新副隊長編
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「どうしたんすか」
新しい副隊長の言葉に、浮竹は目を瞬かせた。
今日は頗 る体調が良いため、気遣われる事はないはずだ、と。
十三番隊の隊首室と言えば雨乾堂であるが、今日のように体調の良い日は他隊同様、隊舎にある隊首室で仕事をする。
そんな時に度々見かける姿が気になり海燕は思わず声を掛けたのだが、それではまるで浮竹の行動をよく見ているようだと言うようで、照れたように頭を掻いた。
「ほら、そうやって大事そうに左手を右手で隠して口元に当てている時、隊長はえらく悩ましい顔をしてるんです」
口早な言葉に、あっと口元から手を離した。
指摘されるまで気づかなかったのだ。
いつからそんな癖があったのだろうと眉を潜める浮竹に、海燕は付け加えようとした一言を躊躇った。
(そんな顔をする時、数日内に卯ノ花咲に関わる案件が上がって来ている。)
十三番隊を通す人事案件とは、複数隊の精鋭で班を組まねばならないような危険な任務だ。
今回も五番隊藍染隊長から打診があった霞大路家の危険な潜入任務だった。
藍染からその話を聞く時は朗らかだった浮竹の顔が、藍染が帰った直後に曇り、机に座って例の姿勢をとったのを海燕は見逃さなかった。
彼がそんな顔をする時には、まだ健在であった蒼純との会話を思い出す。
ー……彼の髪は願掛けなんだー
ーいったいなんの願掛けっすか?ー
ー友のための、とだけ言っておこうかなー
ー友と言いつつ、想い人だったりしてー
ーそうだな。そうだと私も嬉しいー
恐らくその友は、虚圏に調査に行った咲だと海燕は確信していた。
そして彼の行動の全てをを考えると、咲への想いがぼんやりと見えて来る。
だが副隊長になって偶然会議録を見る中で、彼が虚圏調査隊の担当をしていたと言うことを知り、また分からなくなった。
その命令を出せる程の信頼を寄せたのか。
実力主義の死神社会で、願掛けに縋る程の心配の根底にあるものは何か。
自分と想い人である都にその関係を置き換えた時、想像するのはあまりに難しい。
だが尋ねようにも上司の私情に立ち入りすぎる話だ。
彼は人の私情に平気で助言をしたり手助けをする癖に、自分の事となるとどこか隠しがちで気付かれないように壁を作る傾向にあることに、海燕は気づいていた。
「成る程な」
浮竹は己の行動の理由を見つけたのだろう。
そして恐らく、海燕の躊躇いの理由も気づいたに違いない。
彼はそれ程、人の心に敏い。
いやぁまいった、と少し困ったように笑って頬を掻いた。
「俺が見込んだだけあるな。
こうなったら偶には年長者らしく、説教でも垂れるか。
茶でも煎れようか」
「あ、なら俺が」
「そうか、なら上手い菓子を貰ったからそれを」
海燕が茶をいれて戻ると浮竹は菓子を机に置いて待っていた。
梅の実の入った 錦玉 が白い皿に乗せられている。
2人は接客用の椅子に向かい合って座る。
気まずさに海燕が茶を啜る。
「年寄りの余計なお節介かも知れんが、早く都君に想いを伝えた方がいいぞ。」
唐突な言葉に思わず茶を吹きかけた。
「な、何を!」
「思いというのは長く拗らせると厄介なんだ」
そう呟きながら窓の外を見る端正な横顔は、僅かに歪んでいた。
新しい副隊長の言葉に、浮竹は目を瞬かせた。
今日は
十三番隊の隊首室と言えば雨乾堂であるが、今日のように体調の良い日は他隊同様、隊舎にある隊首室で仕事をする。
そんな時に度々見かける姿が気になり海燕は思わず声を掛けたのだが、それではまるで浮竹の行動をよく見ているようだと言うようで、照れたように頭を掻いた。
「ほら、そうやって大事そうに左手を右手で隠して口元に当てている時、隊長はえらく悩ましい顔をしてるんです」
口早な言葉に、あっと口元から手を離した。
指摘されるまで気づかなかったのだ。
いつからそんな癖があったのだろうと眉を潜める浮竹に、海燕は付け加えようとした一言を躊躇った。
(そんな顔をする時、数日内に卯ノ花咲に関わる案件が上がって来ている。)
十三番隊を通す人事案件とは、複数隊の精鋭で班を組まねばならないような危険な任務だ。
今回も五番隊藍染隊長から打診があった霞大路家の危険な潜入任務だった。
藍染からその話を聞く時は朗らかだった浮竹の顔が、藍染が帰った直後に曇り、机に座って例の姿勢をとったのを海燕は見逃さなかった。
彼がそんな顔をする時には、まだ健在であった蒼純との会話を思い出す。
ー……彼の髪は願掛けなんだー
ーいったいなんの願掛けっすか?ー
ー友のための、とだけ言っておこうかなー
ー友と言いつつ、想い人だったりしてー
ーそうだな。そうだと私も嬉しいー
恐らくその友は、虚圏に調査に行った咲だと海燕は確信していた。
そして彼の行動の全てをを考えると、咲への想いがぼんやりと見えて来る。
だが副隊長になって偶然会議録を見る中で、彼が虚圏調査隊の担当をしていたと言うことを知り、また分からなくなった。
その命令を出せる程の信頼を寄せたのか。
実力主義の死神社会で、願掛けに縋る程の心配の根底にあるものは何か。
自分と想い人である都にその関係を置き換えた時、想像するのはあまりに難しい。
だが尋ねようにも上司の私情に立ち入りすぎる話だ。
彼は人の私情に平気で助言をしたり手助けをする癖に、自分の事となるとどこか隠しがちで気付かれないように壁を作る傾向にあることに、海燕は気づいていた。
「成る程な」
浮竹は己の行動の理由を見つけたのだろう。
そして恐らく、海燕の躊躇いの理由も気づいたに違いない。
彼はそれ程、人の心に敏い。
いやぁまいった、と少し困ったように笑って頬を掻いた。
「俺が見込んだだけあるな。
こうなったら偶には年長者らしく、説教でも垂れるか。
茶でも煎れようか」
「あ、なら俺が」
「そうか、なら上手い菓子を貰ったからそれを」
海燕が茶をいれて戻ると浮竹は菓子を机に置いて待っていた。
梅の実の入った
2人は接客用の椅子に向かい合って座る。
気まずさに海燕が茶を啜る。
「年寄りの余計なお節介かも知れんが、早く都君に想いを伝えた方がいいぞ。」
唐突な言葉に思わず茶を吹きかけた。
「な、何を!」
「思いというのは長く拗らせると厄介なんだ」
そう呟きながら窓の外を見る端正な横顔は、僅かに歪んでいた。