墨染桜編
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「ごめんなさい、忙しいのに」
部屋に入って真っ先にかけられた言葉に、咲は微笑んで首を振った。
「大丈夫ですよ、今日は非番ですから。
身体を起こしていて大丈夫なのですか」
「はい。
少しの間なら」
「無理はいけません、気にせず横になってください。
それにしても緋真さんから相談があると連絡があるなんて珍しい……何かありましたか」
緋真はごめんなさい、ほかに相談できる人がいなくて。と小さくなって断ってから身体を横たえ、数日前のことを話し出した。
「あの……理解が追いつかないのですが」
緋真は戸惑い、突拍子もないことを言い出した目の前の白哉を見つめた。
「ではもう一度言おう。
緋真、私の妻になれ。
そうすれば朽木家の御典医の治療を受ける事ができる」
彼の話はあまりに夢のような話で、あまりに突拍子がなく、想像さえ難しい事でーー 緋真は眩暈がひどくなり米神を押さえた。
「……治療を受けてどうするのですか」
「受けたくないのか」
「違います。
では質問を変えます。
なぜ私が……妻になどというお話が出てくるのです」
自分に対して“妻“などという言葉を使った事もなく、思わず顔を赤らめ、口早に言った。
「お前の治療には町医者では役不足だろう。
我が朽木家の御典医ならばより良い治療を施せるはずだ。
御典医の治療を受けられるのは朽木家の者だけだ」
「治療のためですか。
失礼ながら、四大貴族の妻など、そんな簡単になれるものではないと思います。
呉服屋に奉公しているような流魂街の娘が妻にでもなろうものなら、笑い物になりますよ」
「お前はそんな事の為に治る可能性を切り捨てるつもりなのか」
「そんな事?
何をおっしゃっているのです。
巡り巡る魂の輪廻について教えてくださったのは白哉様ではありませんか。
私はこうしてただの平民として尸魂界に来ました。
人には人の生きる道があります。
貴方の家にご迷惑をかけるような真似をしてまで生きたくはありませんし、万が一の事の覚悟は出来ています」
「全ては決まった事だ」
白哉は短くそう言うと緋真を睨んだ。
突き刺さる程真っ直ぐな瞳だった。
だが緋真とて負けてはいない。
「決まった?
朽木家の方々が賛同されたとはとても思い難いお話ですが」
「私が決めたのだ」
「何故そのようなことを!
お戯れが過ぎます。
自分の死に方くらい、自分で決めます!」
睨み返してきっぱりとそういえば、白哉は口を噤んだ。
両者引く事が無いことは、この時互いに悟っていた。
相手がいかに頑固者で、ここまで決め込んだことを変えさせる事が困難であることは熟知していた。
そのくらい2人は、互いを理解していた。
だが、だからと言って、自分の意見も曲げることなどできるはずがない。
「白哉様はむっとした顔をなさって、1週間考えるようにおっしゃったんです」
緋真はため息をついた。
咲は困った事になったと視線を外した。