朽木蒼純編
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これは彼なりの、敵への礼儀だった。
倒すなら、己の放つ霊圧で、撃つ。
「月牙天衝!!」
その霊圧の刃が虚に迫る。
もちろん、捕縛のことを忘れていたわけではない。
攻撃は急所は外して放たれていた。
咲も理解しており、事実拘束具を構えた。
その様子に虚は何かを悟ったように笑うと、口から何かを放った。
鋭く白いナイフのような何かが、咲と一心の間をすり抜けて飛んでいく。
咲はその先に気付いたが足は止めない。
蒼純がそれを片付けられるであろうことは想像にたやすいからだ。
それに惑わされず、目の前の敵を捕らえようと拘束具に霊圧を込めた時だった。
一心の技が虚を切る前に、虚は爆破された。
激しい風に襲われ、2人は吹き飛ばされる。
「クソッ!!!
なんだって・・・」
舌打ちをする一心。
晴れてきた土煙に虚のいた周辺の焼け焦げた様子が明らかになる。
虚は跡形もなく、地面も抉られている。
爆破の規模としては1人を殺害するにはあまりに大きい。
(巻き込んで死ぬつもりだったのか?
それには爆破のタイミングが早い。
失敗したと言うには不自然な程・・・。)
それが自爆なのか、それとも他者によるものなのかの判断は、難しい。
(どういう事だ、まるで事実を隠蔽するかのような・・・)
咲は従うべき人を振り返る。
蒼純は爆破により飛散した石に当たったのか、頬を浅く切り血を流していたが、それ以外傷はなさそうだ。
咲の脳裏を虚が最後に発した白いナイフ状の物の事が掠める。
もしその時の傷ならば毒の可能性も捨てきれない。
「副隊長、血、流れてますよ。
俺で良ければ一応診ときましょうか。」
一心も同じことを思ったのだろう。
だが蒼純は首を振った。
「君は治癒鬼道も得意だったね。
でも大丈夫だ、毒もなさそうだから。
ありがとう。」
穏やかな顔で礼を言ってから、彼は視線を厳しくした。
「問題は、その爆発だ。
咲。」
呼ばれて辺りをいくらか検分するが、首を横に振る。
あまりに綺麗に全てが吹き飛んでいたためだ。
「・・・何一つ判断材料はありません。」
「まるでそれが目的の様だ。
となれば裏に誰かいる可能性が高い。
これではまるで虚化・・・そうだとすれば浦原喜助か、彼の協力者か、それとも」
突然、蒼純が両手で顔を覆い、身体を折った。
苦し気なうめき声が、噛み締められた歯の間から漏れ、咲は駆け寄る。
この様子を見たのは初めてではない、と感じた。
同時に、あの時とは違うと、なんとしてでも信じたかった。
だがやはりその勘を否定しきる事などできなくて、最悪の事態に対する恐怖に全身の肌が粟立つ。
震えが抑えられない。
恐る恐る、その身体に手を伸ばした。