原作過去編ー110年前
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自分が殺すつもりであった。
底抜けの馬鹿で扱いにくく、とにかくうっとおしい久南を取り立てて、副隊長に据えていたのは自分だ。
自分が責任を持つつもりでいた。
彼女を殺すのは、自分だと。
たとえそれを、一生背負うことになろうと。
(だがもしかしたら彼女は、そんな俺の苦しみを見抜いていたのかもしれん。
・・・彼女の過去を思えば、その行動に納得は行く。)
自分の代わりにとどめを刺した。
それは六車の誇りに傷をつける行為だ。
それでいて深い傷を負っている六車を守る行為だ。
正直なところ、このまま久南と戦い続けて、致命傷なく相手を殺すことは難しいと思っていた。
(これが、あの反乱の、罪人と呼ばれる女の戦い方か。)
残虐な殺戮を繰り返したと言われる響河の部下としては、あまりに甘く、過保護な事だと思わず口の端を歪に上げた時だった。
その光の中で激しい雄たけびが響き、慌てて刀を強く握りなおし、気配を探る。
激しく何かがぶつかり合う音がした。
おそらく久南と咲だろう。
濛々と立ち上がる砂煙が晴れていく中で、再び二人の応酬が繰り広げられていた。
「吹っ飛ばせ、断地風 。」
その様子に迷うことなく解放し、久南に襲い掛かる。
虚となり心を失ったであろう部下だが、六車の戦い方は全て覚えているらしい。
何度もした鍛錬のとおり、彼女は確実に六車の剣閃の延長線上まで綺麗に避ける。
断地風 の能力は「太刀筋を炸裂させる」というものであり、遠距離からでも斬魄刀を振るった剣閃の延長線上の敵を切断、炸裂させることができるのだ。
その懐かしい鮮やかな身のこなしに心が痛むが、ここで手を抜くわけにはいかない。
だが久南の攻撃力が上がっている以上、二人がかりでもなかなか攻め切れない。
虚としての気配が徐々に濃くなり、それに従って久南の攻撃力も上がる。
あの馬鹿力をまともに受けては、命に関わる。
策を練り直す必要がある。
「卯ノ花、このままでは埒があかん。
報せに走れ。」
荒い呼吸、流れる血をそのままに、六車は咲に命じる。
咲は少し迷ってから口を開いた。
「失礼ですが、お一人では・・・。」
「負けねぇよ、俺は死なん。」
六車は鋭い眼光を向ける。
「あいつはウザくて糞がつくほど大馬鹿で手に負えん奴だが、俺の副官だ。
・・・俺が止める。」
咲はふと、久南の照れたような笑顔を思い出した。
目の前の彼に、全幅の信頼を寄せていた、彼女を。
今や虚となった彼女を見つめる瞳は、強い。
二人の信頼の元に、ひとつ頷いた。
そしてその場を離れようとしたときだった。
「くぅっ!!!」
拳西が額を手で覆って膝を折った。
「六車隊長!?」
咲は慌てて久南の攻撃から避けるために、再び六車を抱えて跳んだ。
「傷が開いたのですか?
・・・っ!!!」
改めてその顔を覗き込み、咲は絶句する。
荒い呼吸を繰り返す肩から、反射的に手を離した。
自分でも顔が青ざめるのがわかる。
「・・・嘘はつかんでいい、はっきり言ってくれ。」
六車の瞳が、咲を捉えてそらすことを許さない。
左目は彼本来の黄褐色をした瞳。
そして、仮面に覆われた右半分にある右目は、虚のごとく白目と黒目の色が反転している。
だがどちらの瞳も強い意志を灯す、隊長としての六車の瞳であった。
ーーまだ、今は。
「・・・俺に何が起きている・・・?」
咲は震える唇から答えることを躊躇った。
「言え。
これは命令だ。」
これ程までに強い人に、あまりに悲惨な現状を伝えることも、彼が敵になることも、どちらもあまりに絶望的だった。
底抜けの馬鹿で扱いにくく、とにかくうっとおしい久南を取り立てて、副隊長に据えていたのは自分だ。
自分が責任を持つつもりでいた。
彼女を殺すのは、自分だと。
たとえそれを、一生背負うことになろうと。
(だがもしかしたら彼女は、そんな俺の苦しみを見抜いていたのかもしれん。
・・・彼女の過去を思えば、その行動に納得は行く。)
自分の代わりにとどめを刺した。
それは六車の誇りに傷をつける行為だ。
それでいて深い傷を負っている六車を守る行為だ。
正直なところ、このまま久南と戦い続けて、致命傷なく相手を殺すことは難しいと思っていた。
(これが、あの反乱の、罪人と呼ばれる女の戦い方か。)
残虐な殺戮を繰り返したと言われる響河の部下としては、あまりに甘く、過保護な事だと思わず口の端を歪に上げた時だった。
その光の中で激しい雄たけびが響き、慌てて刀を強く握りなおし、気配を探る。
激しく何かがぶつかり合う音がした。
おそらく久南と咲だろう。
濛々と立ち上がる砂煙が晴れていく中で、再び二人の応酬が繰り広げられていた。
「吹っ飛ばせ、
その様子に迷うことなく解放し、久南に襲い掛かる。
虚となり心を失ったであろう部下だが、六車の戦い方は全て覚えているらしい。
何度もした鍛錬のとおり、彼女は確実に六車の剣閃の延長線上まで綺麗に避ける。
その懐かしい鮮やかな身のこなしに心が痛むが、ここで手を抜くわけにはいかない。
だが久南の攻撃力が上がっている以上、二人がかりでもなかなか攻め切れない。
虚としての気配が徐々に濃くなり、それに従って久南の攻撃力も上がる。
あの馬鹿力をまともに受けては、命に関わる。
策を練り直す必要がある。
「卯ノ花、このままでは埒があかん。
報せに走れ。」
荒い呼吸、流れる血をそのままに、六車は咲に命じる。
咲は少し迷ってから口を開いた。
「失礼ですが、お一人では・・・。」
「負けねぇよ、俺は死なん。」
六車は鋭い眼光を向ける。
「あいつはウザくて糞がつくほど大馬鹿で手に負えん奴だが、俺の副官だ。
・・・俺が止める。」
咲はふと、久南の照れたような笑顔を思い出した。
目の前の彼に、全幅の信頼を寄せていた、彼女を。
今や虚となった彼女を見つめる瞳は、強い。
二人の信頼の元に、ひとつ頷いた。
そしてその場を離れようとしたときだった。
「くぅっ!!!」
拳西が額を手で覆って膝を折った。
「六車隊長!?」
咲は慌てて久南の攻撃から避けるために、再び六車を抱えて跳んだ。
「傷が開いたのですか?
・・・っ!!!」
改めてその顔を覗き込み、咲は絶句する。
荒い呼吸を繰り返す肩から、反射的に手を離した。
自分でも顔が青ざめるのがわかる。
「・・・嘘はつかんでいい、はっきり言ってくれ。」
六車の瞳が、咲を捉えてそらすことを許さない。
左目は彼本来の黄褐色をした瞳。
そして、仮面に覆われた右半分にある右目は、虚のごとく白目と黒目の色が反転している。
だがどちらの瞳も強い意志を灯す、隊長としての六車の瞳であった。
ーーまだ、今は。
「・・・俺に何が起きている・・・?」
咲は震える唇から答えることを躊躇った。
「言え。
これは命令だ。」
これ程までに強い人に、あまりに悲惨な現状を伝えることも、彼が敵になることも、どちらもあまりに絶望的だった。