新副隊長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「敵に見つかることも情報が漏れる事も許されん。
心せよ」
淡々と続けられた言葉に、咲は深く頭を下げた。
銀嶺の鋭い視線は罪人に向けられるには余りに真っ直ぐで、信頼が滲み出ているように見え、一心は目を細める。
彼女の体調はまだ万全とは言い難い。
何より心の面が心配であり、失敗のゆるされない重責に耐えられるか不安だった。
以前そう銀嶺に告げた時、彼は難しい顔をして考えてから答えた。
ー彼女は今まで幾多の試練を乗り越えた。
追い込まれれば追い込まれる程に実力以上の能力を開花させた。
彼女を信じる事しか、儂にはできんー
優しさだけでは人は倒れてしまう。
信じ試練を与えるということが、人を支える1つの方法になり得るのは確かだ。
過去に響河はその信頼を裏切り、彼の部下であった少女は確かに応えた。
何よりも心の強さが無かったがために響河はこの世から姿を消したに過ぎないが、そう言い切るには不憫な存在であったと一心は思うし、咲に対してもまた不幸な運命を背負うと思った。
だからこそ、彼女は生き残る為に強くなる以外に道は残されていないのだ。
彼女に向けられていた銀嶺の視線が如月に流れ、彼は1つ頷き口を開いた。
「霞大路家は上流貴族で財力もある。
四十六室が自らの利権のために手を引くよう命じたほどだ。
だが護廷隊士にその妖刀による死者が出ていると分かった以上、看過できる話ではない。
だからこそこの調査は失敗は許されないというのが、総隊長からのお言葉だ。
古より宝剣鋳造を行ってきた大貴族。
いつから妖刀に手を出したのかは不明だが、短くはない期間が予想される。
どれだけの協力者がいるか分からない以上、慎重に調査を行わねばならん。
君は諜報や痕跡の読み取りが得意だと聞いたから、頼りにしている」
予想外の期待の言葉に咲は驚いて顔を上げ目を瞬かせた。
てっきり彼もまたまた四十六室の命令で不承不承罪人と任務にあたると思っていたからだ。
何か言わねばと口を何度か開け閉めしてから、小さな声で呟くように言う。
「……ご期待に添えるよう鋭意努力致します」
そのあまりに不慣れな様子に如月は少し驚き、彼女の過去の真相を知る古米の一人として不憫にも思った。
「十二番隊から霊圧や容姿を変えられる特殊な霊骸を借りています」
一心は不機嫌そうにちらりと咲を見て、ここに来て初めて口を開いた。
「霊骸?
尖兵 計画のか?
あの研究は中止になったって聞いたが」
「よくご存知ですね。
死体を対虚用の尖兵として戦わせる 尖兵 計画。
肉体の一部を強化した戦闘用の擬似魂魄の開発が一時進みましたが、尖兵計画自体が死体を戦わせるという非人道的な計画のために中止になりました。
ですが霊骸に関しては潜入任務に活用できるのではという観点から、その後も研究が進められてきたようです。
通常、魂魄が実態を成す尸魂界では改造魂魄程度にしか必要ありませんが、技術開発局が開発した霊骸を魂魄に被せる技術を使えば、霊圧自体を変化させることもできるため変装の精度が格段に上がります」
「それにこいつを入れるっつうのか?」
一心が冷たい声で問いかけた。
彼の心配を他所に、咲はそれは当然だと思っていた。
自分の扱われ方など熟知している。
だから如月が首を横に振り驚いた。
「それには俺が入ります」
「正気か?
素人が聞いただけでも並みのことじゃねぇ」
「だが全く使われていない技術ではない。
事実二番隊の潜入任務でも使った例があります。
今回はーー」
部屋にノックの音が響く。
「銀嶺隊長、遅くなりました」
「入れ」
一心が戸口に歩み寄り、付近を斬魄刀で撫で、結界の一部を解き扉を開けた。
穏やかな微笑みを浮かべて入ってきたのは藍染だった。
「急ぎで片付けなければならないものがありまして申し訳ありません」
「構わん」
挨拶の間に一心は結界を張り直した。
「流石一心副隊長、素晴らしい結界だね」
「ありがとうございます」
朗らかな賛辞に一心は慌てて頭を下げる。
銀嶺は口数が少ないため、六番隊上位席官ともなれば褒められることから縁遠くなりどうも慣れない。
「話はどこまで進みましたか」
「霊骸の事を話し始めた所です」
如月の言葉に藍染はなるほど、と頷いた。
「霊骸を用いる事で潜入任務の帰還率は格段に上がるのは確かだ。
だが霊圧そのものを変化させる事から斬魄刀が使えなくなる上、慣れない身体での任務になる。
正直に言って、危険な任務になるだろう。
そこで君の任務成功率の高さから頼ませていただいたんだ」
信頼の眼差しを向けられ咲は戸惑う。
彼からの眼差しは余りに温かく、眩しい。
銀嶺の厳しさに秘められた優しさ、一心の快活な思いやりとは違う。
穏やかなその存在感は、どこか蒼純を思い出させ、胸が疼く。
咲は如月に答えたのと同じように口早に呟いた。
「……ご期待に添えるよう鋭意努力致します」
「よろしく頼むよ」
穏やかな微笑みに、咲はやはり戸惑ったように首を縦に振った。
心せよ」
淡々と続けられた言葉に、咲は深く頭を下げた。
銀嶺の鋭い視線は罪人に向けられるには余りに真っ直ぐで、信頼が滲み出ているように見え、一心は目を細める。
彼女の体調はまだ万全とは言い難い。
何より心の面が心配であり、失敗のゆるされない重責に耐えられるか不安だった。
以前そう銀嶺に告げた時、彼は難しい顔をして考えてから答えた。
ー彼女は今まで幾多の試練を乗り越えた。
追い込まれれば追い込まれる程に実力以上の能力を開花させた。
彼女を信じる事しか、儂にはできんー
優しさだけでは人は倒れてしまう。
信じ試練を与えるということが、人を支える1つの方法になり得るのは確かだ。
過去に響河はその信頼を裏切り、彼の部下であった少女は確かに応えた。
何よりも心の強さが無かったがために響河はこの世から姿を消したに過ぎないが、そう言い切るには不憫な存在であったと一心は思うし、咲に対してもまた不幸な運命を背負うと思った。
だからこそ、彼女は生き残る為に強くなる以外に道は残されていないのだ。
彼女に向けられていた銀嶺の視線が如月に流れ、彼は1つ頷き口を開いた。
「霞大路家は上流貴族で財力もある。
四十六室が自らの利権のために手を引くよう命じたほどだ。
だが護廷隊士にその妖刀による死者が出ていると分かった以上、看過できる話ではない。
だからこそこの調査は失敗は許されないというのが、総隊長からのお言葉だ。
古より宝剣鋳造を行ってきた大貴族。
いつから妖刀に手を出したのかは不明だが、短くはない期間が予想される。
どれだけの協力者がいるか分からない以上、慎重に調査を行わねばならん。
君は諜報や痕跡の読み取りが得意だと聞いたから、頼りにしている」
予想外の期待の言葉に咲は驚いて顔を上げ目を瞬かせた。
てっきり彼もまたまた四十六室の命令で不承不承罪人と任務にあたると思っていたからだ。
何か言わねばと口を何度か開け閉めしてから、小さな声で呟くように言う。
「……ご期待に添えるよう鋭意努力致します」
そのあまりに不慣れな様子に如月は少し驚き、彼女の過去の真相を知る古米の一人として不憫にも思った。
「十二番隊から霊圧や容姿を変えられる特殊な霊骸を借りています」
一心は不機嫌そうにちらりと咲を見て、ここに来て初めて口を開いた。
「霊骸?
あの研究は中止になったって聞いたが」
「よくご存知ですね。
死体を対虚用の尖兵として戦わせる
肉体の一部を強化した戦闘用の擬似魂魄の開発が一時進みましたが、尖兵計画自体が死体を戦わせるという非人道的な計画のために中止になりました。
ですが霊骸に関しては潜入任務に活用できるのではという観点から、その後も研究が進められてきたようです。
通常、魂魄が実態を成す尸魂界では改造魂魄程度にしか必要ありませんが、技術開発局が開発した霊骸を魂魄に被せる技術を使えば、霊圧自体を変化させることもできるため変装の精度が格段に上がります」
「それにこいつを入れるっつうのか?」
一心が冷たい声で問いかけた。
彼の心配を他所に、咲はそれは当然だと思っていた。
自分の扱われ方など熟知している。
だから如月が首を横に振り驚いた。
「それには俺が入ります」
「正気か?
素人が聞いただけでも並みのことじゃねぇ」
「だが全く使われていない技術ではない。
事実二番隊の潜入任務でも使った例があります。
今回はーー」
部屋にノックの音が響く。
「銀嶺隊長、遅くなりました」
「入れ」
一心が戸口に歩み寄り、付近を斬魄刀で撫で、結界の一部を解き扉を開けた。
穏やかな微笑みを浮かべて入ってきたのは藍染だった。
「急ぎで片付けなければならないものがありまして申し訳ありません」
「構わん」
挨拶の間に一心は結界を張り直した。
「流石一心副隊長、素晴らしい結界だね」
「ありがとうございます」
朗らかな賛辞に一心は慌てて頭を下げる。
銀嶺は口数が少ないため、六番隊上位席官ともなれば褒められることから縁遠くなりどうも慣れない。
「話はどこまで進みましたか」
「霊骸の事を話し始めた所です」
如月の言葉に藍染はなるほど、と頷いた。
「霊骸を用いる事で潜入任務の帰還率は格段に上がるのは確かだ。
だが霊圧そのものを変化させる事から斬魄刀が使えなくなる上、慣れない身体での任務になる。
正直に言って、危険な任務になるだろう。
そこで君の任務成功率の高さから頼ませていただいたんだ」
信頼の眼差しを向けられ咲は戸惑う。
彼からの眼差しは余りに温かく、眩しい。
銀嶺の厳しさに秘められた優しさ、一心の快活な思いやりとは違う。
穏やかなその存在感は、どこか蒼純を思い出させ、胸が疼く。
咲は如月に答えたのと同じように口早に呟いた。
「……ご期待に添えるよう鋭意努力致します」
「よろしく頼むよ」
穏やかな微笑みに、咲はやはり戸惑ったように首を縦に振った。