新副隊長編
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中はそれ程混んではいない。
軽く几帳で分けられた空いたテーブルに案内される。
「せっかくのお出かけですのに暑かったでしょう」
店員がお冷とお絞りを出しながら言った。
彼女の言葉が自分達が恋人か何かであることを匂わせているため咲は慌てて否定せねばと思ったが、藍染が穏やかに微笑んだ。
「ええ、でもこういう時期しか見られない姿もありますから」
ちらりと藍染の視線を受ける。
それが薄物のことだと分かると急に気恥ずかしくなり、コップを見つめた。
そもそも赤の他人の店員の言葉を訂正する必要などどこにもない。
その勘違いが何か問題を招くことはないからだ。
むしろこれから懐にある如月の手紙の話をするならば尚のこと、ただの恋人か何かだと思われていたほうが都合が良い。
いい歳して思わず焦った自分が恥ずかしくなった。
「そうですね、とてもよくお似合いですもの」
店員の視線と言葉に咲は更に恥ずかしくなった。
こんな世辞にさえ慣れないのかと藍染に思われただろうかと思うと、尚のこと。
「ご注文はお決まりですか」
「どうするかい」
「あ、あんみつで」
小さな声で適当に注文する。
「では僕は……そうだな葛切りを」
「かしこまりました」
店員が店の奥へと入ると藍染が微笑んだ。
「新鮮だな、君のそういう姿は」
「年齢に不相応でお恥ずかしい限りです」
「いや、むしろ僕には好ましく映るよ。
真面目な君の過去が垣間見える」
「お上手……ですね」
「お世辞ではないんだがな」
彼は困ったように笑い、咲は返答に困った。
「君はとても純粋だと、常々思っているんだ」
その言葉が意外で首を傾げる。
自分の血濡れた手を思えば彼の言葉は到底理解できない。
彼はその言葉の意味を説明することなく、冷たい水を飲んだ。
咲もそれに従ってコップを手にする。
冷たく結露する硝子はひどく涼しげで、見ているだけでも癒される。
程なくして甘味が運ばれてきた。
美しい模様の皿に盛られたあんみつに咲は顔を綻ばせた。
そしてふと視線を感じて藍染を見た。
彼は穏やかな眼差しで、にっこりと微笑んだので、また歳不相応な事をしたかと微かに頬を赤らめた。
藍染の無言の優しさは、不思議と蒼純を思い出させる。
彼と、蒼純を看取ったからだろうか。
「いただこうか」
「はい」
スプーンで口に運ぶと、程よく冷えた甘さが身体に染み渡る気がした。
どうやら小腹も空いていたらしい。
「美味いだろう?」
「はい」
「僕も隊士に聞いてね。
一度来てからすっかり常連になってしまった」
隊士の仲がよいという五番隊らしい話だと、咲は思った。
他愛無い話が続き、咲の緊張も解れた。
藍染が話し出すのを待っていたがなかなか話にならず、自分から御籤の話を切り出そうと思った矢先、店が混み始め、2人は顔を見合わせて頷き合い出ることにした。
会計は各自でと当たり前に思っていたのに、藍染があっという間に2人分支払ってしまい、慌てる。
「藍染隊長、自分の分は自分で支払います」
「ここで僕に払わせてくれな方が悔しいかな。
さぁ家まで送ろう」
その言葉に京楽が思い出され、慌てて頭から彼を追い出す。
「それには及びません」
「それは聞けないね、家に着く頃にはもう暗くなるかもしれない」
「いえ、そんな」
「さあ行こう」
歩き出す藍染の後ろをすごすごと付いていくと、彼は振り返り困ったように笑った。
軽く几帳で分けられた空いたテーブルに案内される。
「せっかくのお出かけですのに暑かったでしょう」
店員がお冷とお絞りを出しながら言った。
彼女の言葉が自分達が恋人か何かであることを匂わせているため咲は慌てて否定せねばと思ったが、藍染が穏やかに微笑んだ。
「ええ、でもこういう時期しか見られない姿もありますから」
ちらりと藍染の視線を受ける。
それが薄物のことだと分かると急に気恥ずかしくなり、コップを見つめた。
そもそも赤の他人の店員の言葉を訂正する必要などどこにもない。
その勘違いが何か問題を招くことはないからだ。
むしろこれから懐にある如月の手紙の話をするならば尚のこと、ただの恋人か何かだと思われていたほうが都合が良い。
いい歳して思わず焦った自分が恥ずかしくなった。
「そうですね、とてもよくお似合いですもの」
店員の視線と言葉に咲は更に恥ずかしくなった。
こんな世辞にさえ慣れないのかと藍染に思われただろうかと思うと、尚のこと。
「ご注文はお決まりですか」
「どうするかい」
「あ、あんみつで」
小さな声で適当に注文する。
「では僕は……そうだな葛切りを」
「かしこまりました」
店員が店の奥へと入ると藍染が微笑んだ。
「新鮮だな、君のそういう姿は」
「年齢に不相応でお恥ずかしい限りです」
「いや、むしろ僕には好ましく映るよ。
真面目な君の過去が垣間見える」
「お上手……ですね」
「お世辞ではないんだがな」
彼は困ったように笑い、咲は返答に困った。
「君はとても純粋だと、常々思っているんだ」
その言葉が意外で首を傾げる。
自分の血濡れた手を思えば彼の言葉は到底理解できない。
彼はその言葉の意味を説明することなく、冷たい水を飲んだ。
咲もそれに従ってコップを手にする。
冷たく結露する硝子はひどく涼しげで、見ているだけでも癒される。
程なくして甘味が運ばれてきた。
美しい模様の皿に盛られたあんみつに咲は顔を綻ばせた。
そしてふと視線を感じて藍染を見た。
彼は穏やかな眼差しで、にっこりと微笑んだので、また歳不相応な事をしたかと微かに頬を赤らめた。
藍染の無言の優しさは、不思議と蒼純を思い出させる。
彼と、蒼純を看取ったからだろうか。
「いただこうか」
「はい」
スプーンで口に運ぶと、程よく冷えた甘さが身体に染み渡る気がした。
どうやら小腹も空いていたらしい。
「美味いだろう?」
「はい」
「僕も隊士に聞いてね。
一度来てからすっかり常連になってしまった」
隊士の仲がよいという五番隊らしい話だと、咲は思った。
他愛無い話が続き、咲の緊張も解れた。
藍染が話し出すのを待っていたがなかなか話にならず、自分から御籤の話を切り出そうと思った矢先、店が混み始め、2人は顔を見合わせて頷き合い出ることにした。
会計は各自でと当たり前に思っていたのに、藍染があっという間に2人分支払ってしまい、慌てる。
「藍染隊長、自分の分は自分で支払います」
「ここで僕に払わせてくれな方が悔しいかな。
さぁ家まで送ろう」
その言葉に京楽が思い出され、慌てて頭から彼を追い出す。
「それには及びません」
「それは聞けないね、家に着く頃にはもう暗くなるかもしれない」
「いえ、そんな」
「さあ行こう」
歩き出す藍染の後ろをすごすごと付いていくと、彼は振り返り困ったように笑った。