新副隊長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「っと」
ふと我に帰り、唇を離す。
咲は耳まで真っ赤にして浅い息を繰り返していた。
こんなことをする予定ではなかったのだ。
良い歳の自分が、まさか。
(まさかこんな……若者でもあるまいに)
胸をじわじわと占める歓喜に戸惑う。
まだ自分はそれほど若かったのかと。無邪気さを残していたのかと。
浮竹と違い、早々に多くの女を取っ替え引っ替えした。
でなければやるせなかったのだ。
そんなことも慣れて、多少のことでは大して心動かされる事もなくなったと思っていた。
なのに今はどうだ、胸に手を触れられているだけなのに、肌が粟立つ。
浅い呼吸がかかるだけで、まるで。
「な、んで」
泣きそうなか細い声に、愛おしさが溢れ目を細める。
そして心の中で早口で言い訳をした。
(だがこれはきっと、彼女の生を繋ぎ止めるための、1本の糸になり得る)
「男女の情に……理由なんているかい?」
思っていたよりもずっと、優しい声だった。
自分がこんな声を出せるのだと、知らなかった。
星の数程女を抱いたのに、だ。
咲は何も答えない。
「ボクはいい歳だ。純情でもなければ、君と誰かの仲をどうこう言うつもりも、ましてや縛るつもりもない。
だが……戯れというのには些か」
そっと後毛を耳に掛けてやると、咲はびくりと震え、思わずと言ったように見上げた。
これ程心震えたのはいつぶりだろうか。
その潤んだ瞳の、美しい事。
(最早ここまで来たら何を堪えることもないだろう。)
力ない腕の抵抗に逆らって女の身を引き寄せ、その耳に唇を寄せる。
「思いが深すぎる」
そのまま腕の中に彼女を閉じ込め、透き通った首筋に口付けると腕の中の身体が震えた。
いや、震えたのは自分かもしれない。
ここまで来るのにどれだけの時間が掛かったのだろう。
気やすい女にはあれほど触れたのに、この思春期の恋人ような戯れだけに、一体どれほど。
(恥ずかしくなるね、どうも)
それと同時に、どうして友としての一線を越えてしまったのだろうとも、思う。
ここまでこれほど耐えてきた、墓場まで持っていくつもりだった思いだ。
だが時間は巻き戻すことはできない。
勿論彼女が自分の物でない事は百も承知だ。
だが彼女の心はまた、親友の物でもないことも知っている。
3人は曖昧な関係のまま、その深すぎる思いも等しく、死ぬまで抱えてゆくつもりだったに違いないと、京楽は思っていた。
九番隊の魂魄消失案件に同行した際、響河への思いに泣いた彼女を抱きしめた浮竹の言葉が蘇る。
ー……いいや、お前でも同じようにしたさ。
愛おしい女の気持ちに、無理に蓋をしてまで手にいれるような男じゃないさー
その時とは状況が違う、と心の中で首を振る。
咲の気持ちを押し込めて事に進んだわけではない。
親友の胸中を思うと先に進むことは躊躇われた。
「……部屋まで送ろう」
ようやく絞り出した情けない声に、やはり自分は思っていたよりもずっと若さを残していたのだと自嘲する。
前にそう言ったのは、初めて会った時だ。
少女は頑なに拒んだ。
貴族に送らせるなどとんでもないと思ったことに気付き、送り狼になんてならないとあの時は笑い飛ばしたはずだ。
だが、恥ずかしそうに自分の胸に顔をうずめる女に、笑えないな、と心の中で独り言ちる。
そして、口付けまでして今更引き下がったところで、何も変わるものは無いだろう、と思い直す。
自分達の関係は、もう変わってしまった。
自分の背の桃色の着物を彼女に羽織らせ、前を掻き寄せて横抱きに抱き上げる。
小さな悲鳴を上げて胸倉にしがみ付く様子に思わず頬が緩んだ。
こうして見ると彼女は、どうしようもなく、1人の女だった。
そのまま月影の差さない室内へと彼女を運ぶ。
「ごめんよ。
やはり今夜だけは、許しておくれ」
崩れた三角形をどうしたら取り戻せるだろうか。
それを考えるのは、明日からにしようと心に誓って。
ふと我に帰り、唇を離す。
咲は耳まで真っ赤にして浅い息を繰り返していた。
こんなことをする予定ではなかったのだ。
良い歳の自分が、まさか。
(まさかこんな……若者でもあるまいに)
胸をじわじわと占める歓喜に戸惑う。
まだ自分はそれほど若かったのかと。無邪気さを残していたのかと。
浮竹と違い、早々に多くの女を取っ替え引っ替えした。
でなければやるせなかったのだ。
そんなことも慣れて、多少のことでは大して心動かされる事もなくなったと思っていた。
なのに今はどうだ、胸に手を触れられているだけなのに、肌が粟立つ。
浅い呼吸がかかるだけで、まるで。
「な、んで」
泣きそうなか細い声に、愛おしさが溢れ目を細める。
そして心の中で早口で言い訳をした。
(だがこれはきっと、彼女の生を繋ぎ止めるための、1本の糸になり得る)
「男女の情に……理由なんているかい?」
思っていたよりもずっと、優しい声だった。
自分がこんな声を出せるのだと、知らなかった。
星の数程女を抱いたのに、だ。
咲は何も答えない。
「ボクはいい歳だ。純情でもなければ、君と誰かの仲をどうこう言うつもりも、ましてや縛るつもりもない。
だが……戯れというのには些か」
そっと後毛を耳に掛けてやると、咲はびくりと震え、思わずと言ったように見上げた。
これ程心震えたのはいつぶりだろうか。
その潤んだ瞳の、美しい事。
(最早ここまで来たら何を堪えることもないだろう。)
力ない腕の抵抗に逆らって女の身を引き寄せ、その耳に唇を寄せる。
「思いが深すぎる」
そのまま腕の中に彼女を閉じ込め、透き通った首筋に口付けると腕の中の身体が震えた。
いや、震えたのは自分かもしれない。
ここまで来るのにどれだけの時間が掛かったのだろう。
気やすい女にはあれほど触れたのに、この思春期の恋人ような戯れだけに、一体どれほど。
(恥ずかしくなるね、どうも)
それと同時に、どうして友としての一線を越えてしまったのだろうとも、思う。
ここまでこれほど耐えてきた、墓場まで持っていくつもりだった思いだ。
だが時間は巻き戻すことはできない。
勿論彼女が自分の物でない事は百も承知だ。
だが彼女の心はまた、親友の物でもないことも知っている。
3人は曖昧な関係のまま、その深すぎる思いも等しく、死ぬまで抱えてゆくつもりだったに違いないと、京楽は思っていた。
九番隊の魂魄消失案件に同行した際、響河への思いに泣いた彼女を抱きしめた浮竹の言葉が蘇る。
ー……いいや、お前でも同じようにしたさ。
愛おしい女の気持ちに、無理に蓋をしてまで手にいれるような男じゃないさー
その時とは状況が違う、と心の中で首を振る。
咲の気持ちを押し込めて事に進んだわけではない。
親友の胸中を思うと先に進むことは躊躇われた。
「……部屋まで送ろう」
ようやく絞り出した情けない声に、やはり自分は思っていたよりもずっと若さを残していたのだと自嘲する。
前にそう言ったのは、初めて会った時だ。
少女は頑なに拒んだ。
貴族に送らせるなどとんでもないと思ったことに気付き、送り狼になんてならないとあの時は笑い飛ばしたはずだ。
だが、恥ずかしそうに自分の胸に顔をうずめる女に、笑えないな、と心の中で独り言ちる。
そして、口付けまでして今更引き下がったところで、何も変わるものは無いだろう、と思い直す。
自分達の関係は、もう変わってしまった。
自分の背の桃色の着物を彼女に羽織らせ、前を掻き寄せて横抱きに抱き上げる。
小さな悲鳴を上げて胸倉にしがみ付く様子に思わず頬が緩んだ。
こうして見ると彼女は、どうしようもなく、1人の女だった。
そのまま月影の差さない室内へと彼女を運ぶ。
「ごめんよ。
やはり今夜だけは、許しておくれ」
崩れた三角形をどうしたら取り戻せるだろうか。
それを考えるのは、明日からにしようと心に誓って。