新副隊長編
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(上手くいったか)
咲は神木の低い枝に結ばれた、片端だけを結び目に戻した、他とは少し見た目の違う神籤 を解いて懐にしまう。
伊勢家の治める神宮を本社としているこの神社は、霊術院の医務室の担当である佐々木の実家である。
如月は霞大路家の研究所に出入りを許された時には、まずここで御籤を神木の枝に結ぶことに決まっていた。
何気ない顔をして神社で賽銭をし、帰る。
普段あまり袖を通す事のない着物は動きやすさ重視の死覇装より歩きにくい。
箪笥の肥やしになっていた薄物を取り出して今日初めて袖を通したが、やはり烈の見立てだからか質も良く涼しい。
爽やかな勿忘草色に襦袢の白が透け、強い風に時折はためく裾の草模様が美しい。
たまには着てやらねば勿体ないと申し訳なく思うと同時に、やはり烈は贈り物のセンスまで何一つ欠けたところのない人だと、改めて思う。
緩く纏め横に流した髪を風が巻くのを押さえながら鳥居から続く階段を下る。
随分日も傾き、昼間よりましだとはいえまだ暑い。
幸いにも今日は風が強く、幾分か暑さを紛らわせた。
まずは自室に戻り、着替えを済ませてから報告をと思っていた道中、正面から見知った男がやってきた。
一礼してその場を去るつもりであった。
万が一隊士が近くにいれば目に止まりかねない相手だからだ。
だが彼はそれを意に介さないのか、咲を見て微かに目を見開いてから片手を上げた。
「やぁ、今日は休みかい」
「はい。」
何かもう一言返すべきかと思いながらも、不器用な咲は言葉が出てこない。
そんな様子に藍染は穏やかな瞳を向け、口を開いた。
「ああそうだ、どうだいせっかくだからお茶でも……なんて、下手な誘いだろうか」
照れたように頬を掻く姿に咲は驚く。
そして改めて彼の発言の意図を考え、自分の懐にあるものを知っているのでは無いかという仮説にたどり着く。
「僕も久しぶりの休みなんだが、暇を持て余してね。
少し行ったところに落ち着いた茶屋があるんだ」
「では……」
控えめに頷いて無意識に懐の御籤の上から手を抑えた。
数歩後ろをついて行こうかと思ったが彼が並んで歩くために歩みを遅らせたので、戸惑いながら隣に立つ。
藍染は生成りに部分的に灰色の縞模様が描かれた薄物で、よく似合っている上に涼しげだと横目に見て思った。
烈もそうだが、隊長たるものは欠けるところがないのかもしれない。
吹き付ける強い風に巻き上げられる髪を抑える。
その手を見つめる視線に目を上げると、藍染の瞳とぱちりとあった。
「すまない……思わず見惚れたんだ」
ゆったりとした低い声に目を瞬かせる。
「華奢で女性らしい手だと思ってね」
思わず自分の手を見た。
剣だこも傷跡もある手だ。
爪は清潔に切りそろえられてはいるが、それ以上の手入れはされていない。
ささめくれが少し目立つくらいである。
藍染の体の横に下がる彼の手を見る。
節のある手は浮竹よりは健康的な色をしていて肉付きも良いが、京楽よりは細く毛深くもない。
男性的だが綺麗に整った手で、彼の手にこそ見惚れる女性は多いに違いない。
「着いたよ」
気づくと小さな店の前で、促されるがまま彼に着いて入る。
中はひんやりと涼しく、風鈴がちりんと鳴った。
咲は神木の低い枝に結ばれた、片端だけを結び目に戻した、他とは少し見た目の違う
伊勢家の治める神宮を本社としているこの神社は、霊術院の医務室の担当である佐々木の実家である。
如月は霞大路家の研究所に出入りを許された時には、まずここで御籤を神木の枝に結ぶことに決まっていた。
何気ない顔をして神社で賽銭をし、帰る。
普段あまり袖を通す事のない着物は動きやすさ重視の死覇装より歩きにくい。
箪笥の肥やしになっていた薄物を取り出して今日初めて袖を通したが、やはり烈の見立てだからか質も良く涼しい。
爽やかな勿忘草色に襦袢の白が透け、強い風に時折はためく裾の草模様が美しい。
たまには着てやらねば勿体ないと申し訳なく思うと同時に、やはり烈は贈り物のセンスまで何一つ欠けたところのない人だと、改めて思う。
緩く纏め横に流した髪を風が巻くのを押さえながら鳥居から続く階段を下る。
随分日も傾き、昼間よりましだとはいえまだ暑い。
幸いにも今日は風が強く、幾分か暑さを紛らわせた。
まずは自室に戻り、着替えを済ませてから報告をと思っていた道中、正面から見知った男がやってきた。
一礼してその場を去るつもりであった。
万が一隊士が近くにいれば目に止まりかねない相手だからだ。
だが彼はそれを意に介さないのか、咲を見て微かに目を見開いてから片手を上げた。
「やぁ、今日は休みかい」
「はい。」
何かもう一言返すべきかと思いながらも、不器用な咲は言葉が出てこない。
そんな様子に藍染は穏やかな瞳を向け、口を開いた。
「ああそうだ、どうだいせっかくだからお茶でも……なんて、下手な誘いだろうか」
照れたように頬を掻く姿に咲は驚く。
そして改めて彼の発言の意図を考え、自分の懐にあるものを知っているのでは無いかという仮説にたどり着く。
「僕も久しぶりの休みなんだが、暇を持て余してね。
少し行ったところに落ち着いた茶屋があるんだ」
「では……」
控えめに頷いて無意識に懐の御籤の上から手を抑えた。
数歩後ろをついて行こうかと思ったが彼が並んで歩くために歩みを遅らせたので、戸惑いながら隣に立つ。
藍染は生成りに部分的に灰色の縞模様が描かれた薄物で、よく似合っている上に涼しげだと横目に見て思った。
烈もそうだが、隊長たるものは欠けるところがないのかもしれない。
吹き付ける強い風に巻き上げられる髪を抑える。
その手を見つめる視線に目を上げると、藍染の瞳とぱちりとあった。
「すまない……思わず見惚れたんだ」
ゆったりとした低い声に目を瞬かせる。
「華奢で女性らしい手だと思ってね」
思わず自分の手を見た。
剣だこも傷跡もある手だ。
爪は清潔に切りそろえられてはいるが、それ以上の手入れはされていない。
ささめくれが少し目立つくらいである。
藍染の体の横に下がる彼の手を見る。
節のある手は浮竹よりは健康的な色をしていて肉付きも良いが、京楽よりは細く毛深くもない。
男性的だが綺麗に整った手で、彼の手にこそ見惚れる女性は多いに違いない。
「着いたよ」
気づくと小さな店の前で、促されるがまま彼に着いて入る。
中はひんやりと涼しく、風鈴がちりんと鳴った。