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虚の大きな爪が隊士に襲いかかる。
それを見つけた漆黒の瞳が一瞬でその前に躍り出た。
「朽木十七席!」
庇われた隊士の悲鳴の先に、美しい黒髪と血しぶきが舞う。
急所はかろうじて外したが、抑えきれなかった虚の爪により太股に傷を負ったのだ。
流れる血を見なかったふりをして白哉は叫ぶ。
「騒ぐなッ!」
霊術院を出てまだ3年だが、自分には席が与えられている。
それだけ責任があるのだ。
(・・・応援が来るまで!)
歯を食いしばる。
背中に庇うのは新入隊士。
これだけの戦闘も初めてだろう。
足がズキズキと痛むが、それどころではない。
「逃げろ!」
2撃目が来ると分かると、そう叫んで部下達を逃がす。
「散れッ千本桜!!!」
部下が逃げたところで刀を開放する。
千の花弁で虚を包む。
(消えろッ!!!)
柄を大きくひく。
「ギャァァァァァァ!!!」
虚は断末魔を上げて倒れ伏した。
「さ、流石十七席!」
逃げた部下達が駆け寄ってくる。
白哉はほっと溜息をついて、その場に片膝をついた。
足の痛みはピークに達しているし、出血も多い。
「帰りましょう」
「私の背中に乗ってください」
「応援部隊もきっとすぐ・・・」
「誰ガ帰ルッテ・・・?」
次の瞬間、話していた部下が吹き飛ばされて倒れ伏した。
絶命したかもしれない。
白哉は目を見開いて振り返る。
「ウォォォォォォォ!!!!!」
その先には、血だらけになりながらも、雄たけびを上げ、立ちあがる虚がいた。
「十七席っ!!!」
悲鳴を上げる部下。
「さがれ!」
白哉は千本桜を握るが、それを開放する力はもう残ってはいない。
(そんなっ……)
目の前に大きく虚の爪が降り上げられる。
白哉の陶磁器のような肌に影を落とした。
「・・・ッ!!!!!!」
「ギャァァァァァ!!!!!!」
さっきまで影が落ちていた頬に、虚の血しぶきが降りかかる。
虚は真っ二つになって倒れ、灰になって風に消えていった。
「もうちょっと、だったな。」
降ってくる声を見れば、高い木の上に満月を背負うようにして立つ、白羽織。
金赤風花紗が首元を彩っている。
「いいえ、まだまだです」
その隣にも、同じく赤い金赤風花紗を身につけた黒い姿。
「伯父上!
咲っ!」
二つの影が木から飛び降り、白哉達の前に立った。
「響河隊長、卯ノ花副隊長と呼べ、と何度言えば・・・。」
響河が深いため息をついて見せる。
先ほど吹き飛ばされた部下の様子を、別の部下が確認している。
どうやら気を失っているだけらしい。
咲がそっと笑った。
「銀嶺隊長も同じようなことを良くおっしゃっていましたよ。
義父上と呼ぶな、隊長と呼べ、と。
全く、血は繋がっていないというのに」
白哉にしゃがんで背を向けた。
「お乗りください」
白哉の眉がピクリと動く。
「誰がお前に負ぶわれるかっ」
「ここにいるうち一番足が速いのは私です。
そしてきっと、一番静かに走れますよ。
他の者に負ぶわれて足に振動が伝わって痛んでもいいんですか?」
ぐうの音も出ない白哉を響河が抱え起こし、咲の背中に乗せた。
「咲おねえちゃんのおんぶは久しぶりだな?」
くすくすと隠しきれずに笑うから、白哉はムキになって彼を振り返り、足が痛んで咲の背中に力なく倒れる。
「・・・頼む」
咲は嬉しそうに笑って、白哉にだけ聞こえる声で懐かしい返事をした。
「はい・・・坊っちゃま」