朽木蒼純編
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「咲。」
その声にその人の前にいつものように素早く膝をついた。
咲にとってその人の声は全てだった。
攻めも引くも、生きるも死ぬも、彼の言葉に従うつもりでいる。
「はい。」
声色から、出動の命令を伝えるつもりであることは分かっていた。
「三席から救援要請だ。
来なさい。」
穏やかにそう言うので、立ち上がって上司の後を追い、走る。
狛村が七番隊の隊長となってから、新しく八番隊から異動してきた男が三席となった。
あまり人事異動に興味のない咲は、誰が異動してきたか知らず、初めて顔を合わせることになるだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、蒼純が走りながら少し振り返って咲に微笑みかけた。
「お前にどれほど隊士を救われただろう。
そしてきっと今日も救われる。
・・・礼を言わねばならないね。」
唐突な感謝に咲は虚を突かれた。
何か言わねばと思った時には蒼純はもう前を向いて走っていた。
「いいえ、私は副隊長の御命令に従ったまでです。」
彼に聞こえるよう、少しだけ声を張る。
咲はあくまで蒼純の駒にすぎない。
手綱を握る彼がいなければ、本来咲は外に出ることさえ叶わない罪人なのだ。
隊士を助けるよう駒を適切に動かせる将の存在は、替えの利く駒の何倍も貴重で、それが駒にとって命を賭けてもいいと思える程であれば尚更、その価値は万兵に値する。
咲にとって蒼純は今やそれ程の上司であり、かけがえのないない存在であった。
「むしろ私がどれほど副隊長に救われているか・・・」
不意にぬくもりが頭に舞い降りる。
大きいが繊細で美しい手が咲の頭を一瞬撫でた。
その優しさに咲は目を細める。
(副隊長の命令とあらば、この命、投げ打つ覚悟は疾うにできている。)
泣きたい程の敬愛に、咲は斬魂刀破涙贄遠 を固く握りしめる。
「ならばお前は必ず帰ってきなさい。
お前の忠心を、私は信じているよ。」
彼の言葉はいつも通りだった。
いつも通り、咲の生きることを望む。
その言葉の裏にある意味を、咲は薄々感じ取っていた。
(私は、副隊長の刃以外で死ぬことは、許されない。)
ーもしお前が虚となれば、私が殺す。
もしお前が護挺を裏切るのならば、私が殺す。ー
そう告げたあの日も、蒼純は微笑んで咲の頭を撫でた。
ーお前が忠義を尽くす限り。ー
(だが私が副隊長を裏切る日は死んでも来ない。
つまり私を、副隊長は殺せない )
それが互いにとって幸せなのか、不幸なのか、咲にも分からなくなってきていた。
その声にその人の前にいつものように素早く膝をついた。
咲にとってその人の声は全てだった。
攻めも引くも、生きるも死ぬも、彼の言葉に従うつもりでいる。
「はい。」
声色から、出動の命令を伝えるつもりであることは分かっていた。
「三席から救援要請だ。
来なさい。」
穏やかにそう言うので、立ち上がって上司の後を追い、走る。
狛村が七番隊の隊長となってから、新しく八番隊から異動してきた男が三席となった。
あまり人事異動に興味のない咲は、誰が異動してきたか知らず、初めて顔を合わせることになるだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、蒼純が走りながら少し振り返って咲に微笑みかけた。
「お前にどれほど隊士を救われただろう。
そしてきっと今日も救われる。
・・・礼を言わねばならないね。」
唐突な感謝に咲は虚を突かれた。
何か言わねばと思った時には蒼純はもう前を向いて走っていた。
「いいえ、私は副隊長の御命令に従ったまでです。」
彼に聞こえるよう、少しだけ声を張る。
咲はあくまで蒼純の駒にすぎない。
手綱を握る彼がいなければ、本来咲は外に出ることさえ叶わない罪人なのだ。
隊士を助けるよう駒を適切に動かせる将の存在は、替えの利く駒の何倍も貴重で、それが駒にとって命を賭けてもいいと思える程であれば尚更、その価値は万兵に値する。
咲にとって蒼純は今やそれ程の上司であり、かけがえのないない存在であった。
「むしろ私がどれほど副隊長に救われているか・・・」
不意にぬくもりが頭に舞い降りる。
大きいが繊細で美しい手が咲の頭を一瞬撫でた。
その優しさに咲は目を細める。
(副隊長の命令とあらば、この命、投げ打つ覚悟は疾うにできている。)
泣きたい程の敬愛に、咲は斬魂刀
「ならばお前は必ず帰ってきなさい。
お前の忠心を、私は信じているよ。」
彼の言葉はいつも通りだった。
いつも通り、咲の生きることを望む。
その言葉の裏にある意味を、咲は薄々感じ取っていた。
(私は、副隊長の刃以外で死ぬことは、許されない。)
ーもしお前が虚となれば、私が殺す。
もしお前が護挺を裏切るのならば、私が殺す。ー
そう告げたあの日も、蒼純は微笑んで咲の頭を撫でた。
ーお前が忠義を尽くす限り。ー
(だが私が副隊長を裏切る日は死んでも来ない。
つまり私を、副隊長は
それが互いにとって幸せなのか、不幸なのか、咲にも分からなくなってきていた。