新副隊長編
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京楽邸の百日紅が近々満開だという誘いに、浮竹は随分乗り気だった。
2人が自分を励ます為にそんな事を言ってくれているであろうことを薄々感じ、咲は最近の自分を振り返る。
任務で刀を振るっている間は忘れているが、ふとした時に心に影が差す。
響河が封印された時と上司を失うと言う状況には大差ない。
響河の時は、罪人として扱われようとそれが護廷の為にその役目を与えられるならばと耐えることもできた。
だが今はどうだろう。
銀嶺の顔を見る度罪悪感が湧き上がる。
蒼純の事を思い出すと呼吸さえ苦しい。
彼を斬った夢に魘される夜も多い。
そしていつも思い出されるのは、彼の最期の言葉だ。
ーお前が……お前が愛おしいよ、咲ー
彼は最後の瞬間まで、自分を思ってくれた。
妻を殺した自分に、殺されると言うのに。
彼が深い愛情を持って接していてくれたことは知っている。
だがそれでも時折、微かに滲み出る殺気に気付かぬ咲ではなかった。
いつか自分は彼に殺されるであろうと思っていたし、彼も殺すことを願っているに違いないと思っていた。
だがその一方で、優しい彼はきっと自分を殺した後酷い自己嫌悪に陥ることは明白で、彼に殺されるべきではないとも思っていた。
絞り出された愛の言葉の意味こそ永遠の謎となったが、彼の深い思いに変わりはない。
その失われた愛が、咲に問いかける。
なせ彼を殺したのか、と。
答えの無い問いに、戦闘以外ではぼんやりしがちであった。
ここのところは咲の身体を鑑みてか、危険な任務からは外されがちで、量としても以前よりは少なめだ。
咲としては仕事に忙殺された方が多くを忘れられる気がして、一心に任務を与えてくれるよう頼んだ事もあったがどうも渋い顔をされた。
いよいよ動き出した霞大路家の案件では、戦闘ではなく諜報や情報の伝達が仕事の主となる。
こんな状態では差し支えることだろう。
流石に自分でも、このままでは問題があると思い始めてはいた。
待ち合わせ場所だった京楽邸の離れにやってくると、咲は目を見開いた。
月明かりに照らされた池の横に佇むそれは、艶かしい白く滑らかな幹も立派に、たわわに咲き乱れる紅色を風に揺らめかせている。
「やぁ、来たねぇ。
立派だろう?
酒を飲むにはもってこいだと思ってね」
家主のゆったりとした自慢げな声に、咲は頷き歩み寄る。
縁側で酒瓶と杯を片手に家主は穏やかな笑みを浮かべている。
隣に座した咲に杯を持たせて、なみなみと酒を注いだ。
客人のために打ち水をしたのだろう。
熱気の冷めた湿り気のある空気に、酒の香りが漂う。
「浮竹は何時になるか分かんないし、始めちゃおうか。
今日のは割とさっぱりした飲み口さ」
そう言う京楽はすでに酒の匂いをさせていて、思わず苦笑する。
促されるままに口へ運ぶ。
よく冷えた甘味と旨味のある液体が、口内の熱を冷やしながら喉を通る。
「本当、夏にいい味」
ふと昔飲んだ飲み物を思い出す。
それも確か、夏にぴったりだと思ったはずだった。
考え込む咲に京楽が首を傾げる。
「昔一度、夏にぴったりの飲み物を飲んだんだ。
なんだったか……確かとても綺麗な……」
「いやぁ、懐かしい。
夏祭りじゃないかい?」
その言葉に一気に蘇る鮮やかな景色、音、香り。
賑やかな故人との思い出。
今の今まで忘れていた、まだ若い頃の楽しい時間。
思わず微笑む。
不思議と彼といると気持ちが明るくなる。
気のせいか世界も鮮やかに見える。
「ラムネっていう浮竹が買ってくれたやつだろう?
ボクも外に行った時に見かけて買おうかと思った事もあるんだけど、やっぱり3人で買わないとなと思って、あれ以来飲んでいないんだよねぇ」
優しく目を細める京楽に、咲は嬉しそうに微笑んだ。
2人が自分を励ます為にそんな事を言ってくれているであろうことを薄々感じ、咲は最近の自分を振り返る。
任務で刀を振るっている間は忘れているが、ふとした時に心に影が差す。
響河が封印された時と上司を失うと言う状況には大差ない。
響河の時は、罪人として扱われようとそれが護廷の為にその役目を与えられるならばと耐えることもできた。
だが今はどうだろう。
銀嶺の顔を見る度罪悪感が湧き上がる。
蒼純の事を思い出すと呼吸さえ苦しい。
彼を斬った夢に魘される夜も多い。
そしていつも思い出されるのは、彼の最期の言葉だ。
ーお前が……お前が愛おしいよ、咲ー
彼は最後の瞬間まで、自分を思ってくれた。
妻を殺した自分に、殺されると言うのに。
彼が深い愛情を持って接していてくれたことは知っている。
だがそれでも時折、微かに滲み出る殺気に気付かぬ咲ではなかった。
いつか自分は彼に殺されるであろうと思っていたし、彼も殺すことを願っているに違いないと思っていた。
だがその一方で、優しい彼はきっと自分を殺した後酷い自己嫌悪に陥ることは明白で、彼に殺されるべきではないとも思っていた。
絞り出された愛の言葉の意味こそ永遠の謎となったが、彼の深い思いに変わりはない。
その失われた愛が、咲に問いかける。
なせ彼を殺したのか、と。
答えの無い問いに、戦闘以外ではぼんやりしがちであった。
ここのところは咲の身体を鑑みてか、危険な任務からは外されがちで、量としても以前よりは少なめだ。
咲としては仕事に忙殺された方が多くを忘れられる気がして、一心に任務を与えてくれるよう頼んだ事もあったがどうも渋い顔をされた。
いよいよ動き出した霞大路家の案件では、戦闘ではなく諜報や情報の伝達が仕事の主となる。
こんな状態では差し支えることだろう。
流石に自分でも、このままでは問題があると思い始めてはいた。
待ち合わせ場所だった京楽邸の離れにやってくると、咲は目を見開いた。
月明かりに照らされた池の横に佇むそれは、艶かしい白く滑らかな幹も立派に、たわわに咲き乱れる紅色を風に揺らめかせている。
「やぁ、来たねぇ。
立派だろう?
酒を飲むにはもってこいだと思ってね」
家主のゆったりとした自慢げな声に、咲は頷き歩み寄る。
縁側で酒瓶と杯を片手に家主は穏やかな笑みを浮かべている。
隣に座した咲に杯を持たせて、なみなみと酒を注いだ。
客人のために打ち水をしたのだろう。
熱気の冷めた湿り気のある空気に、酒の香りが漂う。
「浮竹は何時になるか分かんないし、始めちゃおうか。
今日のは割とさっぱりした飲み口さ」
そう言う京楽はすでに酒の匂いをさせていて、思わず苦笑する。
促されるままに口へ運ぶ。
よく冷えた甘味と旨味のある液体が、口内の熱を冷やしながら喉を通る。
「本当、夏にいい味」
ふと昔飲んだ飲み物を思い出す。
それも確か、夏にぴったりだと思ったはずだった。
考え込む咲に京楽が首を傾げる。
「昔一度、夏にぴったりの飲み物を飲んだんだ。
なんだったか……確かとても綺麗な……」
「いやぁ、懐かしい。
夏祭りじゃないかい?」
その言葉に一気に蘇る鮮やかな景色、音、香り。
賑やかな故人との思い出。
今の今まで忘れていた、まだ若い頃の楽しい時間。
思わず微笑む。
不思議と彼といると気持ちが明るくなる。
気のせいか世界も鮮やかに見える。
「ラムネっていう浮竹が買ってくれたやつだろう?
ボクも外に行った時に見かけて買おうかと思った事もあるんだけど、やっぱり3人で買わないとなと思って、あれ以来飲んでいないんだよねぇ」
優しく目を細める京楽に、咲は嬉しそうに微笑んだ。