新副隊長編
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蒼潤が亡くなった頃よりは咲の表情が柔らかくなったと一心は感じていた。
悩んでいることは度々みかけるが、張り詰めたような表情を見かけることは減った。
蒼純の最後の言葉を聞いた一心は、彼女の心情の推察を密かに繰り返した時期もあったが、全ては憶測の域を出ないと諦めた。
だがその推測とは別に、彼女が囚われているであろうその言葉を浮竹に相談できたことは、少なからず一心を軽くした。
また蒼純の死後、彼女の周りで浮竹や京楽の姿を時折見かけ、浮竹が一心と咲の関係を案じてか探りを入れた事に逆に安心もした。
(そんな、俺を見て浮竹隊長もほっとした顔をしていたーー本当に大切なんだろう)
孤独にばかり見える彼女に、やはり現状を心配してくれるような友がいたのだ。
そしてそう思ってから、自分を六番隊にと推薦したのが誰だったか思い出す。
ー六番隊の三席に空きが出るらしくてねぇ、君を推薦したいと思うんだが、どうだい、やる気はあるかい?ー
京楽 は一心の為だという態 で話を持ちかけたが、恐らく一心と咲との二つの側面から見て互いの利益になり得ると思ってのことだったのだろうと、今更ながら思う。
それだけ信頼されているのだと思えば、悪い気はしない。
だが、そんな彼らは本当にただの友 なのだろうか。
まだ軽い女性関係しか経験していない一心でも、3人の関係はただのものではなかろうと思う。
百年を超える友、それが異性だとしたら、そこに情愛がないはずなどない。
それを露ほど見せないとなると、彼らはどれほどの理性を持つのだろうか。
またはーーそれを抑え込まねばならぬ理由があるのか。
いずれにせよ、それ程までに思い合う事は苦しくもあり、羨ましくも思った。
いつか自分も、例えば全てを賭けても良いと思える伴侶に会えたら、などと柄にも無く思う。
(んと、柄じゃねぇ。
まずは目の前の事片づけねぇと)
霞大路家の証拠もあと一歩。
それが集まれば、如月は闇に紛れて護廷へ還り、そして全ての片を付ける。
(慎重にやれよ)
危険を冒しながら潜入する部下等を思い、一心は無意識に霞大路家の方を鋭い視線で見やった。
浮竹は一心から告げられた蒼純の最後の言葉を、未だにふとした時に思い出す時があった。
自分ですらそうなのだ、当の本人である咲ならば尚更だろう。
彼女が時折考え込むような様子を見せる理由は、おそらくそれであろうと思っていた。
自分が紡ぐのを諦め、心の奥底に仕舞い込んだその言葉を、死に際に放ったその人は、思慮深く、硬い理性をもつ人だった。
相当深い思いだったのだろう。
その意味を推測することは避けるよう釘を刺したのは自分であるし、その推測は相手が故人である以上無駄だ。
死を目前にして初めて紡がれる愛の言葉には、彼がどれほど深く彼女を思っていたかと言う計り知れなさが広がるだけだ。
あれから京楽に幾度となく蒼純の最期の言葉について話そうかと迷った。
だが結局今日まで心の奥に留めている。
その理由はいくつもあるが、最たるは彼の知らない秘密を自分は知り、その秘密の大きさ故2人の間に一定の溝が有り続けると言う事だ。
誰の為にもならない、己の醜い嫉妬を紛らわす為に他ならず、それはそれで苦しみの原因ではあるが、それでも尚、親友に告げられずにいた。
ちりりと痛みが走り、浮竹は口元から手を離した。
海燕に言われてから気をつけていたのだが、1人でいると無意識に癖が出る。
溜息をついて雨乾堂の窓から静かに揺れる池の水面を見つめる。
清く澄んだ水の底には、己の心のように泥が眠るのだ。
(この思いは愛だなんて、美しい言葉では到底語れやしない)
あまりに時を長く共に過ごしすぎた故の、深すぎる思いとその影に潜む悋気。
だが浮竹は蒼純の過去から推察するに、彼こそ咲への思いを愛という美しい言葉では表せない様な感情を抱いていただろうと思っている。
その最期の言葉が愛であったならば、己の最期はどうなる事だろうか。
また愚かな問いに囚われる己に溜息をつき、浮竹は障子を閉めた。
悩んでいることは度々みかけるが、張り詰めたような表情を見かけることは減った。
蒼純の最後の言葉を聞いた一心は、彼女の心情の推察を密かに繰り返した時期もあったが、全ては憶測の域を出ないと諦めた。
だがその推測とは別に、彼女が囚われているであろうその言葉を浮竹に相談できたことは、少なからず一心を軽くした。
また蒼純の死後、彼女の周りで浮竹や京楽の姿を時折見かけ、浮竹が一心と咲の関係を案じてか探りを入れた事に逆に安心もした。
(そんな、俺を見て浮竹隊長もほっとした顔をしていたーー本当に大切なんだろう)
孤独にばかり見える彼女に、やはり現状を心配してくれるような友がいたのだ。
そしてそう思ってから、自分を六番隊にと推薦したのが誰だったか思い出す。
ー六番隊の三席に空きが出るらしくてねぇ、君を推薦したいと思うんだが、どうだい、やる気はあるかい?ー
それだけ信頼されているのだと思えば、悪い気はしない。
だが、そんな彼らは本当にただの
まだ軽い女性関係しか経験していない一心でも、3人の関係はただのものではなかろうと思う。
百年を超える友、それが異性だとしたら、そこに情愛がないはずなどない。
それを露ほど見せないとなると、彼らはどれほどの理性を持つのだろうか。
またはーーそれを抑え込まねばならぬ理由があるのか。
いずれにせよ、それ程までに思い合う事は苦しくもあり、羨ましくも思った。
いつか自分も、例えば全てを賭けても良いと思える伴侶に会えたら、などと柄にも無く思う。
(んと、柄じゃねぇ。
まずは目の前の事片づけねぇと)
霞大路家の証拠もあと一歩。
それが集まれば、如月は闇に紛れて護廷へ還り、そして全ての片を付ける。
(慎重にやれよ)
危険を冒しながら潜入する部下等を思い、一心は無意識に霞大路家の方を鋭い視線で見やった。
浮竹は一心から告げられた蒼純の最後の言葉を、未だにふとした時に思い出す時があった。
自分ですらそうなのだ、当の本人である咲ならば尚更だろう。
彼女が時折考え込むような様子を見せる理由は、おそらくそれであろうと思っていた。
自分が紡ぐのを諦め、心の奥底に仕舞い込んだその言葉を、死に際に放ったその人は、思慮深く、硬い理性をもつ人だった。
相当深い思いだったのだろう。
その意味を推測することは避けるよう釘を刺したのは自分であるし、その推測は相手が故人である以上無駄だ。
死を目前にして初めて紡がれる愛の言葉には、彼がどれほど深く彼女を思っていたかと言う計り知れなさが広がるだけだ。
あれから京楽に幾度となく蒼純の最期の言葉について話そうかと迷った。
だが結局今日まで心の奥に留めている。
その理由はいくつもあるが、最たるは彼の知らない秘密を自分は知り、その秘密の大きさ故2人の間に一定の溝が有り続けると言う事だ。
誰の為にもならない、己の醜い嫉妬を紛らわす為に他ならず、それはそれで苦しみの原因ではあるが、それでも尚、親友に告げられずにいた。
ちりりと痛みが走り、浮竹は口元から手を離した。
海燕に言われてから気をつけていたのだが、1人でいると無意識に癖が出る。
溜息をついて雨乾堂の窓から静かに揺れる池の水面を見つめる。
清く澄んだ水の底には、己の心のように泥が眠るのだ。
(この思いは愛だなんて、美しい言葉では到底語れやしない)
あまりに時を長く共に過ごしすぎた故の、深すぎる思いとその影に潜む悋気。
だが浮竹は蒼純の過去から推察するに、彼こそ咲への思いを愛という美しい言葉では表せない様な感情を抱いていただろうと思っている。
その最期の言葉が愛であったならば、己の最期はどうなる事だろうか。
また愚かな問いに囚われる己に溜息をつき、浮竹は障子を閉めた。