新副隊長編
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「隊長!」
まさか彼がこの場にやって来るとは思わなかった咲は、退院の為に荷物を纏めつつ、探し物をしていた手を止め、弾かれてように立ち上がった。
1週間の入院を命じられ、その間当然の事ながら銀嶺は姿を表さなかった。
彼に会った時なんと言うべきか咲の中で考え続けたが答えはまだ出ていない。
一瞬ためらった後、銀嶺の前に跪いた。
謝って済む問題ではないが他に言葉は思いつかない。
だが謝罪だけではあまりに軽すぎる。
口を開けなかったのは、咲だけではない。
同じ迷いを銀嶺も抱え、そして、目の前の部下もそうであることにはたと気付いた。
思わず目を細める。
ふわりと優しく、咲の頭に白い布が掛けられた。
温かい気がしたのは、銀嶺の手の温もりが移ったのかもしれない。
咲はあっとその布をとり、まじまじと見つめる。
良く見ると一部繕われているのが確認できる。
正に探していた自分の銀白風花紗だった。
銀嶺は咲が四番隊に運ばれた際、破れ血に汚れたそれを受け取っていた。
新調することも考えた。
あえて返さないことも考えた。
これは咲の赤色従首輪を隠すと同時に、響河の事、蒼純の事、そして朽木家の罪を思い出させるに違いないからだ。
それを手に悩む銀嶺に声をかけたのは、明翠だった。
ー私に直させてください。私が彼女の為にできる、最後のことを。ー
彼女は全てを知った上で、それでもなお咲を思っていた。
咲を信じていた。
父の迷いを知ってか知らずか、悲しげに微笑みを浮かべて差し出された華奢な手に、老いた手は握りしめてきた汚れた紗を託した。
咲は銀嶺を見上げる。
渡された物こそが彼の答えだ。
響河を封印した時と同じその無言が、咲の不安を溶かす。
後悔を、懺悔を、失うわけではない。
だがそれを背負う覚悟が固まる。
自分は捨てられるのではない、生かされるのだという、確信に背中を押される。
咲は銀嶺の前に深く
銀嶺はそれを静かに見下ろし、ひとつ頷いた。
二人の間に、言葉などいらなかった。