新副隊長編
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咲は誰にもつけられていないか、密かに気配を探りながら技術開発局の研究施設の1つにやってきた。
いくつかある研究施設の1つで、ここでは魂魄強化の研究が行われている。
それは初代局長浦原が隊長であった頃からの研究テーマだ。
重い扉を開け、笠を脱ぐ。
薄暗くも長い廊下の向こうからやってきた人に頭を下げた。
彼がここにいるのは珍しいが、予想しなかったわけではない。
「お疲れ様です」
「君こそ。無事に帰り着いた様だね」
藍染は穏やかに微笑んだ。
その笑顔に緊張が解れる。
「おっす、大丈夫だったか」
「はい、ですが今日は回収品だけですよ」
「わかってる、1発目だからな。
練習みたいなもんさ」
その後ろからにっと口の端を上げてやって来た上司に歩み寄る。
彼は背を向けて歩き出し、その後ろをついていく。
彼らは情に篤い。
彼のその優しさが、温かさが、咲の心に問いかける。
証拠の品もないのになぜ彼は来たのか。
来てくれたのか 。
(いつか、彼らをも殺しかねない自分を、何故ーー)
今は亡き上司の背中が、ちらつく。
(だめだ、距離を取らねば同じ轍を踏むことになる可能性が)
「おい、なんつぅ顔してんだ」
はっと立ち止まると、彼は怪訝そうに眉を顰めて咲を見下ろしていた。
「一丁前に心配か?
如月にとってこの潜入は成功させる以外、道はねぇんだ。
経験も豊富だからな、慎重に万全を期すに違いねぇ。
何、あいつなら抜かり無くやるさ。
お前は安心して、自分の担当に専念すりゃいい」
如月の心配こそすれど、何を考えているのかと、青褪め手を握り締める。
全ては、あの絶望を再び味わいたくないという、自己保身に他ならない。
「はい」
そう短く答えて胸に渦巻く黒いものを抑える。
姿は霊骸で変えているとは言え、敵地に身を置く以上何があるかわからない。
その上敵に潜入していることが知らられば、拷問の末命を奪われるのは必至。
それでも一心にこれだけ言わせる程、如月の実力は高い。
その彼を、自分の失態で喪うことなど許されないのだ。
「如月君も君ならばと頼りにしていたよ」
背後から掛けられた声に驚いて振り返る。
そこにはやはり穏やかな笑みを浮かべた藍染がいた。
「あの、如月五席は、なぜそのような……」
「どういうことだい?」
「私は、罪人です」
囁く様な声でそう早口に言う。
「彼は言っていたよ。
高い業務達成率、隊長格が信用していて、同じ道場出身。
彼女を信頼するのに他に理由がいりません、とね」
その言葉に、どこかで見たと思っていたその場所を思い出す。
席も家庭もある為、道場に住み込むわけではないが、時折元字塾の鍛錬に顔を出していたはずだ。
手合わせもしてもらったこともあるように記憶している。
「それに彼も君1人に背負わされた罪のことは理解してるようだったよ」
はっと顔を上げると、目を細めた藍染の顔が予想よりも近く、慌てて1、2歩下がる。
穏な優しい表情に、故人が被る。
己の罪は深い。
無意識に首に手をやる。
今は術により姿をかくしているが、この赤色従首輪に課された罪は、今や響河を止められなかった事だけではない。
蒼潤を殺し、彼の思いと未来を壊した己を縛る赤なのだ。
脳裏に掠める最期が、血の気を奪う。
「すまない、辛いことを思い出させてしまっただろうか」
申し訳なさそうな顔に慌てて首を横に振る。
「だが君は過去に縛られすぎていると、僕も思うよ。
今の君を、もっと大切にしなければ」
彼はいつも、自分の予想外の言葉を紡ぐ。
その意図を図る事は難しい。
今だってそうだ、何故、他の隊の罪人にそれ程優しくしてくれるのか。
肩に重みが乗って、振り仰ぐと一心が微笑んで頷く。
故人朱鷺和 に目元が似ているからだろうか、その故人の如く咲を公平に見た上で信用してくれていると無意識に信用していた。
罪人と呼ばれて長い咲にはそれが何より心強いものだった。
いくつかある研究施設の1つで、ここでは魂魄強化の研究が行われている。
それは初代局長浦原が隊長であった頃からの研究テーマだ。
重い扉を開け、笠を脱ぐ。
薄暗くも長い廊下の向こうからやってきた人に頭を下げた。
彼がここにいるのは珍しいが、予想しなかったわけではない。
「お疲れ様です」
「君こそ。無事に帰り着いた様だね」
藍染は穏やかに微笑んだ。
その笑顔に緊張が解れる。
「おっす、大丈夫だったか」
「はい、ですが今日は回収品だけですよ」
「わかってる、1発目だからな。
練習みたいなもんさ」
その後ろからにっと口の端を上げてやって来た上司に歩み寄る。
彼は背を向けて歩き出し、その後ろをついていく。
彼らは情に篤い。
彼のその優しさが、温かさが、咲の心に問いかける。
証拠の品もないのになぜ彼は来たのか。
(いつか、彼らをも殺しかねない自分を、何故ーー)
今は亡き上司の背中が、ちらつく。
(だめだ、距離を取らねば同じ轍を踏むことになる可能性が)
「おい、なんつぅ顔してんだ」
はっと立ち止まると、彼は怪訝そうに眉を顰めて咲を見下ろしていた。
「一丁前に心配か?
如月にとってこの潜入は成功させる以外、道はねぇんだ。
経験も豊富だからな、慎重に万全を期すに違いねぇ。
何、あいつなら抜かり無くやるさ。
お前は安心して、自分の担当に専念すりゃいい」
如月の心配こそすれど、何を考えているのかと、青褪め手を握り締める。
全ては、あの絶望を再び味わいたくないという、自己保身に他ならない。
「はい」
そう短く答えて胸に渦巻く黒いものを抑える。
姿は霊骸で変えているとは言え、敵地に身を置く以上何があるかわからない。
その上敵に潜入していることが知らられば、拷問の末命を奪われるのは必至。
それでも一心にこれだけ言わせる程、如月の実力は高い。
その彼を、自分の失態で喪うことなど許されないのだ。
「如月君も君ならばと頼りにしていたよ」
背後から掛けられた声に驚いて振り返る。
そこにはやはり穏やかな笑みを浮かべた藍染がいた。
「あの、如月五席は、なぜそのような……」
「どういうことだい?」
「私は、罪人です」
囁く様な声でそう早口に言う。
「彼は言っていたよ。
高い業務達成率、隊長格が信用していて、同じ道場出身。
彼女を信頼するのに他に理由がいりません、とね」
その言葉に、どこかで見たと思っていたその場所を思い出す。
席も家庭もある為、道場に住み込むわけではないが、時折元字塾の鍛錬に顔を出していたはずだ。
手合わせもしてもらったこともあるように記憶している。
「それに彼も君1人に背負わされた罪のことは理解してるようだったよ」
はっと顔を上げると、目を細めた藍染の顔が予想よりも近く、慌てて1、2歩下がる。
穏な優しい表情に、故人が被る。
己の罪は深い。
無意識に首に手をやる。
今は術により姿をかくしているが、この赤色従首輪に課された罪は、今や響河を止められなかった事だけではない。
蒼潤を殺し、彼の思いと未来を壊した己を縛る赤なのだ。
脳裏に掠める最期が、血の気を奪う。
「すまない、辛いことを思い出させてしまっただろうか」
申し訳なさそうな顔に慌てて首を横に振る。
「だが君は過去に縛られすぎていると、僕も思うよ。
今の君を、もっと大切にしなければ」
彼はいつも、自分の予想外の言葉を紡ぐ。
その意図を図る事は難しい。
今だってそうだ、何故、他の隊の罪人にそれ程優しくしてくれるのか。
肩に重みが乗って、振り仰ぐと一心が微笑んで頷く。
故人
罪人と呼ばれて長い咲にはそれが何より心強いものだった。
