新副隊長編
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浮竹とて蒼純の最期を想像しなかった訳ではない。
咲と命のやり取りをするその時を、自分に置き換えてみたりという愚かな仮定も何度かした。
海燕に、咲が自分の前に立ち塞がるならば彼女を殺し泣くこともない、と言った筈であるのに、自分はいつも彼女を殺せなかった。
「白哉君を頼まれたとは聞いたが」
その事とは別だろうと視線で問う浮竹に、一心は一つ頷く。
「浮竹隊長に言ってもなにも解決しやしないのは分かっているんです。
だからあいつも言わない。
でもあいつがずっとその一言にも苦しめられているように見えるんです。
どうにかしてやれないもんかと思いまして。
このままあいつを燻らせるわけにもいきません……あ、勿論あいつの為でもありますよ!」
大切な仲間が落ち込んでいる姿を前に仕事を匂わせた発言をしてしまったと焦る様子に、浮竹は安心させるように微笑んだ。
プライベートな話ではあるが、彼がそれ程心に引っかかっている蒼純の一言が気にならない筈がない。
ならば、彼が話しやすい雰囲気に運ぶしかない。
「分かっているさ。
危険な任務を任されがちの彼女が実力を出し切れる状況を作ることは、護廷の為だけではなく、彼女の身を護る事でもある。
よく分かっていてくれる君が彼女の上司で助かるよ」
その言葉にほっとしつつもどこか苦しげな表情を一心は浮かべた。
池でちゃぽんと、鯉が跳ねた音がした。
「……愛しいと、そう仰ったんです」
てっきり負の言葉を投げかけられたに違いないとばかり思っていたため、思わず呆気にとられる。
そして京楽とのことを思い、逆に辛い思いをさせている可能性を思った。
なるほど一心の言う通り、そして彼の想像以上に、蒼純の一言は彼女を苦しめる事だろうと頷く。
ー呪い殺してやる!!!
必ずだ!!!!!ー
響河の最後の言葉は憎しみの塊だった。
その殺気に殺されるのではないかと錯覚するほどの、憎悪だった。
だが、だからこそだ。
その最期はより、記憶の中の響河の存在の負の面を強調させる。
自分達が彼をこの世から消し去っても、彼にも落ち度があったと自分達の行動をどこかで正当化できていた。
咲自身、彼を救えたのではないかと後悔する事はあっても、響河自身不幸に陥れられた心弱き罪人に他ならない。
咲は罪人となったが、その罪は、響河の闇を止められなかった罪として彼女は甘んじて受けていた。
だが蒼純の場合はどうだろう。
彼女に最期、愛を告げたと言うのなら、咲の中で彼は事実以上に美化されてもおかしくない。
それはいつしか、彼を殺したことへの罪を問いかけるようになるだろう。
その罪は、優しく温かい上司を殺した罪だ。
多くの人の希望と期待を背負った、朽木家次期当主を殺した罪。
どちらが彼女の心を削るか、答えは明白である。
「彼女は負の感情を向けられることにはなれているが、愛を向けられることには慣れていない。
それが、友愛であれ、部下への愛であれ、だ」
故人の手前、愛の意味の言及はしないようにと釘を刺す。
「彼女は悩むだろう。
自分を恨む人を殺すことと、自分を思ってくれた人を殺すとのでは心に背負うものの質が全く異なってくる。
だがそれも彼女には必要なことだ。
彼女が生きていく為に、必要だ」
自分自身にも言い聞かせるように呟く。
変えがたい愛を向けてくれる彼女が自分の決意を遮るならば殺すと決めた己が、彼女の生きる為だと語るとは大きな矛盾を孕む。
いつの日か自分は、今の彼女と同じかそれ以上の苦しみを背負う事になるかもしれない。
それを成すと心に決めた、決めたはずなのだ。
だがそれを思う度、幾度と無く苦しめられた病以上に胸が苦しい。
一心は僅かに目を見開いたのに気づき、浮竹は押し隠していたはずの思いが表れてしまったのだろうかとはっと彼を見た。
「いや、なんつーか……やっぱり浮竹隊長は器がでかいなと思いまして。
見ている隊長も辛いだろうに。
俺だったら、それが乗り越える壁だからとはなかなか思えない」
「薄情だろうか」
「いいえ。
受け取り方にもよるかとは思いますが、本質を見据えた思いやりであり、見守る者に求められる強さだと思います」
「そう言ってくれる一心君は情に篤いな」
そう言う自分が心の中で歯軋りしているとは露にも感じさせない淡い苦笑を浮かべてみせる。
誰の前でも、己の心の葛藤は見せてはならない。
それが古株の隊長と言われる程になった自分が求められる姿。
胸に抱えた葛藤など直近の部下である海燕も知らない。
自分の決意を遂げるためならば、何者でも退ける。
それはこの、死すべきであった命の背負う責務だ。
その責務を全うする時、彼女が傍にいないことを切に願うのに、最期の願いが叶うならば、彼女との逢瀬を望むだろう。
この願いの矛盾の結末は時の運に任せるしか無いと長い人生で学んだが、それでも尚、心は疼くのだった。
咲と命のやり取りをするその時を、自分に置き換えてみたりという愚かな仮定も何度かした。
海燕に、咲が自分の前に立ち塞がるならば彼女を殺し泣くこともない、と言った筈であるのに、自分はいつも彼女を殺せなかった。
「白哉君を頼まれたとは聞いたが」
その事とは別だろうと視線で問う浮竹に、一心は一つ頷く。
「浮竹隊長に言ってもなにも解決しやしないのは分かっているんです。
だからあいつも言わない。
でもあいつがずっとその一言にも苦しめられているように見えるんです。
どうにかしてやれないもんかと思いまして。
このままあいつを燻らせるわけにもいきません……あ、勿論あいつの為でもありますよ!」
大切な仲間が落ち込んでいる姿を前に仕事を匂わせた発言をしてしまったと焦る様子に、浮竹は安心させるように微笑んだ。
プライベートな話ではあるが、彼がそれ程心に引っかかっている蒼純の一言が気にならない筈がない。
ならば、彼が話しやすい雰囲気に運ぶしかない。
「分かっているさ。
危険な任務を任されがちの彼女が実力を出し切れる状況を作ることは、護廷の為だけではなく、彼女の身を護る事でもある。
よく分かっていてくれる君が彼女の上司で助かるよ」
その言葉にほっとしつつもどこか苦しげな表情を一心は浮かべた。
池でちゃぽんと、鯉が跳ねた音がした。
「……愛しいと、そう仰ったんです」
てっきり負の言葉を投げかけられたに違いないとばかり思っていたため、思わず呆気にとられる。
そして京楽とのことを思い、逆に辛い思いをさせている可能性を思った。
なるほど一心の言う通り、そして彼の想像以上に、蒼純の一言は彼女を苦しめる事だろうと頷く。
ー呪い殺してやる!!!
必ずだ!!!!!ー
響河の最後の言葉は憎しみの塊だった。
その殺気に殺されるのではないかと錯覚するほどの、憎悪だった。
だが、だからこそだ。
その最期はより、記憶の中の響河の存在の負の面を強調させる。
自分達が彼をこの世から消し去っても、彼にも落ち度があったと自分達の行動をどこかで正当化できていた。
咲自身、彼を救えたのではないかと後悔する事はあっても、響河自身不幸に陥れられた心弱き罪人に他ならない。
咲は罪人となったが、その罪は、響河の闇を止められなかった罪として彼女は甘んじて受けていた。
だが蒼純の場合はどうだろう。
彼女に最期、愛を告げたと言うのなら、咲の中で彼は事実以上に美化されてもおかしくない。
それはいつしか、彼を殺したことへの罪を問いかけるようになるだろう。
その罪は、優しく温かい上司を殺した罪だ。
多くの人の希望と期待を背負った、朽木家次期当主を殺した罪。
どちらが彼女の心を削るか、答えは明白である。
「彼女は負の感情を向けられることにはなれているが、愛を向けられることには慣れていない。
それが、友愛であれ、部下への愛であれ、だ」
故人の手前、愛の意味の言及はしないようにと釘を刺す。
「彼女は悩むだろう。
自分を恨む人を殺すことと、自分を思ってくれた人を殺すとのでは心に背負うものの質が全く異なってくる。
だがそれも彼女には必要なことだ。
彼女が生きていく為に、必要だ」
自分自身にも言い聞かせるように呟く。
変えがたい愛を向けてくれる彼女が自分の決意を遮るならば殺すと決めた己が、彼女の生きる為だと語るとは大きな矛盾を孕む。
いつの日か自分は、今の彼女と同じかそれ以上の苦しみを背負う事になるかもしれない。
それを成すと心に決めた、決めたはずなのだ。
だがそれを思う度、幾度と無く苦しめられた病以上に胸が苦しい。
一心は僅かに目を見開いたのに気づき、浮竹は押し隠していたはずの思いが表れてしまったのだろうかとはっと彼を見た。
「いや、なんつーか……やっぱり浮竹隊長は器がでかいなと思いまして。
見ている隊長も辛いだろうに。
俺だったら、それが乗り越える壁だからとはなかなか思えない」
「薄情だろうか」
「いいえ。
受け取り方にもよるかとは思いますが、本質を見据えた思いやりであり、見守る者に求められる強さだと思います」
「そう言ってくれる一心君は情に篤いな」
そう言う自分が心の中で歯軋りしているとは露にも感じさせない淡い苦笑を浮かべてみせる。
誰の前でも、己の心の葛藤は見せてはならない。
それが古株の隊長と言われる程になった自分が求められる姿。
胸に抱えた葛藤など直近の部下である海燕も知らない。
自分の決意を遂げるためならば、何者でも退ける。
それはこの、死すべきであった命の背負う責務だ。
その責務を全うする時、彼女が傍にいないことを切に願うのに、最期の願いが叶うならば、彼女との逢瀬を望むだろう。
この願いの矛盾の結末は時の運に任せるしか無いと長い人生で学んだが、それでも尚、心は疼くのだった。
