朽木蒼純編
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「チッ!!」
舌打ちをして後ろに大きく跳ぶ。
「どうなってるッ」
三席に昇進したばかりの志波一心は柄にもなく焦っていた。
処処に上がる土煙に破壊音。
そして耳を塞ぎたくなるような絶叫が響く。
自分が率いた5人の部下の姿はここにはない。
正確に言えば、彼らだったものは近くにいた。
だが彼らの姿は、最早。
(なんで虚にッ!?
なんだこりゃ、六番隊はおかしいのかよ!!)
鋭い尾が襲いかかり、それを塞で弾き返す。
背後からの気配に飛び上がると、液体が飛び散り、死覇装を溶かした。
(これは虚の仕業か?)
辺りをうかがうが、虚と姿を変えた隊士以外の姿は見当たらない。
(まるで死神が虚になっちまったみたいだ・・・)
そこで一心はふと何年か前に聞いた事件を思い出した。
(魂魄消失案件の惨事、虚化・・・。)
複数の触手が激しく襲いかかってくるのをなんとか掻い潜る。
(見たわけじゃないから断定はできないが、その現象じゃないか?
ありゃ確か、十二番隊の浦原喜助の実験だったはずだ。
現世追放となった奴の実験が、なぜ!?)
脹脛への衝撃とともに焼け付くような痛みが走る。
見れば死覇装が溶け、肌が赤く爛れている。
それに意を決して抜刀し、5体の元部下を睨みつけた。
「クソッやってられっか!!
燃えろ!
刀身が燃えるように霊圧を纏う。
(ええい、なるようになれッ!!!)
刀を振り被った時だった。
「危ないところだったな。」
不意に声が降ってきて慌てて見上げる。
木の上に立っていたのは、数日前からの新たな上司だった。
「蒼純副隊長!!!
あのっこれはっ!!!」
慌てて説明しようとするが、穏やかな視線がそれを制す。
「君がやっていないことは分かっている。
刀を抜いた理由もね。
‘危ないところ’と言うのは、目撃者が必要だと言う話だ。
・・・三席の無実の証明に。
咲。」
「はい。」
烏ーーそれが一心が初めに抱いた印象だ。
呼ばれた人は、まるで飛ぶように副隊長の後ろから軽やかに飛び出した。
ひらりと白が残像のように揺れて、その烏の首に副隊長と同じ風花銀白紗が巻かれていることを知る。
そして彼女に見覚えがある事に気付く。
「隊長の・・・!」
「そうだね。
彼女は
上司の説明に居心地の悪さを覚える。
大抵、自隊の隊の隊長、副隊長以外は名前を添えて呼ぶものだ。
つまり思わず京楽を‘隊長’と呼んだというのは、未だ一心の身体は京楽を自分の上司としており、銀嶺を‘隊長’と受け入れきれていないということを示す。
入隊して以来長らく八番隊にいた一心の身体には、‘隊長’といえば‘京楽’だということが染み付いて離れず、新しい上司は未だ‘銀嶺隊長’なのである。
当然で仕方のないことではあるが、気不味さがある事は事実だ。
それが表情に表れていたのだろう。
「無理する必要はない。」
蒼純はくすりと笑った。
「君の上司に取って代わろうとは、我々は微塵も思っていないよ。」
病弱だと囁かれ、義弟の犯罪の影がちらつく彼の実力を疑う声を聞いたことがないわけではない。
だが一心の目に映る上司の姿勢には、清々しいほど美しい、一本の真っ直ぐな線が見えた。
「君は、君の信じる道を進めばいい。」
彼の目は真っ直ぐ、戦闘に向かった部下に向けられていた。
「私は君の道を、信じるよ。」
ちらりと穏やかな視線を寄越す姿は、とても戦場に立つとは思えない。
それはきっと彼が今正に戦う部下を信じているが故だと、一心は感じた。
(俺の信じる、道・・・)
その副隊長の姿は、過去というにはあまりに生々しいあの志波家没落の日の、銀嶺を思い出させた。
父の反乱を訴え、援軍を求めて銀嶺を訪れ、己は従弟妹を探しに行かせてくれと頼んだ日。
今思えば無理を言ったと分かるが、当時は必死だった。
ー・・・構わん。
そうなれば志波家もそこまで。ー
そう言って銀嶺の鋭い瞳が一心を射抜たのだ。
当主として朽木家を長年にわたり治めてきたその眼光。
隊長として多くの死を、裏切りを、悲しみを見てきた瞳。
そして彼は言った。
ー行け、一心。
お前の望みを、叶えてみせよ。ー
自分の手でどれほど護れるか分からない。
それでも傷だらけになりながら目一杯伸ばして、そして一心は、望みを叶えた。
追手から逃げ惑う海燕に、空鶴、そして2人の身重の母
海燕は今では十三番隊の五席。
空鶴は花火師として名を馳せ、当時はまだお腹にいた岩鷲も姉の尻に敷かれながら花火師として鍛錬している。
(護れるものを、目一杯護りてぇんだ、俺は。
それが・・・
一心は改めて斬魂刀を握り直した。