朽木蒼純編
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反射的に強く否定してしまった事に、すまん、と浮竹は溜息混じりに謝る。
咲は深い愛を向けられていることに気付いていないし、浮竹はそれを押し殺すつもりでいた。
この歳になってもまだひょんなことから顔を出すそれに、参ったと言わんばかりに頭を掻きながら、言葉を探す。
俯いたままの咲の視界の端で月光に白髪がきらきらと揺れ、不思議と緊張が少し解けた。
「白哉君をけしかけることはできるだろう。
だが彼はお前を殺しはしない。
蒼純副隊長の息子だろう。
必ずや立派な死神になり、そしていつか真実を知り、お前を理解する日が、来る。」
浮竹は組んでいた腕を解き、咲の肩に手を静かに置いた。
そこから温もりがじんわりと身体に流れ込んでくるように感じる。
「恨まれ役を買って出るつもりだろうが、想像より辛いぞ。
彼もまた辛いだろう。」
「その辛さがきっと、彼の糧になる。」
「互いを傷つけるだろう。」
「傷で済むならそれでいい。
生きて欲しいんだ。」
「ならばお前の覚悟だ、止めはしないさ。
だが、」
そっと身体を引き寄せられる。
一瞬月が落ちてきたのかと思った。
埋もれた羽織も、髪も、そしてその存在も、そのくらい眩しかった。
今は亡き人の斬魂刀と同じだ。
美しくも静かに己を堪える力を持つ。
いつも自分のそばに寄り添ってくれるその月光は、胸を締め付けられる程に、眩しい。
「一人で泣くのは、なしだ。」
そのぬくもりにまた、涙が溢れそうになる。
(それに比べて私は今も昔も亡くした人に縋りついてばかりだ。
私は弱い、弱くて弱くて)
こつんと優しく頭を拳で叩かれて、驚いて彼を見上げる。
「また馬鹿なことを考えてるだろ。」
彼の瞳はなんと慈悲深く温かいのだろう、と咲は思った。
彼の声はどうしてこれ程、心地よいのだろうと。
彼の言葉はどうしてこれ程心に染みるのだろうと。
「いいんだ、お前はそれで。
たまには俺に花を持たせてくれ。」
困ったような笑みを浮かべる彼の胸に、咲は思わず、顔を埋めた。
(咲の為だ、咲の、そして、護廷の為)
浮竹はそう自分の心に言い訳をして、咲の背中に手を回し、強く抱きしめる。
前に彼女を抱きしめた時も、腕の中で苦しげに別の男の名を呼んでいた。
今も彼女の心にあるのは、自分とは別の男に違いないと、そう思っていた。
どちらの男も、もう死神と扱われない姿に成り果てたーー彼女のかけがえのない人だ。
浮竹は顔を歪める。
彼女の米神に頬をすり寄せ、慰めるように頭を撫でた。
その腕の中で、咲の心は解れて行った。
自分が孤独に戻ったわけではないと、彼温もりが教えてくれた。
ここに生きる友がいることを、彼の鼓動が訴えた。
ありがとう
声を出せば涙も溢れそうで、咲は唇を微かにそう動かしただけだったから、浮竹にその言葉が届くことはなかった。
しばらくして腕の中で身動ぎする温もりに、浮竹は腕を解いた。
顔を赤らめた咲が浮竹を見上げて淡く微笑んだ。
予想よりもすっきりとした表情に、浮竹は表には出さないが驚いていた。
てっきり暗い顔をしているとばかり思っていたからだ。
「浮竹は変わったけど、やっぱり変わらないな」
細められた瞳は濡れていて、月の光できらきら光った。顔を少し傾けた拍子に、涙が頬を伝った。
思わずその表情に目を奪われる。
それからふっと微笑んだ。
「お前もだ。
変わらないけど、変わったんだな」
咲の目尻を指の腹で撫でる。
濡れた指先が夜風に当たって冷たく感じ、それがどこか心地よかった。
咲は深い愛を向けられていることに気付いていないし、浮竹はそれを押し殺すつもりでいた。
この歳になってもまだひょんなことから顔を出すそれに、参ったと言わんばかりに頭を掻きながら、言葉を探す。
俯いたままの咲の視界の端で月光に白髪がきらきらと揺れ、不思議と緊張が少し解けた。
「白哉君をけしかけることはできるだろう。
だが彼はお前を殺しはしない。
蒼純副隊長の息子だろう。
必ずや立派な死神になり、そしていつか真実を知り、お前を理解する日が、来る。」
浮竹は組んでいた腕を解き、咲の肩に手を静かに置いた。
そこから温もりがじんわりと身体に流れ込んでくるように感じる。
「恨まれ役を買って出るつもりだろうが、想像より辛いぞ。
彼もまた辛いだろう。」
「その辛さがきっと、彼の糧になる。」
「互いを傷つけるだろう。」
「傷で済むならそれでいい。
生きて欲しいんだ。」
「ならばお前の覚悟だ、止めはしないさ。
だが、」
そっと身体を引き寄せられる。
一瞬月が落ちてきたのかと思った。
埋もれた羽織も、髪も、そしてその存在も、そのくらい眩しかった。
今は亡き人の斬魂刀と同じだ。
美しくも静かに己を堪える力を持つ。
いつも自分のそばに寄り添ってくれるその月光は、胸を締め付けられる程に、眩しい。
「一人で泣くのは、なしだ。」
そのぬくもりにまた、涙が溢れそうになる。
(それに比べて私は今も昔も亡くした人に縋りついてばかりだ。
私は弱い、弱くて弱くて)
こつんと優しく頭を拳で叩かれて、驚いて彼を見上げる。
「また馬鹿なことを考えてるだろ。」
彼の瞳はなんと慈悲深く温かいのだろう、と咲は思った。
彼の声はどうしてこれ程、心地よいのだろうと。
彼の言葉はどうしてこれ程心に染みるのだろうと。
「いいんだ、お前はそれで。
たまには俺に花を持たせてくれ。」
困ったような笑みを浮かべる彼の胸に、咲は思わず、顔を埋めた。
(咲の為だ、咲の、そして、護廷の為)
浮竹はそう自分の心に言い訳をして、咲の背中に手を回し、強く抱きしめる。
前に彼女を抱きしめた時も、腕の中で苦しげに別の男の名を呼んでいた。
今も彼女の心にあるのは、自分とは別の男に違いないと、そう思っていた。
どちらの男も、もう死神と扱われない姿に成り果てたーー彼女のかけがえのない人だ。
浮竹は顔を歪める。
彼女の米神に頬をすり寄せ、慰めるように頭を撫でた。
その腕の中で、咲の心は解れて行った。
自分が孤独に戻ったわけではないと、彼温もりが教えてくれた。
ここに生きる友がいることを、彼の鼓動が訴えた。
ありがとう
声を出せば涙も溢れそうで、咲は唇を微かにそう動かしただけだったから、浮竹にその言葉が届くことはなかった。
しばらくして腕の中で身動ぎする温もりに、浮竹は腕を解いた。
顔を赤らめた咲が浮竹を見上げて淡く微笑んだ。
予想よりもすっきりとした表情に、浮竹は表には出さないが驚いていた。
てっきり暗い顔をしているとばかり思っていたからだ。
「浮竹は変わったけど、やっぱり変わらないな」
細められた瞳は濡れていて、月の光できらきら光った。顔を少し傾けた拍子に、涙が頬を伝った。
思わずその表情に目を奪われる。
それからふっと微笑んだ。
「お前もだ。
変わらないけど、変わったんだな」
咲の目尻を指の腹で撫でる。
濡れた指先が夜風に当たって冷たく感じ、それがどこか心地よかった。