虚圏調査隊編
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広い広い森を、別け入っていく。
食料が減ってきたから、食べられそうな木ノ実や草を見つけては風呂敷に包む。
この世界にも食べられるものがあって、それも思いの外美味しく、初めて食べたときは驚いたものだ。
(これこれ)
雅忘人が気に入っていたキノコを見つけて摘む。
雅忘人も李梅も無口だが、李梅よりも雅忘人の方が優しく接してくれた。
というのも李梅はまだ咲のことを信用していない節がある。
力量を図るためかわざと危険な目に合わせることもしばしばで、彼と共に戦う時は一人で戦っている時以上に気を張ることも多い。
(だがそれも当たり前だ)
罪人と呼ばれることに馴れた咲にとっては、痛くも痒くもない。
信じていた仲間にまで裏切られるご時世、よく知りもしない罪人に心を許すはずがない。
咲は風呂敷を結ぼうと角を持ち上げ、そのまま軽やかに飛び上がった。
大きな音が鳴って、咲のいた場所に大きな穴が開いていた。
砂煙が晴れて行く。
手早く肩に風呂敷を結んだ。
「なぜ分かった?」
その中央で、明るいスカイブルーの瞳の虚が睨む。
まるで豹のような姿は無駄がなく美しいと思った。
「微かな風の音と、消しきれていない霊圧を感じました」
鋭い目が咲を睨み付ける。
「てめぇは何者だ?
仮面が見当たらねぇが……」
その問いかけに首をかしげる。
「そんなことを知ってどうするんですか?」
「強い奴のことを知りたいと思うのは普通だろうが」
「普通ですか?」
「文句あるか?」
短気なのかいらいらとした様子の虚に、慌てて首を振る。
「私はこことは違う世界から来ました」
「違う世界?」
虚は眉をひそめる。
「強ぇ奴がいんのか?」
「……え?」
「だから!!」
「聞こえています!」
怒鳴る虚に慌てて手を振る。
「ただ、質問の真意が分からなくて……」
尸魂界に強い奴がいたらなんなのか、咲にとってはそれが一番気になることだ。
「俺は強ぇ奴と殺り合いてぇ!!!」
その答えに、目を細めた。
「やはり知能が高くとも虚は虚に過ぎない、か」
「もう一度聞く。
てめぇは何者だ?!」
咲は緩く首を振った。
それに虚は姿勢を低くして臨戦態勢をとる。
「ひとつだけ分かっていることがある。
……てめぇを喰らえばもっと強くなれそうだ」
セロが咲に向けてふくれていく。
そのセロに向かって咲は手を広げた。
「雷吼炮」
両者の攻撃が衝突する。
爆発音が辺りに鳴り響いた。
咲は身を屈める。
頭上を虚閃が過ぎ去るとすぐさま大きく飛んだ。
さっきまで咲がいた場所を白い塊が高速で駆けた。
「甘い!」
咲は銀白風花紗に口許を隠し、刀を突き立てるようにして体重を乗せて急降下する。
「クソッ!!!上かッ!!!」
避けるには間に合わず、砂が陥没するほどの威力を自身の牙で噛みついて受け止める。
「受け止めたか」
「ウッセェッ……」
自慢の牙が欠け、2人は距離を取る。
「牙が生え変わったらまたくる。
……勝ったら名前、教えろよ」
咲は首を振る。
「私は死神。
虚を倒すのが役目」
「馬鹿言え、お前はこっち側だよ」
確かに貴族社会の死神に比べれば、自分は彼側だろう。
昔の自分のような荒削りさに妙な愛着が湧いて、この虚は殺すに殺せなかった。
咲が他の虚との戦闘により既に手負いの時は襲ってこない事や、食料を分けてもらった事などもあり、憎めない奴だと思っていたのだ。
ただの鍛錬の相手を求めている彼はまるで十一番隊のようだ。
遠い昔、隊長であった十勝が自分を十一番台の席官にと言ってきたことがあったが、自身としても実力が認められる十一番隊の風土は合っていたかも知れないとは思う。
出世を狙ったり身分に拘る輩よりも、彼のような存在の方が咲にはどこか心地よく、思わず笑いが漏れた。
もしかしたら自分には、この虚圏の方が合うかもしれない。
あの虚が言った「こっち側」の意味は、性質の話だったが、実はそれだけではないかもしれない。
斬魄刀を強く握るーー解放すれば虚のような姿になる斬魄刀を。
