朽木蒼純編
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浮竹はその書類が提出された時、銀嶺の考えになるほどと頷いたものだ。
六番隊の席に幾らかの空きがあり、昇進に関する書類が上がってきた。
とは言え基本的に隊内の人事権は各隊長が持つため、余程のことがない限り浮竹が口を出すことはない。
最早形式上と言っても差しさわりがないが、一応昇進前には十三番隊に報告するのが義務であり、浮竹が目を通したうえで印が必要となる。
今回六番隊から提出された書類に記されていた隊士の名前の1つに白哉の名前があった。
四大貴族の嫡男だ。
入隊5年で十五席くらいならば差し支えない。
または彼の実力ならば他の者を昇進させて、十七席くらいが妥当かとも思う。
(それをわざわざ末席の二十席に。)
白哉としては堪らないだろう。
朽木の嫡男としての自負もある。
あの負けん気の強さで人の何倍も努力を重ねていることだろう。
(だが上に立つために必要な事は、力の強さや知識だけではない。)
銀嶺は朽木家だけでなく、自隊に関しても、自分の後は蒼純、その後は白哉に託すつもりに違いない。
本来、銀嶺が託そうと思っていた男は、今ここにはいない。
それはその男に上に立つ素質が欠けていたからだ。
(上に立つものは全てを求めらる。
強さ、知識、人望、時の運・・・その全てを満たす必要がある。
だが何かが欠けた時にそれを補うとすれば、銀嶺隊長の言葉を借りるならば、心の強さ だろう。)
過去に一度聞いた、呟くような声を思い出す。
ーあやつの心の強さを育ててやれなかった私にも落度はある。ー
冷たいまでに理性的で、誰にも弱音を吐けぬほど古株の彼の、微かな吐露だったと思う。
だから彼は、息子と孫に数々の試練を課す。
次期隊長である息子には心の葛藤を伴う罪人の扱いを。
孫には手始めに、能力や慣習に見合わない低い席を。
(心を育てるというのは、痛みを伴うことが多い。
上に立つ為ならば、尚更。)
自分とて幾度も心を抉られる決断を下し、それでも尚、部下の前で微塵も見せないよう強く笑う。
そしてその経験が、自分を強くしてきたのだと、後になって感じることがある。
少し前を歩く、京楽の茶化しに次第と苛立ちを募らせる青年。
彼が持つのは剣拳走鬼の才能だけでも、努力だけでもない。
父の様な優しさ、祖父の様な強い負けん気、朽木家らしい決して折れることのない芯の強さ。
そしてこの歳にしては優れた、物事の本質を捉え判断できる理性。
彼は、いつの日か隊を率いるだろう。
そしてまたそのいつか先、護挺をも率いるかもしれない。
その可能性を、浮竹は見ていた。
(何、それは元柳斎先生の、それから更にその先の、先の・・・何百年も先の話だ。)
淡く微笑む。
それがまた自分の願いであるということも、もちろん理解していた。
六番隊の席に幾らかの空きがあり、昇進に関する書類が上がってきた。
とは言え基本的に隊内の人事権は各隊長が持つため、余程のことがない限り浮竹が口を出すことはない。
最早形式上と言っても差しさわりがないが、一応昇進前には十三番隊に報告するのが義務であり、浮竹が目を通したうえで印が必要となる。
今回六番隊から提出された書類に記されていた隊士の名前の1つに白哉の名前があった。
四大貴族の嫡男だ。
入隊5年で十五席くらいならば差し支えない。
または彼の実力ならば他の者を昇進させて、十七席くらいが妥当かとも思う。
(それをわざわざ末席の二十席に。)
白哉としては堪らないだろう。
朽木の嫡男としての自負もある。
あの負けん気の強さで人の何倍も努力を重ねていることだろう。
(だが上に立つために必要な事は、力の強さや知識だけではない。)
銀嶺は朽木家だけでなく、自隊に関しても、自分の後は蒼純、その後は白哉に託すつもりに違いない。
本来、銀嶺が託そうと思っていた男は、今ここにはいない。
それはその男に上に立つ素質が欠けていたからだ。
(上に立つものは全てを求めらる。
強さ、知識、人望、時の運・・・その全てを満たす必要がある。
だが何かが欠けた時にそれを補うとすれば、銀嶺隊長の言葉を借りるならば、
過去に一度聞いた、呟くような声を思い出す。
ーあやつの心の強さを育ててやれなかった私にも落度はある。ー
冷たいまでに理性的で、誰にも弱音を吐けぬほど古株の彼の、微かな吐露だったと思う。
だから彼は、息子と孫に数々の試練を課す。
次期隊長である息子には心の葛藤を伴う罪人の扱いを。
孫には手始めに、能力や慣習に見合わない低い席を。
(心を育てるというのは、痛みを伴うことが多い。
上に立つ為ならば、尚更。)
自分とて幾度も心を抉られる決断を下し、それでも尚、部下の前で微塵も見せないよう強く笑う。
そしてその経験が、自分を強くしてきたのだと、後になって感じることがある。
少し前を歩く、京楽の茶化しに次第と苛立ちを募らせる青年。
彼が持つのは剣拳走鬼の才能だけでも、努力だけでもない。
父の様な優しさ、祖父の様な強い負けん気、朽木家らしい決して折れることのない芯の強さ。
そしてこの歳にしては優れた、物事の本質を捉え判断できる理性。
彼は、いつの日か隊を率いるだろう。
そしてまたそのいつか先、護挺をも率いるかもしれない。
その可能性を、浮竹は見ていた。
(何、それは元柳斎先生の、それから更にその先の、先の・・・何百年も先の話だ。)
淡く微笑む。
それがまた自分の願いであるということも、もちろん理解していた。