朽木蒼純編
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美しい月夜、咲は治りきらぬ傷に包帯を巻いたまま、朽木家の屋根の上に一人立っていた。
(月雫様・・・申し訳ございません。)
今でも彼女を斬った感触をまざまざと思い出す。
そして、彼女の夫を斬った感触も。
この自分の手が酷く恐ろしいと、咲は思った。
烈の役に立ちたくてこの世界に飛び込んだ。
でも、世界はあまりに過酷で、自分の命を投げ出したくなる時は何度もあった。
その度にたくさんの人に助けられ、そしてたくさんの人をーー
(殺めてきた。
命を懸けて守ってくれた人でさえ・・・)
「ここにいたんだな。」
静かな声に、咲は小さく肩を揺らした。
物思いに浸っていて気付かなかった。
疲れもたまっているし、精神的にも追い詰められているのも理由だろう。
「病室に行ったらもぬけの殻だったから、もしやと思って来てみたんだが。」
声は近付いてきて、腕を組んでそっと隣に立つ。
彼の言う通りだ。咲はまだ絶対安静で、本来なら四番隊にいるべきである。
それをこっそり抜け出すのは、昔から彼女に良くあることだった。
隣に立つ浮竹が眩しくて、目を側める。
ふと、若い頃彼が月の精のようだと思った時のことを思い出した。
(確か祭りの夜だった。荒れていたとはいえ、まだ穏やかな日で――)
子供じみた感想であったが、今でも変わらぬ静けさを携えている彼を見ると、心が少し穏やかになる。
「傷に障るぞ。」
優しい霊圧と、ほんのりとした薬の香り。
この香りはなぜか、落ち着く。
「どうして君たちはそうやっていつも私を甘やかすんだろう。
・・・明日にも君を、殺すかもしれないのに。」
「馬鹿野郎。
お前に俺が殺せるはずないだろう。
俺の方が強いさ。」
浮竹は強気に微笑む。
「じゃあ京楽に刃を向けるかもしれない。」
「そうなったら力づくで止めて見せるさ。
俺たちはずっと・・・3人一緒だ。」
咲は俯く。
自分が蒼純を殺すほどの力を持っているとは、咲自身思いもしていなかった。
良くて相打ちと思っていたのに。
(・・・この様だ)
生き残った己が憎くてたまらず、浮竹の言葉に頷けなかった。
そもそも頷くだけの、根拠がないのだ。
虚圏から帰ってきた時、彼の命も心も守って見せると豪語した。
それにもにも関わらず、彼らと同じくらい大切に思っていたはずの蒼純を殺し、自分が今ここに生き残っている。
彼の心を守るため、その誇りを守るために、彼の命を奪った自分が。
(このままじゃだめだ。私は、弱い。)
二人のどちらかを殺す未来が来るかもしれない。
いつ来ても、おかしくはない。
(それならば、そんな時がくるよりも早く、死んでしまいたい。)
だが今は命を捨てられぬ理由があった。
彼女の命をつなぐのは、蒼純の遺言だ。
「私は若様に強くなってもらう。
そして、私をいつか」
「馬鹿言うな」
静かだが威圧感のある言葉に、咲は口を噤んだ。思わず見上げた先、彼の静かな怒りの瞳に身を竦める。
(やはり彼は、隊長なのだ)
ただ一言で相手を竦ませるほどの力を、彼は持つ。自分との格の違いを痛感した。
蒼純を亡ってから、ずっと死を考えていた。
夢見ていると言っても過言ではないかもしれない。
そしてそんな自分の心情を、浮竹には理解できないだろうと、咲は俯いた。
(月雫様・・・申し訳ございません。)
今でも彼女を斬った感触をまざまざと思い出す。
そして、彼女の夫を斬った感触も。
この自分の手が酷く恐ろしいと、咲は思った。
烈の役に立ちたくてこの世界に飛び込んだ。
でも、世界はあまりに過酷で、自分の命を投げ出したくなる時は何度もあった。
その度にたくさんの人に助けられ、そしてたくさんの人をーー
(殺めてきた。
命を懸けて守ってくれた人でさえ・・・)
「ここにいたんだな。」
静かな声に、咲は小さく肩を揺らした。
物思いに浸っていて気付かなかった。
疲れもたまっているし、精神的にも追い詰められているのも理由だろう。
「病室に行ったらもぬけの殻だったから、もしやと思って来てみたんだが。」
声は近付いてきて、腕を組んでそっと隣に立つ。
彼の言う通りだ。咲はまだ絶対安静で、本来なら四番隊にいるべきである。
それをこっそり抜け出すのは、昔から彼女に良くあることだった。
隣に立つ浮竹が眩しくて、目を側める。
ふと、若い頃彼が月の精のようだと思った時のことを思い出した。
(確か祭りの夜だった。荒れていたとはいえ、まだ穏やかな日で――)
子供じみた感想であったが、今でも変わらぬ静けさを携えている彼を見ると、心が少し穏やかになる。
「傷に障るぞ。」
優しい霊圧と、ほんのりとした薬の香り。
この香りはなぜか、落ち着く。
「どうして君たちはそうやっていつも私を甘やかすんだろう。
・・・明日にも君を、殺すかもしれないのに。」
「馬鹿野郎。
お前に俺が殺せるはずないだろう。
俺の方が強いさ。」
浮竹は強気に微笑む。
「じゃあ京楽に刃を向けるかもしれない。」
「そうなったら力づくで止めて見せるさ。
俺たちはずっと・・・3人一緒だ。」
咲は俯く。
自分が蒼純を殺すほどの力を持っているとは、咲自身思いもしていなかった。
良くて相打ちと思っていたのに。
(・・・この様だ)
生き残った己が憎くてたまらず、浮竹の言葉に頷けなかった。
そもそも頷くだけの、根拠がないのだ。
虚圏から帰ってきた時、彼の命も心も守って見せると豪語した。
それにもにも関わらず、彼らと同じくらい大切に思っていたはずの蒼純を殺し、自分が今ここに生き残っている。
彼の心を守るため、その誇りを守るために、彼の命を奪った自分が。
(このままじゃだめだ。私は、弱い。)
二人のどちらかを殺す未来が来るかもしれない。
いつ来ても、おかしくはない。
(それならば、そんな時がくるよりも早く、死んでしまいたい。)
だが今は命を捨てられぬ理由があった。
彼女の命をつなぐのは、蒼純の遺言だ。
「私は若様に強くなってもらう。
そして、私をいつか」
「馬鹿言うな」
静かだが威圧感のある言葉に、咲は口を噤んだ。思わず見上げた先、彼の静かな怒りの瞳に身を竦める。
(やはり彼は、隊長なのだ)
ただ一言で相手を竦ませるほどの力を、彼は持つ。自分との格の違いを痛感した。
蒼純を亡ってから、ずっと死を考えていた。
夢見ていると言っても過言ではないかもしれない。
そしてそんな自分の心情を、浮竹には理解できないだろうと、咲は俯いた。