新副隊長編

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その人の良さそうな笑顔に目を奪われる。

「僕は今は休みだし、ましてや君の亭主でもないよ」

度肝を抜かれる言葉には慌てて隣へ並ぶと、彼はおかしそうに笑う。
物腰柔らかで優しいイメージが強かったが、予想以上に頑固な人なのかもしれないと、考えを改める。

彼は今まで一度も、を罪人として扱ったことはなかった。
不思議だ、彼ほどの人が自分の罪を、銀白風花紗の下にある物を、知らぬはずがない。
全てを手に入れた彼のような人が、なぜ自分にこれ程親切にしてくれるのか。
それも、女性として尊重してくれるのか。
京楽ですら先日までに対して性別など匂わせもしなかったのに。
慣れない自分が悪戯に彼の掌で転がされているような錯覚さえ覚える。
何処かで夕立でもあったのか、店に入る前より風は幾分冷たくなっていた。
確かに彼のペースでのんびり歩いて帰れば家に着く頃には暗くなっていることだろう。

「君は彼の話に涙ぐんでいたね」

ぽつりと溢れた言葉に、は思わず息を飲んで立ち止まった。
万が一にでも話を誰かに聞かれては困ると名は伏せたのだろうが、先日如月を交えて行った最後の会議の話である事は明白であった。
だがとしてはまさか気付かれているとは思っていなかったため戸惑った。

「何を思ったんだろうか」

思わず藍染を見上げた。
彼はやはり穏やかに微笑みを見下ろしている。
あまりに個人的な内容で迷ったが、ここで断るのも彼の優しさを無碍にするようで心が痛む。
少し迷ってから言葉を探し、小声で話し始めた。

「死をただの怨みに終わらせず、その命を奪った悪を絶つ道を、そして自分の生きる道を見据えていらっしゃいます。
覚悟をされているその強さに心打たれました」

「なるほど。
……彼の姿を、自分に重ねたかい」

「いえ?私は誰も怨んでなど」

「……そうか、憶測で言ってすまないね。
涙が滲む程であれば、どこか気持ちを重ねている節があるのではと思ったんだ。
人は自分の立場に置き換えた時、尚のこと心に来るものだから」

すまなそうな顔をする藍染には首を振る。
そして彼は、人の事を本当に良く見、人の心をよく知っていると思った。
どちらともなく2人は再び歩き出した。

「実を言いますと、私は怨まれる側なんです。私を怨む子が、あの方のようにご立派になられる事を、思わず願ってしまいました」

そう苦笑するに、少し驚いた顔をしてから、藍染は穏やかに微笑んだ。
もしかしたら蒼純の最期から白哉の事だと気づいたのかもしないとは思ったがーー彼ならば構わないだろうと、思ってしまった。

「君にとって、その子はとても大切な存在なんだね。
辛い覚悟を決める程」

「はい。とても」

噛み締めるような彼の言葉がひどく嬉しくて、思わずはにかんだ。







「あっ!」

御籤の便りの存在を忘れたまま帰宅し、それに気づき、思わず声を上げた。
「吉」の御籤は潜入の成功を伝えるものと事前に決めていた。
それ以上になんの情報もないが、それだけでには十分な価値があった。
だがどうした事だろうか、藍染隊長たる人が気付いていながら忘れるなどあるはずが無かろうと首を傾げる。
仮に気付いていなかったのだとしたら、一連の行動の理由は何なのだろうか。
やはりどこかでを罪人として見ており、何か見定めるために近づいたのだろうか。

思い出す穏やかな眼差しが、故人と被る。
疑われることを思うと、心の奥が締め付けられるようだった。
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