、やはり彼女は持っている力や背負う任務の重さを思うと、憎き仇とはいえやはり痛ましくも思えるほどであった。