斬魄刀異聞過去編
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「おや、夜一様。
どうされました?」
咲と共に現れた客人に、紳士的な蒼純は驚いたように尋ねた。
「実は」
「父上が迷子になってしもうたのじゃ!」
元気のよい声に、咲は戸惑ったように蒼純を見上げる。
「そうでしたか」
彼はそう言うとしゃがんで夜一の頭を撫でた。
気持ちよさそうに目をつぶった間に、蒼純は咲をちらりと見て、穏やかな表情で一つうなずく。
どうやら事情は理解してもらえたらしい。
奥から響河も顔を出し、またか、と呟いて頭を掻いている。
どうやらよくあることらしい。
「喜助君は今日は一緒かな?」
「お使いに行っておる。
終わったらこっちに来ると言っておった!」
「じゃあそれまで六番隊の鍛錬場で遊んでいるのがいいかな?」
「ああそうじゃな!
儂は咲と鍛錬したい!」
こっちの都合はそっちのけで、希望をぐいぐいと押す夜一に、咲は顔をひきつらせつつ上司の顔色をうかがう。
「いいでしょう。
かまわないかい?」
上司の命令に逆らえるはずはない。
当然のことながら、咲は姿勢を正して返事をした。
「はい」
「夜一」
鍛錬場の入口からかけられた声に、咲は着地したまま片膝をつき、頭を下げた。
「父上!」
夜一の方はと言えば父の来場に攻撃を止め、くるりと入り口を振り返る。
四楓院深夜隊長の後ろから、ひょこりと金髪の頭が覗いた。
「あ、喜助!」
「二番隊で待っているようにと言っただろう。
また喜助君にも迷惑をかけて」
「迷惑はかけとらんぞ。
喜助が勝手に迷惑がっとるのじゃ」
「お前はまったく」
深夜に問いかけられるような視線を向けられ、咲は頭を垂れたまま名乗る。
「六番隊隊士、卯ノ花咲と申」
「わしの付き人じゃ!」
途中で被ってきた幼い声に、咲は顔をあげて少女を見る。
それから不思議そうな顔をしている四楓院隊長を見てぶんぶんと首を振った。
「い、いえ、夜一様!」
「なんじゃ?
不満でもあるのか?
咲ほどの実力があれば、我が家でも十分やっていけるぞ!
そうじゃ、わしの手合わせの相手になればいい!」
どんどん話が拗れていく気がしてならない。
深夜は思いのほか愛娘が気に入っているらしい隊士をじっと見てから、片膝を着いたままの彼女の前に、視線を合わせるように同じくしゃがんだ。
畏れ多いことに咲は目を見開く。
「すまんな。
夜一が迷惑をかけたようだ」
くすりと笑って隊長はそう言った。
「い、いえ!
私も楽しく鍛錬させていただきました!」
慌てて首を振ると、夜一が咲の肩に勢いよく飛び乗り、危うく隊長の方へつんのめるところだった。
肩車状態で、夜一はそこから降りる気配はない。
「父上、咲は強いぞ!
新入隊士というのに白打も、歩法も、隠密機動の分隊長程度だ!
隠密機動にスカウトせぬ手はない!」
ぱしぱしと咲の頭を叩きながら力説する夜一に、咲は混乱を極めていた。
重みのせいで両膝をつき、なんとか腕で体重を支える形になっている。
隊長も思わず苦笑を洩らした。
「夜一様、それは困ります」
聞こえてきた声に咲は夜一の重さも忘れたように頭を上げ、鍛錬場の入り口を見た。
「響河殿!
蒼純副隊長!」
救世主現る、と言ったところだ。
蒼純は相変わらず柔らかい微笑みを浮かべ、響河は咲の様子がおかしいのか笑いを堪えている。
「卯ノ花は私の大切な部下ですから、二番隊や隠密機動に引き抜かれては困ってしまいます」
尊敬する響河の言葉に、咲は呆気に取られてから、じわりじわりと恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
その様子に四楓院隊長は目を細め、溜息をついて見せた。
「それは仕方ないなぁ、夜一」
態とらしい言葉に、夜一が頭の上で不機嫌な顔になったのは雰囲気でわかった。
「そうだ、夜一。
また一緒に遊んでくれないか、お願いしてご覧」
するとぐいっと頭の上から夜一がさかさまに咲の顔を覗き込んだ。
首を足で締めるような形になっていてひどく苦しいが、目の前に父である深夜を前に、それを言えるはずもない。
「また遊んでくれるか?」
「また遊んでください、でしょう」
喜助の訂正が入り、夜一の頬はさらに膨らんだ。
気のせいか首を絞めている足にも力が入り、咲は苦しい息で慌てて返事をする。
「も、もちろんに御座います!」
すると呆気なく首から足は離れ、咲は急な反動に尻餅をついた。
ちなみに夜一はと言うと宙返りをして綺麗に着地をし、飛び跳ねた。
「やったぁ!!」
そのあどけない姿に、一同は目を細め、咲も小さく安堵のため息をついてから微笑んだのだった。
