原作過去編ー110年前
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
猿柿は時に跳び、時に屈み、何とか攻撃を避け続ける。
だがそれも時間の問題だ。
六車と久南の力は徐々に強くなってきている上、疲れ知らずだ。
圧倒的に、一人で戦う、否、逃げ惑う猿柿には不利な戦いである。
咲に反し続けたというのに、彼女は猿柿を庇って倒れた。
生きているのだろうか、目を覚ましてはくれないだろうか、とちらりと彼女の方を見るが、それは虫が良すぎるというもの。
彼女はぴくりとも動かない。
罪人であったはずだ。
彼女は多くの人を殺した、罪人なのだ。
なのになぜ、あれほどまでに必死に訴えたのだろう。
生きろ 、と。
それなのに彼女は倒れた。
(命じた者のために生きて帰ろってゆうたんは、お前やないか!ボケ!)
彼女の上司である蒼純の様子を思い出す。
罪人である彼女を、きっと、心から可愛がっていた。
あの時は理解できないと思ったが、今は良心が痛む。
”罪人”という先入観でしか彼女を見ていなかった自分は、とんでもないことをしでかしてしまった。
これはもう、猿柿一人の命の問題ではない。
隊長が虚となったとなれば、護挺の根幹を揺るがしかねない問題である。
その後悔が隙になったのだろう。
眼前に迫る六車の拳に、猿柿は目を見開いた。
だが恐れていた痛みはやっては来ない。
その代わり見知った気配が自分と六車を隔てていた。
「何で戦わへんのや。」
背中越しに問いかける平子から、猿柿は目をそらす。
「できるかいな。」
「アホか。」
そこに愛川、鳳橋、矢胴丸も駆けつける。
「本当に拳西なのかい?
仮面も霊圧も、まるで虚じゃないか!」
鳳橋の言葉に平子は刀を強く握る。
「俺にもわからん。
ただひとつ分かってるんは、刀を抜かんと死ぬっちゅうこっちゃ。」
まだ現実を受け入れられない猿柿を脇に抱え、六車の攻撃をかわし、直ぐに一撃を加えた後大きく跳び上がって距離を開ける。
その際に、少し離れたところに横たわる姿を見つけ、傍に駆けた。
「こいつ六番隊の・・・!」
息はあるが、気を失った咲だ。
一目でも分かるひどい傷。
彼女の実力は知らないが、以前一見した限りは副隊長クラスは越えていた。
彼女を評価する蒼純や浮竹、京楽の様子を見る限り、その実力は自分が知る以上だろう。
その彼女がここまでやられるとは。
脇で抱えた腕の中で、猿柿が暴れる。
「わかっとんのか!
あいつは拳西なんやぞ!」
先の一撃を非難しているのは明白だった。
そして彼女が未だに甘い考えを捨てきれていないことも。
「お前、俺らが来るまでに、卯ノ花から拳西を庇ったなんてことはないな?」
途端に目を逸らす様子に、これは後で蒼純に謝りにいかねばなるまいと心の中で溜め息をつく。
「うっ・・・
あ、あの罪人が拳西を殺そうとするからっ!!」
猿柿は常に態度が悪い。
素っ気ないし、横柄だし、偉そうだ。
歯に衣着せぬ物言いに、嘘はつけない上、一度信じたら突っ走る所がある。
そして疑り深い分、一度心を許した相手には、とことん甘い。
つまり彼女はかわいい性格だった。
そしてそれは時として、大変厄介でもある。
若さ故と言えばそうかもしれない。
彼女の優しさ故と言えば、また、そうかもしれない。
今まではそれでもいいと、平子は思っていた。
いつか彼女が隊長として誰かを斬らねばならぬ時までは、そのままでいいと、そのままでいて欲しいと思ってしまっていた。
そう思っていた自分もまた若く、優しく、甘かったのかもしれないと、今になって思う。
もっと早くから、彼女には教えておかねばならなかった、と。
でなければ彼女は、命を落としていたかもしれない。
「ええか、卯ノ花が正しい。
俺らが止めなあかんのや。
あいつが拳西やったらなおさらな。」
噛んで含めるように、ゆっくりと伝える。
だが性格上、それをすぐに受け入れ、刀を向けられる彼女ではないこともまた、知っている。
「そうだよ。
拳西が大事だから、僕らで止めないといけないんだ。
これ以上、彼に誰かを傷つけさせるわけにはいかない。」
鳳橋も同じく言い聞かせる。
平子の脇で、猿柿は無言で項垂れていた。
だがそれも時間の問題だ。
六車と久南の力は徐々に強くなってきている上、疲れ知らずだ。
圧倒的に、一人で戦う、否、逃げ惑う猿柿には不利な戦いである。
咲に反し続けたというのに、彼女は猿柿を庇って倒れた。
生きているのだろうか、目を覚ましてはくれないだろうか、とちらりと彼女の方を見るが、それは虫が良すぎるというもの。
彼女はぴくりとも動かない。
罪人であったはずだ。
彼女は多くの人を殺した、罪人なのだ。
なのになぜ、あれほどまでに必死に訴えたのだろう。
それなのに彼女は倒れた。
(命じた者のために生きて帰ろってゆうたんは、お前やないか!ボケ!)
彼女の上司である蒼純の様子を思い出す。
罪人である彼女を、きっと、心から可愛がっていた。
あの時は理解できないと思ったが、今は良心が痛む。
”罪人”という先入観でしか彼女を見ていなかった自分は、とんでもないことをしでかしてしまった。
これはもう、猿柿一人の命の問題ではない。
隊長が虚となったとなれば、護挺の根幹を揺るがしかねない問題である。
その後悔が隙になったのだろう。
眼前に迫る六車の拳に、猿柿は目を見開いた。
だが恐れていた痛みはやっては来ない。
その代わり見知った気配が自分と六車を隔てていた。
「何で戦わへんのや。」
背中越しに問いかける平子から、猿柿は目をそらす。
「できるかいな。」
「アホか。」
そこに愛川、鳳橋、矢胴丸も駆けつける。
「本当に拳西なのかい?
仮面も霊圧も、まるで虚じゃないか!」
鳳橋の言葉に平子は刀を強く握る。
「俺にもわからん。
ただひとつ分かってるんは、刀を抜かんと死ぬっちゅうこっちゃ。」
まだ現実を受け入れられない猿柿を脇に抱え、六車の攻撃をかわし、直ぐに一撃を加えた後大きく跳び上がって距離を開ける。
その際に、少し離れたところに横たわる姿を見つけ、傍に駆けた。
「こいつ六番隊の・・・!」
息はあるが、気を失った咲だ。
一目でも分かるひどい傷。
彼女の実力は知らないが、以前一見した限りは副隊長クラスは越えていた。
彼女を評価する蒼純や浮竹、京楽の様子を見る限り、その実力は自分が知る以上だろう。
その彼女がここまでやられるとは。
脇で抱えた腕の中で、猿柿が暴れる。
「わかっとんのか!
あいつは拳西なんやぞ!」
先の一撃を非難しているのは明白だった。
そして彼女が未だに甘い考えを捨てきれていないことも。
「お前、俺らが来るまでに、卯ノ花から拳西を庇ったなんてことはないな?」
途端に目を逸らす様子に、これは後で蒼純に謝りにいかねばなるまいと心の中で溜め息をつく。
「うっ・・・
あ、あの罪人が拳西を殺そうとするからっ!!」
猿柿は常に態度が悪い。
素っ気ないし、横柄だし、偉そうだ。
歯に衣着せぬ物言いに、嘘はつけない上、一度信じたら突っ走る所がある。
そして疑り深い分、一度心を許した相手には、とことん甘い。
つまり彼女はかわいい性格だった。
そしてそれは時として、大変厄介でもある。
若さ故と言えばそうかもしれない。
彼女の優しさ故と言えば、また、そうかもしれない。
今まではそれでもいいと、平子は思っていた。
いつか彼女が隊長として誰かを斬らねばならぬ時までは、そのままでいいと、そのままでいて欲しいと思ってしまっていた。
そう思っていた自分もまた若く、優しく、甘かったのかもしれないと、今になって思う。
もっと早くから、彼女には教えておかねばならなかった、と。
でなければ彼女は、命を落としていたかもしれない。
「ええか、卯ノ花が正しい。
俺らが止めなあかんのや。
あいつが拳西やったらなおさらな。」
噛んで含めるように、ゆっくりと伝える。
だが性格上、それをすぐに受け入れ、刀を向けられる彼女ではないこともまた、知っている。
「そうだよ。
拳西が大事だから、僕らで止めないといけないんだ。
これ以上、彼に誰かを傷つけさせるわけにはいかない。」
鳳橋も同じく言い聞かせる。
平子の脇で、猿柿は無言で項垂れていた。