朽木蒼純編
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退院の報告がてら蒼純を探し、朽木家に顔を出した咲は久しぶりに竹刀を握っていた。
小気味良い音を立てて、咲が一本取り、白哉は痛みに顔を歪める。
「やはりまだまだか。」
そして悔しそうに汗を拭う。
入隊を勝ち取った彼はいつの間にか咲の背を追い越し、随分逞しくなっていた。
以前のような少年から青年への過渡期らしい線の細さは消え、父譲りの美しさにもまた磨きがかかったように見え、眩しい。
入隊は4月、つまり来月だ。
朽木の嫡男なのだ。
六番隊へ配属されることだろう。
「ですが本当に強くなられましたね、若様。」
白哉はため息をつく。
「お前に強くなったと褒められているようでは猶の事駄目だ。」
その表情も随分大人びてきたように思えて、咲は微笑む。
「いつまでも褒めさせていただきたいものです。」
とはいえ、咲にとって白哉というのはいつまでも小さな”ぼっちゃま”に変わりはないのだ。
生まれたときから彼を知る咲にとっては、まるで子どもや孫を見るような思いであり、そんな成長した姿を見るだけで微笑みたくなるもの。
「何を!
・・・まぁいい。
何か甘いものでも食べに行くか。」
いつもの流れではあるが、咲には今日、顔を出さねばならないと思っているところがあった。
「申し訳ありません、今日は少し・・・。」
「なんだ、今日一日休みではなかったのか?」
「休みは休みなのですが、少し用事がありまして。」
竹刀を置き、砂ぼこりを払う様子に、白哉の勘が働く。
「誰かと会うのか?」
「ええ、まぁ、そんなところです。」
白哉の気も知らず曖昧に答える咲に、もどかしさを覚える。
いつからだろうか。
休みの日は白哉と鍛錬して、甘味を食べに行くのが常だったはずなのに、時折断られることがあった。
今日こそその理由を問い詰めてやろうと白哉は腕を組む。
「誰だ?」
鋭く細められた瞳に、流石に咲は慌てた。
「誰と申されましても」
「ほう。
私に言えぬと申すのか。」
一度いい始めたら聞かないのが白哉だ。
落ち着きは見せてきたとはいえ、まだ元来の熱い性格は健在。
「そういうわけでは」
たじろごうと全く気にすることなく、咲を正面から見据えて言い放った。
「では私に紹介しろ。」
「わ、若様、それはちょっと・・・」
「着替えたら行くからな、逃げるなよ!」
そう言い残して身支度を整えに駆けて行く背中に、咲は肩を落とした。
その様子を眺めて小さく笑う声に、咲は振り返り頭を下げた。
「お疲れ様です、副隊長。」
蒼純は家の所要で暫く時間がかかるとのことで、咲は白哉と鍛錬に励んでいたのだ。
どうやらその用事の方は済んだらしい。
「お前こそ。
無事退院したのだな。」
「はい。
ご心配おかけいたしました。」
咲の言葉に、緩く首を振る。
「あまり無理はするな。」
「ありがとうございます。」
そこへ彼の後ろから静かに人影が近づく。
「白哉様も外見ばかり大人になって、まだまだお姉ちゃんの咲さんが恋しいのね。
困ったものです。」
「明翠様。」
咲は苦笑を浮かべる。
「でも本当によろしいのかしら・・・もしや・・・」
「違います違います!
お気遣いなく。」
慌てて首を振って否定する。
恋人との逢瀬だなんて思われては堪らない。
「あら、それは残念。」
「実に。」
その慌てぶりに思わず明翠と蒼純は笑った。
「ただ行先は流魂街、南流魂街8地区入野です。
よろしいでしょうか。」
「構わないよ。
確か宿りを与えていたね。」
「そのことなのですが・・・」
咲は改まって蒼純を見上げた。
「実は一人、子どもを匿っておりまして。」
「おや。」
人との関りを極度に避ける傾向のある彼女にしては珍しいと、眉を上げる。
「現世で命を落としたばかりの、女の子でございます。
南流魂街78地区戌吊で見つけたのですが、家族もない様で捨て置けず、連れてきてしまいました。
ご迷惑はおかけしません。
生活に慣れさえしたら、どこかに奉公に出そうと思っている次第です。」
一気にそう言うものだから、蒼純も明翠も口を挟むことが出来なかった。
どこか不安げに見上げてくる瞳に、蒼純は穏やかに微笑む。
「言っただろう。
あの宿りはお前に与えたものだ。
好きに使ってくれて構わないのだよ。」
「もったいなきお心遣い、ありがとうございます。」
咲は深々と頭を下げる。
「で、その子に会いに行くのかしら?」
明翠が興味深げに尋ねる。
「はい。
自立して生活するには少し幼く、まだ尸魂界にも慣れておりませんので時間のある時には様子をと。」
「なるほど、それは白哉様が嫉妬するわけですね。」
くすくすと笑いを堪える明翠に咲も思わず微笑む。
「そんなそんな。」
「だが、あの子にもいい機会になるだろう。
精霊挺ばかりにいて貴族とだけ付き合っていては、入隊後戸惑うこともあるだろうから。」
確かに、今の護挺には流魂街出身者も随分と増えた。
白哉のような性格では、うまくやっていけるか若干の心配はある。
「咲!!
ちゃんとそこにおるか!!!」
慌ててかけてくる白哉に、思わず3人は声を上げて笑った。
小気味良い音を立てて、咲が一本取り、白哉は痛みに顔を歪める。
「やはりまだまだか。」
そして悔しそうに汗を拭う。
入隊を勝ち取った彼はいつの間にか咲の背を追い越し、随分逞しくなっていた。
以前のような少年から青年への過渡期らしい線の細さは消え、父譲りの美しさにもまた磨きがかかったように見え、眩しい。
入隊は4月、つまり来月だ。
朽木の嫡男なのだ。
六番隊へ配属されることだろう。
「ですが本当に強くなられましたね、若様。」
白哉はため息をつく。
「お前に強くなったと褒められているようでは猶の事駄目だ。」
その表情も随分大人びてきたように思えて、咲は微笑む。
「いつまでも褒めさせていただきたいものです。」
とはいえ、咲にとって白哉というのはいつまでも小さな”ぼっちゃま”に変わりはないのだ。
生まれたときから彼を知る咲にとっては、まるで子どもや孫を見るような思いであり、そんな成長した姿を見るだけで微笑みたくなるもの。
「何を!
・・・まぁいい。
何か甘いものでも食べに行くか。」
いつもの流れではあるが、咲には今日、顔を出さねばならないと思っているところがあった。
「申し訳ありません、今日は少し・・・。」
「なんだ、今日一日休みではなかったのか?」
「休みは休みなのですが、少し用事がありまして。」
竹刀を置き、砂ぼこりを払う様子に、白哉の勘が働く。
「誰かと会うのか?」
「ええ、まぁ、そんなところです。」
白哉の気も知らず曖昧に答える咲に、もどかしさを覚える。
いつからだろうか。
休みの日は白哉と鍛錬して、甘味を食べに行くのが常だったはずなのに、時折断られることがあった。
今日こそその理由を問い詰めてやろうと白哉は腕を組む。
「誰だ?」
鋭く細められた瞳に、流石に咲は慌てた。
「誰と申されましても」
「ほう。
私に言えぬと申すのか。」
一度いい始めたら聞かないのが白哉だ。
落ち着きは見せてきたとはいえ、まだ元来の熱い性格は健在。
「そういうわけでは」
たじろごうと全く気にすることなく、咲を正面から見据えて言い放った。
「では私に紹介しろ。」
「わ、若様、それはちょっと・・・」
「着替えたら行くからな、逃げるなよ!」
そう言い残して身支度を整えに駆けて行く背中に、咲は肩を落とした。
その様子を眺めて小さく笑う声に、咲は振り返り頭を下げた。
「お疲れ様です、副隊長。」
蒼純は家の所要で暫く時間がかかるとのことで、咲は白哉と鍛錬に励んでいたのだ。
どうやらその用事の方は済んだらしい。
「お前こそ。
無事退院したのだな。」
「はい。
ご心配おかけいたしました。」
咲の言葉に、緩く首を振る。
「あまり無理はするな。」
「ありがとうございます。」
そこへ彼の後ろから静かに人影が近づく。
「白哉様も外見ばかり大人になって、まだまだお姉ちゃんの咲さんが恋しいのね。
困ったものです。」
「明翠様。」
咲は苦笑を浮かべる。
「でも本当によろしいのかしら・・・もしや・・・」
「違います違います!
お気遣いなく。」
慌てて首を振って否定する。
恋人との逢瀬だなんて思われては堪らない。
「あら、それは残念。」
「実に。」
その慌てぶりに思わず明翠と蒼純は笑った。
「ただ行先は流魂街、南流魂街8地区入野です。
よろしいでしょうか。」
「構わないよ。
確か宿りを与えていたね。」
「そのことなのですが・・・」
咲は改まって蒼純を見上げた。
「実は一人、子どもを匿っておりまして。」
「おや。」
人との関りを極度に避ける傾向のある彼女にしては珍しいと、眉を上げる。
「現世で命を落としたばかりの、女の子でございます。
南流魂街78地区戌吊で見つけたのですが、家族もない様で捨て置けず、連れてきてしまいました。
ご迷惑はおかけしません。
生活に慣れさえしたら、どこかに奉公に出そうと思っている次第です。」
一気にそう言うものだから、蒼純も明翠も口を挟むことが出来なかった。
どこか不安げに見上げてくる瞳に、蒼純は穏やかに微笑む。
「言っただろう。
あの宿りはお前に与えたものだ。
好きに使ってくれて構わないのだよ。」
「もったいなきお心遣い、ありがとうございます。」
咲は深々と頭を下げる。
「で、その子に会いに行くのかしら?」
明翠が興味深げに尋ねる。
「はい。
自立して生活するには少し幼く、まだ尸魂界にも慣れておりませんので時間のある時には様子をと。」
「なるほど、それは白哉様が嫉妬するわけですね。」
くすくすと笑いを堪える明翠に咲も思わず微笑む。
「そんなそんな。」
「だが、あの子にもいい機会になるだろう。
精霊挺ばかりにいて貴族とだけ付き合っていては、入隊後戸惑うこともあるだろうから。」
確かに、今の護挺には流魂街出身者も随分と増えた。
白哉のような性格では、うまくやっていけるか若干の心配はある。
「咲!!
ちゃんとそこにおるか!!!」
慌ててかけてくる白哉に、思わず3人は声を上げて笑った。