新副隊長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お邪魔します、ご注文の品をお持ちいたしました」
教えられたとおりに声をかける。
細い声は薄暗くひんやりとした蔵の中に吸い込まれていった。
咲は辺りの気配を探る。
声が届いていないのか、もう一度声をかけようかと思った矢先、奥から人の気配が近づいてくるのを感じた。
「今日から新しい方が来られると聞いていましたが、貴方ですか」
細身の髪の長い色白の男が咲に声をかけた。
白衣を纏い、いかにも研究職らしい姿だ。
技術開発局から見せてもらった写真と一致する容姿は、如月がこんなヤワそうな姿になると言うのか、と思わず溢していたものだ。
元の体格の良い姿とはまるで違う割に、違和感なく動けている様子に咲は人知れず安堵する。
「はい、士谷 薬品の八波 と申します」
「君が。
話は前の営業から聞いているよ。
僕は天貝 だ」
如月は妻の旧姓だという天貝を名乗ることに決まっていた。
彼で間違い無いだろう。
「では早速品物を見せてもらおうか」
階段を降り、通路を抜けた先には薄暗い明かりの中で水槽のようなものがいくつも並び、薬品の独特な匂いが立ち込めている。
他に2人程研究者がいるようだが、こちらを見向きもしない。
「いつもの保存薬と消毒薬、それから追加でご注文いただいたサ7239波長、ナ2580波長、ミ4682波長の霊糸です」
「君のところのはいつも品物が良くて早くて助かる。
こちらの使用済みの液体と、それからこちらの廃棄も頼む」
廃棄方法に指定がある液体や生成物も引き取ることになっており、籠の中身と入れ替える。
もし証拠の品が掴めれば、回収品に潜り込ませる予定だ。
緊張している様子を悟られないよう、手際よく詰めるつもりが、瓶を一つ落としかけ、それを天貝が寸でのところで拾った。
思わず二人して安堵の溜息をつく。
「気を付けてくれたまえ」
眉を顰めて尤もらしくそういう天貝に咲は小さくなって、申し訳ございません、と答えた。
籠を背負い、立ち上がる。
この屋敷を出て、護挺に戻るまでが仕事だ。
「ではまた2週間後、頼むよ」
「はい。いつも御贔屓にありがとうございます」
荷物に支障がない程度に頭を下げる。
他の研究員はやはり、咲には目もくれなかった。
天貝が咲を蔵の出入り口まで送る。
門外不出の研究を行う場だ、部外者が外に出るまで見送ることになっていると聞いている。
「では、な」
一瞬だけ解けた様に笑うその表情に、ああやはり彼は如月で、こうして笑みを浮かべるだけ余裕があるのだということに、ひどく頼もしく思った。
つられて淡く笑みを浮かべる。
「はい、毎度ありがとうございます」
頭を下げ、蔵の重い扉を開ける。
もし証拠の品が回収品に含まれていればここで天候の話をする事になっているが、彼が口を開かないことを見ると今回はないのだろう。
咲の訪問が初回でもあるから、それは当然とも言える。
薄暗い蔵から出るとその初秋の西日が眩しく、目を細める。
重い籠を背負いなおし、振り返ると薄暗い蔵から穏やかな、でも鋭く意志の籠った瞳が咲を見送る。
自分の妹を殺した組織への潜入とは、己を殺して従事することになる。
辛い任務だろうことは想像に容易い。
もう一度、彼に軽く頭を下げ、咲は背を向けて歩き出した。
背後で扉の閉まる音が聞こえた。
教えられたとおりに声をかける。
細い声は薄暗くひんやりとした蔵の中に吸い込まれていった。
咲は辺りの気配を探る。
声が届いていないのか、もう一度声をかけようかと思った矢先、奥から人の気配が近づいてくるのを感じた。
「今日から新しい方が来られると聞いていましたが、貴方ですか」
細身の髪の長い色白の男が咲に声をかけた。
白衣を纏い、いかにも研究職らしい姿だ。
技術開発局から見せてもらった写真と一致する容姿は、如月がこんなヤワそうな姿になると言うのか、と思わず溢していたものだ。
元の体格の良い姿とはまるで違う割に、違和感なく動けている様子に咲は人知れず安堵する。
「はい、
「君が。
話は前の営業から聞いているよ。
僕は
如月は妻の旧姓だという天貝を名乗ることに決まっていた。
彼で間違い無いだろう。
「では早速品物を見せてもらおうか」
階段を降り、通路を抜けた先には薄暗い明かりの中で水槽のようなものがいくつも並び、薬品の独特な匂いが立ち込めている。
他に2人程研究者がいるようだが、こちらを見向きもしない。
「いつもの保存薬と消毒薬、それから追加でご注文いただいたサ7239波長、ナ2580波長、ミ4682波長の霊糸です」
「君のところのはいつも品物が良くて早くて助かる。
こちらの使用済みの液体と、それからこちらの廃棄も頼む」
廃棄方法に指定がある液体や生成物も引き取ることになっており、籠の中身と入れ替える。
もし証拠の品が掴めれば、回収品に潜り込ませる予定だ。
緊張している様子を悟られないよう、手際よく詰めるつもりが、瓶を一つ落としかけ、それを天貝が寸でのところで拾った。
思わず二人して安堵の溜息をつく。
「気を付けてくれたまえ」
眉を顰めて尤もらしくそういう天貝に咲は小さくなって、申し訳ございません、と答えた。
籠を背負い、立ち上がる。
この屋敷を出て、護挺に戻るまでが仕事だ。
「ではまた2週間後、頼むよ」
「はい。いつも御贔屓にありがとうございます」
荷物に支障がない程度に頭を下げる。
他の研究員はやはり、咲には目もくれなかった。
天貝が咲を蔵の出入り口まで送る。
門外不出の研究を行う場だ、部外者が外に出るまで見送ることになっていると聞いている。
「では、な」
一瞬だけ解けた様に笑うその表情に、ああやはり彼は如月で、こうして笑みを浮かべるだけ余裕があるのだということに、ひどく頼もしく思った。
つられて淡く笑みを浮かべる。
「はい、毎度ありがとうございます」
頭を下げ、蔵の重い扉を開ける。
もし証拠の品が回収品に含まれていればここで天候の話をする事になっているが、彼が口を開かないことを見ると今回はないのだろう。
咲の訪問が初回でもあるから、それは当然とも言える。
薄暗い蔵から出るとその初秋の西日が眩しく、目を細める。
重い籠を背負いなおし、振り返ると薄暗い蔵から穏やかな、でも鋭く意志の籠った瞳が咲を見送る。
自分の妹を殺した組織への潜入とは、己を殺して従事することになる。
辛い任務だろうことは想像に容易い。
もう一度、彼に軽く頭を下げ、咲は背を向けて歩き出した。
背後で扉の閉まる音が聞こえた。
