斬魄刀異聞過去編
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「おい!
ここはどこじゃ?」
急にかけられた幼い声に、咲は驚いて空を見上げた。
木の上にちょこんと座る小麦色の肌の少女。
長い髪を二つに縛りにし、紅い髪紐で止めている。
性別も髪形も歳も違うけれど、どこからどう見ても、とある人にそっくりだ。
「……四楓院家の方でしょうか?」
「そうじゃ!
四楓院夜一と言う!」
どどーん、と効果音が鳴るかのように、胸を張ってたやすく名乗ってしまうあたり、親も頭が痛いだろうと思う。
「ちょっと目を離したうちに、父上が迷子になってしまった。
お前知らんか?」
それは同じことを父が思っていることだろうと、咲は心の中で突っ込んだ。
「夜一サン!」
また幼い声が増え、咲は頭を抱えたくなる。
振り返ると夜一と同じ年頃の金髪の少年が走ってきた。
「なんじゃ喜助、そなたも来ていたのか」
「うん、お使い。
それより……この人は?」
少し距離をおいた表情を咲に向ける彼は、常識人らしいと少しほっとし、数歩離れる。
「知らん」
「知らない人と気安く話しちゃだめだって、この前もお父上に言われていたでしょうが」
「迷子になるような父上に言われたくないわ」
「あんたが迷子だあんたが!」
少年がしっかり突っ込んでくれている。
親しいのだろう。
ということは、この子金髪の子もそれなりの地位のある家の子どもに違いない。
「お知り合いの方に出会えたようですし、私はこれで失礼致します」
頭を下げたところ、ぐいっと袖をひかれ、膝をつかされる。
目の前には木から降りてきたらしい夜一が目をきらきらさせて咲を見つめていた。
「お前気に入った!
歳の割に霊圧は高いし筋肉の付きものよい。
よく鍛錬を積んでいる証拠だ。
その上足音も立たてないとは優秀。
わしの付き人にしてやっても構わん。
そうしたら知らない人ではないぞ!」
純真な瞳に見つめられ、咲は言葉に詰まった。
思わず振り返り、喜助と呼ばれた少年を見る。
「夜一サン、お困りですよ。
さぁ深夜様のところに戻りましょう」
「嫌じゃ!
どこかに勝手にいきおって!
迷子の世話などしてられんわ!」
ふん、と鼻を鳴らすが、およそ彼女が勝手にはぐれたであろうことは想像がつく。
よく見れば困り顔の少年の手には、「至急」と書かれた封筒が握られていた。
そこで咲はひとつ提案する。
「先ほど会議で隊長格が招集されました。
四楓院隊長もそちらに行かれていることでしょう。
終わるまでの間、二番隊に行かれるか、うちの隊で預かるかならば可能ですが、いかがいたしましょうか」
少年はしばらく咲の目を見つめた後、うなずいた。
「何番隊の方ですか?」
「六番隊です。
朽木蒼純副隊長と響河殿も執務室に在室しております」
それはしっかり者の少年に、朽木という質実共に兼ね備えた安心材料を与えるための発言だ。
「蒼純と響河がおるのか?
お前は2人の部下なのか?」
先に反応したのは夜一の方だった。
咲は笑顔で肯定する。
優しい蒼純と響河のことだ、同じく五大貴族の四楓院家の愛娘に好かれているに違いない。
そのやり取りに喜助も納得したらしい。
「では六番隊の方でお願いできますか?
ボクもこれを届けたらすぐに向かいます」
「分かりました。
六番隊舎の場所はご存知ですか?」
「はい」
「では貴方が来られたら取り次げるようにしておきます。
私は卯ノ花咲と申します」
「浦原喜助です」
少年は少女の肩に手を置いて、言い聞かせる。
「いいですか、夜一さん。
卯ノ花さんの言うことをよく聞くんですよ」
「分かっておる!」
((絶対に分かっていない))
少年と咲が心の中で同時に突っ込んだことなど、自信満々の笑顔を浮かべる夜一は知る由もなかった。
