新副隊長編
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復帰後初めて隊首室に顔を出した咲に、一心は複雑な表情を向けた。
銀嶺は運悪く外出しており、部屋には2人きりだ。
咲は彼に目を合わせることなく、頭を下げた。
「長らくお休みをいただきまして申し訳ありませんでした」
「……おう」
彼の左腕につけられた副隊長章は、頭を上げた咲の目に嫌でも留まった。
一心もどこか後ろめたい気持ちはあるものの、隠してどうなることもない。
これは覚悟していたことだと、思い切って勢いよく口を開く。
「昨日から俺が六番隊の副隊長だ。
お前は俺の直下で働いてもらうことになった。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
流れるような言葉と共に、咲が再び深く頭を下げた。
やはり彼女が一心と目を合わせることはない。
まだ辛そうではあるが、思ったほど疲弊した様子がなく、一心は安堵する。
影となり働く彼女は、一心の直属の部下となることが決まった。
それを言い渡したのは銀嶺であり、赤色従首輪の権限は銀嶺が持つことにすると聞かされた直後であったから驚いた。
朽木家と彼女の深く暗い繋がりに、部外者である自分が関与することは、許されないと思っていた。
一心はまだ咲と信頼関係を築くに至っていない。
銀嶺とも然りだ。
宙ぶらりんの副隊長は、ひどく居心地が悪い。
その結果が、上司として手綱を握らせはするが、真の意味で彼女の命を握らせはしないという、今回の処遇だ。
それは一心の顔を立てつつも咲を守るという目的が強いような印象を一心に対して与えた。
(確かに俺は、こいつと信頼関係を築くには至っていない)
蒼純の死に直面した彼女は壊れてしまったのではないかと思うほど、大きな悲しみに包まれていた。
藍染はよく声をかけられたものだ、と舌を巻いたほどだ。
それほどまでに彼女の状況は絶望的で、その背は死を背負うようにしか見えなかった。
京楽に叔父朱鷺和 の最期を聞いてから彼女を思うと胸の内が沸々と怒りで煮え立ったものだが、噎び泣く蹲る背を思い出すとそれさえも後ろめたく思い、見舞いに行く足も遠のいた。
初めから分かってはいたのだ、叔父の死は彼女を仇に思うのはお門違いであることも、彼女が叔父の死を悼んだことも。
考えていても何も始まりはしないと、入院して数日後に勇気を出して四番隊に行ったが、彼女はちょうど眠っており、枕元に見舞いの果物だけを置いて帰った。
無席の罪人と言う立場から他人から心配されるか否かを微塵も気にしないとは知らない一心は、名前を残さなかったことから、自分が彼女を心配していないと思われたのではないか、と見舞いの帰り道に思ったが、後の祭りだった。
そのことを告げようかどうしようか、迷っているところに、緊急任務を告げる地獄蝶が部屋へと舞い込んできた。
用件を聞くと、咲は蒼純が副隊長だった頃のように飛び出そうとするので、慌てて一心が止める。
「おい、敵の数聞いたろ?
変異種が3体いる上、班はほぼ全滅!
俺も行く」
「それには及びません、ーーっ」
ー副隊長はこちらでお待ちくださいー
そう言いたいのに、言葉が出てこない。
副隊長は役職だ。
なのに、それを呼ぶ相手は蒼純ただ一人だと、心が叫ぶ。
咲は無意識に喉に手をやった。
そこには銀白風花紗の下に赤色従首輪がある。
今は蒼純の霊圧ではなく、銀嶺のものが宿ることを思い出し、力無く体の横に手を戻した。
「……無理する必要はねぇよ。」
志波は目をそらした。
彼女の気持ちが、分かる。
自分も同じく上司を呼べない日があったからだ。
(そうだ、あの日、副隊長 は言ってたっけ。)
「お前の大切な上司を取ろうってんじゃない。」
咲は慌てて首を振る。
「わ、私はそのような!!」
「行くぞ!」
「お待ちください!」
一歩先を走る一心は勝気な笑顔を浮かべる。
「お前のその鍵は俺は貰えなかった。
悔しいぜ」
咲は目を瞬かせる。
「お前が大事だから、信用のない俺には渡せねぇってことだ。
口数少ない不器用な爺さんだぜ全く」
その言葉に咲はもう一度喉に手をやる。
「俺は隊長には完全には認められてねぇよ。
けど俺はお前を信じるって決めたんだ」
咲は自分の前を走る背中を見る。
初めて会った頃はまだ青年らしさがあったと言うのに、今ではもうすっかり逞しく成長している。
「だから、遅れを取るんじゃねぇぞ」
少しだけ振り返ってにっと笑う姿に、咲も淡く微笑んで頷いた。
銀嶺は運悪く外出しており、部屋には2人きりだ。
咲は彼に目を合わせることなく、頭を下げた。
「長らくお休みをいただきまして申し訳ありませんでした」
「……おう」
彼の左腕につけられた副隊長章は、頭を上げた咲の目に嫌でも留まった。
一心もどこか後ろめたい気持ちはあるものの、隠してどうなることもない。
これは覚悟していたことだと、思い切って勢いよく口を開く。
「昨日から俺が六番隊の副隊長だ。
お前は俺の直下で働いてもらうことになった。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
流れるような言葉と共に、咲が再び深く頭を下げた。
やはり彼女が一心と目を合わせることはない。
まだ辛そうではあるが、思ったほど疲弊した様子がなく、一心は安堵する。
影となり働く彼女は、一心の直属の部下となることが決まった。
それを言い渡したのは銀嶺であり、赤色従首輪の権限は銀嶺が持つことにすると聞かされた直後であったから驚いた。
朽木家と彼女の深く暗い繋がりに、部外者である自分が関与することは、許されないと思っていた。
一心はまだ咲と信頼関係を築くに至っていない。
銀嶺とも然りだ。
宙ぶらりんの副隊長は、ひどく居心地が悪い。
その結果が、上司として手綱を握らせはするが、真の意味で彼女の命を握らせはしないという、今回の処遇だ。
それは一心の顔を立てつつも咲を守るという目的が強いような印象を一心に対して与えた。
(確かに俺は、こいつと信頼関係を築くには至っていない)
蒼純の死に直面した彼女は壊れてしまったのではないかと思うほど、大きな悲しみに包まれていた。
藍染はよく声をかけられたものだ、と舌を巻いたほどだ。
それほどまでに彼女の状況は絶望的で、その背は死を背負うようにしか見えなかった。
京楽に叔父
初めから分かってはいたのだ、叔父の死は彼女を仇に思うのはお門違いであることも、彼女が叔父の死を悼んだことも。
考えていても何も始まりはしないと、入院して数日後に勇気を出して四番隊に行ったが、彼女はちょうど眠っており、枕元に見舞いの果物だけを置いて帰った。
無席の罪人と言う立場から他人から心配されるか否かを微塵も気にしないとは知らない一心は、名前を残さなかったことから、自分が彼女を心配していないと思われたのではないか、と見舞いの帰り道に思ったが、後の祭りだった。
そのことを告げようかどうしようか、迷っているところに、緊急任務を告げる地獄蝶が部屋へと舞い込んできた。
用件を聞くと、咲は蒼純が副隊長だった頃のように飛び出そうとするので、慌てて一心が止める。
「おい、敵の数聞いたろ?
変異種が3体いる上、班はほぼ全滅!
俺も行く」
「それには及びません、ーーっ」
ー副隊長はこちらでお待ちくださいー
そう言いたいのに、言葉が出てこない。
副隊長は役職だ。
なのに、それを呼ぶ相手は蒼純ただ一人だと、心が叫ぶ。
咲は無意識に喉に手をやった。
そこには銀白風花紗の下に赤色従首輪がある。
今は蒼純の霊圧ではなく、銀嶺のものが宿ることを思い出し、力無く体の横に手を戻した。
「……無理する必要はねぇよ。」
志波は目をそらした。
彼女の気持ちが、分かる。
自分も同じく上司を呼べない日があったからだ。
(そうだ、あの日、
「お前の大切な上司を取ろうってんじゃない。」
咲は慌てて首を振る。
「わ、私はそのような!!」
「行くぞ!」
「お待ちください!」
一歩先を走る一心は勝気な笑顔を浮かべる。
「お前のその鍵は俺は貰えなかった。
悔しいぜ」
咲は目を瞬かせる。
「お前が大事だから、信用のない俺には渡せねぇってことだ。
口数少ない不器用な爺さんだぜ全く」
その言葉に咲はもう一度喉に手をやる。
「俺は隊長には完全には認められてねぇよ。
けど俺はお前を信じるって決めたんだ」
咲は自分の前を走る背中を見る。
初めて会った頃はまだ青年らしさがあったと言うのに、今ではもうすっかり逞しく成長している。
「だから、遅れを取るんじゃねぇぞ」
少しだけ振り返ってにっと笑う姿に、咲も淡く微笑んで頷いた。