斬魄刀異聞過去編
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「ひと思いにお願いします」
言っている意味が分かっているのかと首をかしげたくなる爽やかさに、獄寺は舌打ちをした。
浮竹の霊圧はかなり高い。
平均をはるかに上回り、悔しいことに獄寺も彼にはかなわない。
いずれは隊長になるだろうと言われているほどだ。
経験等を踏まえると総合的に格下となるが、傷だらけでそんな浮竹の相手をするのは無謀に近い。
「……いいのか。
誰かああいつを殺せば、てめぇは生きる」
「それまでに貴方を殺せば、死よりも苦しい先を生きることになる」
それは獄寺が殺す気で戦わなければ殺されるだろうことを浮竹が理解している事を示す。
「俺が反逆者にならないうちに」
鳶色の瞳が強く強く獄寺を睨む。
白くなるほど強く柄を掴む手が、彼の意志にそぐわずに動く。
「俺をーー殺してください」
鮮やかな太刀筋に、獄寺は飛びずさりながら舌打ちをする。
彼は本当に見事だ。
病躯とは思えぬ身の軽さ、力強さ、そして心の強さ。
技を使えばこっちの負けだと、獄寺は睨む。
浮竹の能力を使わせないためには、剣術だけで勝つのが一番であり、獄寺が浮竹よりも今勝る唯一の点である。
ただし、怪我がなければの話だ。
傷だらけの自分にできることなど高が知れている。
「獄寺十席……」
苦しげに名を呼んだ浮竹がむせ込んだ。
そしてその薄い唇から、真赤な血を吐いた。
思わず目を見開く。
「さぁ……早く……!」
すがりつくような目で見上げてくる。
彼は自分の霊圧をコントロールして病巣である肺への負担を減らしてきた。
血を吐くと言うことは、そのコントロールをやめたということなのだ。
「う、きた、け、てめぇ……」
その意志の強さと覚悟に、獄寺は無意識に唾を呑んだ。
自由の利かない腕は、その口から垂れる血を拭こうとはしない。
「俺は病に身体を犯されました。
何度も何度も、命を救われた。
この命であなたを殺したくはない」
獄寺は浮竹を睨みつけ、鋭く切り込む。
浮竹は細い腕でその一撃をしっかりと受け止めていた。
「……分かった。
てめぇの願い、叶えてやる」
噛み締める歯の隙間から唸る様に答える。
「ありがとうございます」
鳶色の瞳は悲しげに弧を描いた。
もともと遠距離系の斬魂刀を使ってはいるが、獄寺も元字塾屈指の剣の名手であり、その斬術に定評があった。
ただただ無心に刀を振り続ける。
相手の動きを読み、罠を仕掛け、斬る。
ピンと張りつめた空気の中、二人の3本の剣が打ちあう。
戦いながらも、二人は共通の敵と戦っているのだ。
命をかけて。
だがそれはそう長くは続かなかった。
そこには体力が足りず、バランスも取れていなかった。
それでも二人は賭けていた。
賭けるしかなかった。
浮竹にとっての親友であり、獄寺の後輩である京楽に、彼を殺させないためにも。
血飛沫が舞った。
獄寺の右肩が深く斬りつけられたのだ。
彼は刀を落とした。
斬られたせいで胸にしまっていた響河の居場所を表示する受信機が落ちたことなど、気に留める余裕はない。
両者言葉を発することなく、苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
「獄寺十席……」
浮竹が唸る様に名を呼ぶ。
「……馬鹿野郎ッ!!」
そして同じように唸る様に獄寺が返す。
しかし次の瞬間、目の前から浮竹が消え目を見開く。
「避けろ!!!!」
その声に振り返ると、高く飛び上がった浮竹が永倉と鍔迫り合いをする原田の背後から斬りかかるところだった。
門の上を見上げると、響河が嘲笑を浮かべて獄寺を見下ろしていた。
「お前にはもう刀は握れん。
死を待つだけだ。
殺す価値もない」
そして彼は浮竹達に目を移す。
獄寺は膝をつき、呆然と自分の腕から流れる血が作る血だまりを見つめた。
ふと隣に影が差した。
「……これはなんだ」
長い爪が、血だまりの中に光る受信機を拾い上げる。
村正だ。
それに気づいた獄寺は顔を青くした。
「まぁいい」
それをポケットにしまう。
「返、せッ!!!」
そのしぼり出すような声など聞こえなかったかのように、村正は姿を消した。
突然の浅い痛みに藤堂ははっと右手を見た。
一瞬黒い影が過ぎ去ったのが見えたが、深い冷気の中でもうわからない。
そこここで霊圧が高まっており、京楽の小さく制御された霊圧を見分けることは困難だ。
「破道の四 白雷」
一直線に伸びてきた電撃。
その方向へと刀を振り動かそうとして、藤堂は目を見開く。
右腕から下が、全く言うことを聞かないのだ。
白雷が手首を直撃し、その衝撃で右手から斬魂刀である上総介兼重が落ちて転がる。
自由の利かぬ身体が、落ちた上総介兼重を素早く拾おうと身を屈める。
藤堂は目を閉じた。
左手が刀に伸びる。
掴むまで、あと少し。
「……今だ」
肉を切り骨を砕く鈍い音が、あたりに響いた。
藤堂が願った通り、刀を一刻も早く拾うために無防備になった背中を一突きにされ、その刀は彼ごと地面に突き刺されていた。
京楽が 魄睡 を貫いたのだ。
彼は刀を抜くこともなく、刀から手を離すことなく、血で赤く染まる頬を拭うことなく、斬り伏せた藤堂の隣で膝をついたまま、ただじっとしていた。
髪からも血が滴り落ちている。
そこだけまるで時が止まったようだが、血だけが流れ二人の周りに血だまりが広がっていた。
「……へっ。
強く、なったじゃねぇか」
藤堂が虫の息で笑う。
「殺されて文句言うつもりはねぇ。
何十人も……殺したし。
だが……お前は、いい腕だ」
穏やかな藤堂の顔が凍りついたような京楽を微かに見上げた。
「みんなに、伝えて、くれ。
ありがと……って」
京楽はこくりと頷いた。
「もう、いい、ぜ……。
……抜け」
京楽はすぐに刀を抜いた。
闇夜に血が弧を描いた。
藤堂が、死んだ。
藤堂が死んだのを、獄寺は感じた。
その方を見れば、足元に伏した藤堂を眺め、京楽が立ちつくしていた。
(強ぇ……)
彼も痛手を負っているだろうが、それでも自分の上位席官を殺す力を持っている。
浮竹とともに、将来有望な若者なのだ。
恐ろしいほどに。
(片を、つけねぇと)
受信機を奪われた。
それが自分たちの居場所を知るためのものだということは、すぐに響河に知られるだろう。
そうなればこれからは使えなくなる可能性は高く、また逆に罠に掛けられる可能性もある。
獄寺は震える左手で落ちた斬魂刀を拾った。
「果てろ……煙炎墓無」
その小さな声に、誰も気づくことはない。
膝をつき俯いたままの獄寺の左手にを取り巻く赤い渦状の光にも、誰も気がつかない。
ゆっくりと見上げた先では今にも原田を斬り殺そうと、浮竹が間合いを詰めようとしていた。
それを嘲笑うように眺める響河に向けて、最後の力を振り絞り、刀を突き出す。
「……終わりだ。
赤竜巻の矢」
空が赤く染まるほどの巨大な爆発が起き、精霊挺中に爆音が響き渡った。
鮫島が駆け付けた時、あたりはまだ熱気に包まれていた。
広大な敷地を有していた塾は、最早跡形もない。
「……獄寺の赤竜巻の矢か?」
その爆発規模の大きさに、信じられないと鮫島は目を見開く。
彼の爆発は、自分の知る限りここまでの威力はなかったはずだ、と。
「違う、あ奴ではない」
後ろから聞こえてきた声に振り返る。
「……先生」
元柳斎が雀部を連れて立っていた。
「生存者を捜せ。
自害は許さぬ!!!」
杖を地面にたたきつけ、かっと目を見開く元柳斎に、一番隊隊士が散った。
「生存者……」
気配を探ると、確かに弱い霊圧が感じられる。
山田副隊長率いる四番隊も駆け付けた。
「原田四席発見!
息があります!!!」
比較的被害が少なかったであろうあたりの塀の陰に倒れていたらしい。
だが、元柳斎が思っていた人物は彼ではなかったらしい。
「探せ。
……あやつもまだまだ生きておるはずじゃ」
雀部は一礼してその場から消えた。
言っている意味が分かっているのかと首をかしげたくなる爽やかさに、獄寺は舌打ちをした。
浮竹の霊圧はかなり高い。
平均をはるかに上回り、悔しいことに獄寺も彼にはかなわない。
いずれは隊長になるだろうと言われているほどだ。
経験等を踏まえると総合的に格下となるが、傷だらけでそんな浮竹の相手をするのは無謀に近い。
「……いいのか。
誰かああいつを殺せば、てめぇは生きる」
「それまでに貴方を殺せば、死よりも苦しい先を生きることになる」
それは獄寺が殺す気で戦わなければ殺されるだろうことを浮竹が理解している事を示す。
「俺が反逆者にならないうちに」
鳶色の瞳が強く強く獄寺を睨む。
白くなるほど強く柄を掴む手が、彼の意志にそぐわずに動く。
「俺をーー殺してください」
鮮やかな太刀筋に、獄寺は飛びずさりながら舌打ちをする。
彼は本当に見事だ。
病躯とは思えぬ身の軽さ、力強さ、そして心の強さ。
技を使えばこっちの負けだと、獄寺は睨む。
浮竹の能力を使わせないためには、剣術だけで勝つのが一番であり、獄寺が浮竹よりも今勝る唯一の点である。
ただし、怪我がなければの話だ。
傷だらけの自分にできることなど高が知れている。
「獄寺十席……」
苦しげに名を呼んだ浮竹がむせ込んだ。
そしてその薄い唇から、真赤な血を吐いた。
思わず目を見開く。
「さぁ……早く……!」
すがりつくような目で見上げてくる。
彼は自分の霊圧をコントロールして病巣である肺への負担を減らしてきた。
血を吐くと言うことは、そのコントロールをやめたということなのだ。
「う、きた、け、てめぇ……」
その意志の強さと覚悟に、獄寺は無意識に唾を呑んだ。
自由の利かない腕は、その口から垂れる血を拭こうとはしない。
「俺は病に身体を犯されました。
何度も何度も、命を救われた。
この命であなたを殺したくはない」
獄寺は浮竹を睨みつけ、鋭く切り込む。
浮竹は細い腕でその一撃をしっかりと受け止めていた。
「……分かった。
てめぇの願い、叶えてやる」
噛み締める歯の隙間から唸る様に答える。
「ありがとうございます」
鳶色の瞳は悲しげに弧を描いた。
もともと遠距離系の斬魂刀を使ってはいるが、獄寺も元字塾屈指の剣の名手であり、その斬術に定評があった。
ただただ無心に刀を振り続ける。
相手の動きを読み、罠を仕掛け、斬る。
ピンと張りつめた空気の中、二人の3本の剣が打ちあう。
戦いながらも、二人は共通の敵と戦っているのだ。
命をかけて。
だがそれはそう長くは続かなかった。
そこには体力が足りず、バランスも取れていなかった。
それでも二人は賭けていた。
賭けるしかなかった。
浮竹にとっての親友であり、獄寺の後輩である京楽に、彼を殺させないためにも。
血飛沫が舞った。
獄寺の右肩が深く斬りつけられたのだ。
彼は刀を落とした。
斬られたせいで胸にしまっていた響河の居場所を表示する受信機が落ちたことなど、気に留める余裕はない。
両者言葉を発することなく、苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
「獄寺十席……」
浮竹が唸る様に名を呼ぶ。
「……馬鹿野郎ッ!!」
そして同じように唸る様に獄寺が返す。
しかし次の瞬間、目の前から浮竹が消え目を見開く。
「避けろ!!!!」
その声に振り返ると、高く飛び上がった浮竹が永倉と鍔迫り合いをする原田の背後から斬りかかるところだった。
門の上を見上げると、響河が嘲笑を浮かべて獄寺を見下ろしていた。
「お前にはもう刀は握れん。
死を待つだけだ。
殺す価値もない」
そして彼は浮竹達に目を移す。
獄寺は膝をつき、呆然と自分の腕から流れる血が作る血だまりを見つめた。
ふと隣に影が差した。
「……これはなんだ」
長い爪が、血だまりの中に光る受信機を拾い上げる。
村正だ。
それに気づいた獄寺は顔を青くした。
「まぁいい」
それをポケットにしまう。
「返、せッ!!!」
そのしぼり出すような声など聞こえなかったかのように、村正は姿を消した。
突然の浅い痛みに藤堂ははっと右手を見た。
一瞬黒い影が過ぎ去ったのが見えたが、深い冷気の中でもうわからない。
そこここで霊圧が高まっており、京楽の小さく制御された霊圧を見分けることは困難だ。
「破道の四 白雷」
一直線に伸びてきた電撃。
その方向へと刀を振り動かそうとして、藤堂は目を見開く。
右腕から下が、全く言うことを聞かないのだ。
白雷が手首を直撃し、その衝撃で右手から斬魂刀である上総介兼重が落ちて転がる。
自由の利かぬ身体が、落ちた上総介兼重を素早く拾おうと身を屈める。
藤堂は目を閉じた。
左手が刀に伸びる。
掴むまで、あと少し。
「……今だ」
肉を切り骨を砕く鈍い音が、あたりに響いた。
藤堂が願った通り、刀を一刻も早く拾うために無防備になった背中を一突きにされ、その刀は彼ごと地面に突き刺されていた。
京楽が
彼は刀を抜くこともなく、刀から手を離すことなく、血で赤く染まる頬を拭うことなく、斬り伏せた藤堂の隣で膝をついたまま、ただじっとしていた。
髪からも血が滴り落ちている。
そこだけまるで時が止まったようだが、血だけが流れ二人の周りに血だまりが広がっていた。
「……へっ。
強く、なったじゃねぇか」
藤堂が虫の息で笑う。
「殺されて文句言うつもりはねぇ。
何十人も……殺したし。
だが……お前は、いい腕だ」
穏やかな藤堂の顔が凍りついたような京楽を微かに見上げた。
「みんなに、伝えて、くれ。
ありがと……って」
京楽はこくりと頷いた。
「もう、いい、ぜ……。
……抜け」
京楽はすぐに刀を抜いた。
闇夜に血が弧を描いた。
藤堂が、死んだ。
藤堂が死んだのを、獄寺は感じた。
その方を見れば、足元に伏した藤堂を眺め、京楽が立ちつくしていた。
(強ぇ……)
彼も痛手を負っているだろうが、それでも自分の上位席官を殺す力を持っている。
浮竹とともに、将来有望な若者なのだ。
恐ろしいほどに。
(片を、つけねぇと)
受信機を奪われた。
それが自分たちの居場所を知るためのものだということは、すぐに響河に知られるだろう。
そうなればこれからは使えなくなる可能性は高く、また逆に罠に掛けられる可能性もある。
獄寺は震える左手で落ちた斬魂刀を拾った。
「果てろ……煙炎墓無」
その小さな声に、誰も気づくことはない。
膝をつき俯いたままの獄寺の左手にを取り巻く赤い渦状の光にも、誰も気がつかない。
ゆっくりと見上げた先では今にも原田を斬り殺そうと、浮竹が間合いを詰めようとしていた。
それを嘲笑うように眺める響河に向けて、最後の力を振り絞り、刀を突き出す。
「……終わりだ。
赤竜巻の矢」
空が赤く染まるほどの巨大な爆発が起き、精霊挺中に爆音が響き渡った。
鮫島が駆け付けた時、あたりはまだ熱気に包まれていた。
広大な敷地を有していた塾は、最早跡形もない。
「……獄寺の赤竜巻の矢か?」
その爆発規模の大きさに、信じられないと鮫島は目を見開く。
彼の爆発は、自分の知る限りここまでの威力はなかったはずだ、と。
「違う、あ奴ではない」
後ろから聞こえてきた声に振り返る。
「……先生」
元柳斎が雀部を連れて立っていた。
「生存者を捜せ。
自害は許さぬ!!!」
杖を地面にたたきつけ、かっと目を見開く元柳斎に、一番隊隊士が散った。
「生存者……」
気配を探ると、確かに弱い霊圧が感じられる。
山田副隊長率いる四番隊も駆け付けた。
「原田四席発見!
息があります!!!」
比較的被害が少なかったであろうあたりの塀の陰に倒れていたらしい。
だが、元柳斎が思っていた人物は彼ではなかったらしい。
「探せ。
……あやつもまだまだ生きておるはずじゃ」
雀部は一礼してその場から消えた。
