学院編Ⅲ
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激しい音が響き、浅打がキリキリと音を立てた。
「どこまで耐えられるか見ものだぜ」
向かい合う獄寺が余裕の笑みを見せるので、浮竹は苛立ちながらも力を込める。
その隣では山本の刀をただ避け続ける京楽の姿がある。
「こっちもどこまで避けられるか見ものっすね」
爽やかな笑顔に、京楽は心の中で舌打ちをした。
浮竹が入れ続けていた力を一瞬抜き、左下へと流す。
獄寺の刀がそれにつられて切っ先が逸された。
(今だ!)
踏み込んで刀を下から跳ね上げた。
だがその切っ先を獄寺は身体をそらせながら避け、そのまま刀にばかり集中している浮竹の足を払い、倒れた首筋に刀をつきつける。
「ちっと甘いんじゃねーか。
足元疎かだぜ?」
(またか!)
鳶色の瞳が鋭く細められる。
悔しさのあまり憎らしい程に思っているのが、獄寺にも伝わってきて、思わず口の端をあげた。
「まだやるか?」
「お願いします」
避け続け、後退の連続の京楽は、不意に刀を受け流し、くるりと身体をひるがえしながら前進することで山本の懐に飛び込む。
刀をつきあげようとした瞬間、山本の姿は消え、背後から重い一撃に目を白黒させる。
そのまま倒れた顔の横に、山本の刀が刺さる。
「相手が見えなくなったらどうしろって言ったか覚えてますか?」
(またか!)
「……霊圧を探る」
「正解っす」
視界から抜かれた刀。
京楽が潜り込んだ時には、山本は瞬歩で背後に回り込んでいたのだ。
(こんな小手先のことでッ!)
身体を起こしながら京楽は山本を睨みつける。
「ん?」
爽やかな笑顔が憎らしい。
「……もう一度お願いします」
「いいっすよ」
場面変わって今度は屋外鍛錬場。
空中で鞭を軽くよけながら、咲は慌てて左手をつきだす。
「雷吼炮!」
雷を帯びた爆砲が放たれ、目の前で爆発が起きる。
日野が放った蒼火墜と激突したようだ。
不意に足に何かが絡まる気配があり、足元を見れば、鞭が絡みついている。
このままいけば地面に打ちつけられてしまう。
しかし日野の斬魂刀である鞭を引きちぎる力は、咲にはない。
となれば。
(持ち主をやるしかないッ)
「縛道の六十三 鎖条鎖縛!」
鎖を日野に巻きつけ、それを引くことで一気に近づき、斬魂刀破涙贄遠に霊圧を込める。
しかし。
「鬼道の十一 綴雷電」
近づいていただけに、鎖条鎖縛を伝った電撃が一瞬で咲の身体に到達する。
咄嗟に霊圧を高めるも、かなりのダメージを受けた。
苦痛に顔を歪めながらなんとか距離を取って着地する。
「こういう道具って言うのは、一長一短っつーか、相手も武器にしやすいんだ」
バチンと鞭を鳴らして見せる。
「鎖条鎖縛も同じってことだ。
虚にはいろんなタイプがいる。
逆手にとられる可能性も考えろ」
まだ痺れる手足を動かしながら、咲はじっと日野を睨む。
「準備ができたらいつでも来い」
「では」
咲は一気に距離を詰めた。
「おい新入り、水!」
「はい!」
「これ洗っとけ!」
「はい!」
「てめぇもだ春水!」
「えっはぁい……」
「返事!」
「はい!」
先輩から頼まれる雑用仕事は護挺の新入隊士が必ず受ける洗礼のようなもの。
入隊と同時に席がない限り、この洗礼は付いてくる。
この中で先輩の背中を見、自ら学ぶ姿勢を養い、体力をつけ、隊舎内の構造や物の取り扱いを学んでいく。
ある意味必要なものなのだ。
だから同じことが山本の道場ではおこなわれている。
「……それは分かってるけど、きっつ……」
夕食の片付けを終え、京楽は部屋で仰向けに転がった。
その隣に浮竹が崩れ落ちるように転がり、咲も倒れ込む。
「学ぶことが多すぎる」
浮竹が呻いた。
「雑用の量もね」
げっそりした京楽。
「どれをとっても霊術院とは比べ物にならないな」
「飽きなくていいけどね」
咲は黙って2人の会話を聞きながら、微笑む。
道場に住み込むようになって早半年。
霊術院に昼間は通い、帰ってからは道場の訓練、雑用に追われる毎日。
毎日怒涛の忙しさに、起きている間は走りっぱなし。
食事は掻きこむように食べ、夜は泥のように眠る。
「僕たち、強くなれるのかな」
眠そうな声で京楽が呟いた。
「なるように努力するしかないんじゃないか。
幸運にも、元柳斎先生の門下生になれたわけだし」
咲はふと近づいてくる霊圧に神経を向ける。
先輩だ。
それも、あの試験の日、咲達の相手をしてくれた人で、休みの日や仕事の暇を見繕っては鍛錬の相手をしてくれる人。
「おい、早く寝ろ。
今夜は2時から実践訓練だって言ったろ。
明るくて眠れやしねぇ」
面倒くさそうな様子を見せつつ現れたのは予想通り獄寺だ。
実は世話焼きであることを、三人はすでに良く知っていた。
彼の部屋は東の方であり、中庭を挟んで西にあるこの部屋からは遠い。
明るいと言っても、これだけ離れた部屋の蝋燭の明かりが眠りを妨げるはずもない。
それなのにわざわざ足を運んで注意してくれるところが、少々お節介ながら有難い。
だから3人は小さく笑って、起き上がる。
「はい、ありがとうございます」
浮竹が代表で礼を言うと、獄寺は怪訝そうに眉をひそめながら去って行った。
「では、おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ」
咲は隣の部屋へと移る。
京楽と浮竹は相部屋だ。
布団を敷いて潜り込めば、3人はあっという間に夢の中。
目を覚ましたのは、咲が一番早かった。
今日の鍛錬の監督をしてくれる獄寺と山本の霊圧の動きを感じたからだ。
実践用に支給された服に袖を通す。
新しいそれは、死覇装と同じ形状ではあるものの、色は濃紺だ。
まだ青い見習い達が着るのにはちょうど良い。
(一刻も早く、あの漆黒に変える)
着替えを終え、隣の部屋へ行き、まだ寝ている京楽と浮竹に声をかける。
「そろそろ」
「もう……か」
目をこすりながら身体を起こす浮竹。
「……もうちょっと」
浮竹は布団にもぐりこむ京楽から、容赦なく掛け布団をはいだ。
2人が着替えている間に咲が洗面を済ませ、2人の洗面の間に破涙贄遠に曇りがないか確認する。
3人が揃うと夕方のうちに用意しておいた握り飯をそれぞれ食べ、本屋に顔を出した。
準備万端の山本と獄寺が振り返る。
そして。
「鮫島副隊長!!!」
思わず咲が声をあげた。
「ちょっと用があってな。
てめぇら今から実践かぁ?」
「はい」
京楽が答える。
鮫島は楽しげに瞳を細めた。
「死んできていいぞぉぉぉ!!!」
「嫌ですよ!」
山本はそのやり取りが面白いのか笑いだし、獄寺は呆れたようにため息をついた。
「行くぞ」
「はい、行ってまいります」
浮竹が鮫島に頭を下げるのに、他の2人も倣ってから、獄寺を追いかけて部屋から出て行った。
「半年前に比べて、ちったぁ強くなったみてぇだな」
山本は少し驚いたように鮫島を見る。
「霊圧と、目つきが違えぞぉ」
「そうっすか?
ずっと一緒にいるとわかんねぇな」
鮫島も用がすんだのか立ち上がる。
「もう行くんすか?」
「暇じゃねぇんだぁ」
部屋から出ようとして、ふと鮫島は足を止めた。
「あのガキ、何か進展は?」
山本は首を振る。
「目立った所では自分で自在に始解ができるようになったくらいっす。
あとは、席のない隊士ではもう歯が立たないことくらいっすかね」
にやりと鋭い歯を見せて鮫島は笑う。
「近々可愛がってやろうか」
「どこまで耐えられるか見ものだぜ」
向かい合う獄寺が余裕の笑みを見せるので、浮竹は苛立ちながらも力を込める。
その隣では山本の刀をただ避け続ける京楽の姿がある。
「こっちもどこまで避けられるか見ものっすね」
爽やかな笑顔に、京楽は心の中で舌打ちをした。
浮竹が入れ続けていた力を一瞬抜き、左下へと流す。
獄寺の刀がそれにつられて切っ先が逸された。
(今だ!)
踏み込んで刀を下から跳ね上げた。
だがその切っ先を獄寺は身体をそらせながら避け、そのまま刀にばかり集中している浮竹の足を払い、倒れた首筋に刀をつきつける。
「ちっと甘いんじゃねーか。
足元疎かだぜ?」
(またか!)
鳶色の瞳が鋭く細められる。
悔しさのあまり憎らしい程に思っているのが、獄寺にも伝わってきて、思わず口の端をあげた。
「まだやるか?」
「お願いします」
避け続け、後退の連続の京楽は、不意に刀を受け流し、くるりと身体をひるがえしながら前進することで山本の懐に飛び込む。
刀をつきあげようとした瞬間、山本の姿は消え、背後から重い一撃に目を白黒させる。
そのまま倒れた顔の横に、山本の刀が刺さる。
「相手が見えなくなったらどうしろって言ったか覚えてますか?」
(またか!)
「……霊圧を探る」
「正解っす」
視界から抜かれた刀。
京楽が潜り込んだ時には、山本は瞬歩で背後に回り込んでいたのだ。
(こんな小手先のことでッ!)
身体を起こしながら京楽は山本を睨みつける。
「ん?」
爽やかな笑顔が憎らしい。
「……もう一度お願いします」
「いいっすよ」
場面変わって今度は屋外鍛錬場。
空中で鞭を軽くよけながら、咲は慌てて左手をつきだす。
「雷吼炮!」
雷を帯びた爆砲が放たれ、目の前で爆発が起きる。
日野が放った蒼火墜と激突したようだ。
不意に足に何かが絡まる気配があり、足元を見れば、鞭が絡みついている。
このままいけば地面に打ちつけられてしまう。
しかし日野の斬魂刀である鞭を引きちぎる力は、咲にはない。
となれば。
(持ち主をやるしかないッ)
「縛道の六十三 鎖条鎖縛!」
鎖を日野に巻きつけ、それを引くことで一気に近づき、斬魂刀破涙贄遠に霊圧を込める。
しかし。
「鬼道の十一 綴雷電」
近づいていただけに、鎖条鎖縛を伝った電撃が一瞬で咲の身体に到達する。
咄嗟に霊圧を高めるも、かなりのダメージを受けた。
苦痛に顔を歪めながらなんとか距離を取って着地する。
「こういう道具って言うのは、一長一短っつーか、相手も武器にしやすいんだ」
バチンと鞭を鳴らして見せる。
「鎖条鎖縛も同じってことだ。
虚にはいろんなタイプがいる。
逆手にとられる可能性も考えろ」
まだ痺れる手足を動かしながら、咲はじっと日野を睨む。
「準備ができたらいつでも来い」
「では」
咲は一気に距離を詰めた。
「おい新入り、水!」
「はい!」
「これ洗っとけ!」
「はい!」
「てめぇもだ春水!」
「えっはぁい……」
「返事!」
「はい!」
先輩から頼まれる雑用仕事は護挺の新入隊士が必ず受ける洗礼のようなもの。
入隊と同時に席がない限り、この洗礼は付いてくる。
この中で先輩の背中を見、自ら学ぶ姿勢を養い、体力をつけ、隊舎内の構造や物の取り扱いを学んでいく。
ある意味必要なものなのだ。
だから同じことが山本の道場ではおこなわれている。
「……それは分かってるけど、きっつ……」
夕食の片付けを終え、京楽は部屋で仰向けに転がった。
その隣に浮竹が崩れ落ちるように転がり、咲も倒れ込む。
「学ぶことが多すぎる」
浮竹が呻いた。
「雑用の量もね」
げっそりした京楽。
「どれをとっても霊術院とは比べ物にならないな」
「飽きなくていいけどね」
咲は黙って2人の会話を聞きながら、微笑む。
道場に住み込むようになって早半年。
霊術院に昼間は通い、帰ってからは道場の訓練、雑用に追われる毎日。
毎日怒涛の忙しさに、起きている間は走りっぱなし。
食事は掻きこむように食べ、夜は泥のように眠る。
「僕たち、強くなれるのかな」
眠そうな声で京楽が呟いた。
「なるように努力するしかないんじゃないか。
幸運にも、元柳斎先生の門下生になれたわけだし」
咲はふと近づいてくる霊圧に神経を向ける。
先輩だ。
それも、あの試験の日、咲達の相手をしてくれた人で、休みの日や仕事の暇を見繕っては鍛錬の相手をしてくれる人。
「おい、早く寝ろ。
今夜は2時から実践訓練だって言ったろ。
明るくて眠れやしねぇ」
面倒くさそうな様子を見せつつ現れたのは予想通り獄寺だ。
実は世話焼きであることを、三人はすでに良く知っていた。
彼の部屋は東の方であり、中庭を挟んで西にあるこの部屋からは遠い。
明るいと言っても、これだけ離れた部屋の蝋燭の明かりが眠りを妨げるはずもない。
それなのにわざわざ足を運んで注意してくれるところが、少々お節介ながら有難い。
だから3人は小さく笑って、起き上がる。
「はい、ありがとうございます」
浮竹が代表で礼を言うと、獄寺は怪訝そうに眉をひそめながら去って行った。
「では、おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ」
咲は隣の部屋へと移る。
京楽と浮竹は相部屋だ。
布団を敷いて潜り込めば、3人はあっという間に夢の中。
目を覚ましたのは、咲が一番早かった。
今日の鍛錬の監督をしてくれる獄寺と山本の霊圧の動きを感じたからだ。
実践用に支給された服に袖を通す。
新しいそれは、死覇装と同じ形状ではあるものの、色は濃紺だ。
まだ青い見習い達が着るのにはちょうど良い。
(一刻も早く、あの漆黒に変える)
着替えを終え、隣の部屋へ行き、まだ寝ている京楽と浮竹に声をかける。
「そろそろ」
「もう……か」
目をこすりながら身体を起こす浮竹。
「……もうちょっと」
浮竹は布団にもぐりこむ京楽から、容赦なく掛け布団をはいだ。
2人が着替えている間に咲が洗面を済ませ、2人の洗面の間に破涙贄遠に曇りがないか確認する。
3人が揃うと夕方のうちに用意しておいた握り飯をそれぞれ食べ、本屋に顔を出した。
準備万端の山本と獄寺が振り返る。
そして。
「鮫島副隊長!!!」
思わず咲が声をあげた。
「ちょっと用があってな。
てめぇら今から実践かぁ?」
「はい」
京楽が答える。
鮫島は楽しげに瞳を細めた。
「死んできていいぞぉぉぉ!!!」
「嫌ですよ!」
山本はそのやり取りが面白いのか笑いだし、獄寺は呆れたようにため息をついた。
「行くぞ」
「はい、行ってまいります」
浮竹が鮫島に頭を下げるのに、他の2人も倣ってから、獄寺を追いかけて部屋から出て行った。
「半年前に比べて、ちったぁ強くなったみてぇだな」
山本は少し驚いたように鮫島を見る。
「霊圧と、目つきが違えぞぉ」
「そうっすか?
ずっと一緒にいるとわかんねぇな」
鮫島も用がすんだのか立ち上がる。
「もう行くんすか?」
「暇じゃねぇんだぁ」
部屋から出ようとして、ふと鮫島は足を止めた。
「あのガキ、何か進展は?」
山本は首を振る。
「目立った所では自分で自在に始解ができるようになったくらいっす。
あとは、席のない隊士ではもう歯が立たないことくらいっすかね」
にやりと鋭い歯を見せて鮫島は笑う。
「近々可愛がってやろうか」