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「おやぁ、これは!
白哉くんじゃないかい」
四番隊舎の入口で不意にかけられた声に、白哉は肩をびくつかせ、睨むように振り返る。
それにつられるように咲も振り返った。
「・・・何か用でもあるのか」
視線の先には飄々とした笑みを浮かべる京楽。
「ずいぶんと懐かしいと思ってねぇ」
「昔はよくおんぶしていたものね」
小さく笑う咲の隣に京楽は並んで隊舎に入る。
「小さい頃の話であろう!」
顔を赤くして怒鳴る白哉などなんのその。
「怪我かぁ、それは痛むだろう。
大丈夫かい?」
わざと京楽が頭を撫でれば、された方は彼の手をパシリと払う。
「子ども扱いするなっ!」
「そんなところが面白いんだけどねぇ」
「はいはいそこまで!」
咲は短く二人の間を遮り、室内に向かって声をかけた。
「六番隊朽木白哉です、治療お願いします」
出てきた沢田がベッドを開け、白哉に服を脱ぐよう指示するから、咲と京楽は部屋を出た。
「まだまだかわいいねぇ」
「あまりいじめると嫌われるよ」
「そうだね、ああ見えてもう席官か。
時が過ぎるのも早いものだ」
赤子のころから白哉を知り、当時既に入隊していた2人にとっては懐かしい記憶だ。
当時隊長であった銀嶺は高齢を理由にその職を辞し、後を継いだ蒼純もしばらくして体調不良を理由に辞した。
元より優しすぎると言われた蒼純は、隠居してからはのびのびと暮らし身体も良くなってきたらしい。
現在は響河が隊長、咲が副隊長となり隊を取り仕切っている。
それだけ時間が過ぎたのだ。
下っ端だった自分達が、護廷を動かすまでに。
だが当時から進まない関係もまた、ここにある。
「卯ノ花副隊長、服が汚れていますよ」
口調だけは紳士気どりで京楽がそっと咲の腰を抱く。
咲はその手をパシリと払う。
「つれないねぇ。
君の手を払う仕草を白哉君が覚えちゃってるじゃないか」
「当然でしょう」
少しだけ振り返りつつも、咲は先を歩く。
その顔を見て京楽はおや、と眉をあげる。
「ちょっとストップ」
そして片手を頤にかけ、頬についた血をごしごしと羽織で拭う。
慌てて顔を背けようとしてもすぐに戻されてしまう。
「隊長羽織が汚れて」
「気にしなさんな。
好きな女の顔についている血を拭わぬ男がどこにいる。
……さぁ、これでよし」
ようやく解放された咲の頬は、擦られた方だけが赤い。
それでも、血で赤黒いよりはよっぽどましだと、京楽は満足げに笑った。
「馬鹿。
四六時中酒に酔っているんだから」
「こりゃまた手厳しいねぇ」
頭を掻いて見せれば、咲がくすりと笑った。
「でもありがとう。」
駆けていく背中。
それから無理に視線をはがすように、菅笠を深くかぶる。
「こちらこそ」
手に残る温もりを逃さぬよう、京楽はそっと手を閉じた。
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