二人を取り巻く包囲網がジリジリと狭まる中、亜莉亜は必死に状況を理解しようとしていた。
…普通であれば、零番隊の隊長格である私たちを知らない者はいないはず。
ならば何だ？
そう思ったとき、脳裏に龍の言葉が浮かんだ。
"そんな事を言ってる人ほど、別の世界に飛ばされちゃったりするんですよーだ！"
まさか…ここが異世界だというのか？
馬鹿らしい考えだとは思うが、それ以外に今の状況を説明できる言葉は見つからない。
『チッ…仕方ない。拓斗、一旦ここから逃げるぞ！』
拓「了解っ！」
亜莉亜は拓斗と背中合わせになると、死神たちをまっすぐに見つめた。
『零式、白伏ッ！！』
辺りがまばゆい光に包まれる。
しかし、それはすぐに消え、倒れた死神たちだけが残った。
拓「お見事。」
ニヤリと笑う拓斗。
『当然だ。…とりあえず、ここを離れるぞ。』
拓「ここが異世界なら、俺たちは有害な侵入者でしかないだろうしね。」
『そう信じたくはないがな。』
亜莉亜は小さなため息をついた。

『とりあえずは状況を見るべき…だが。』
拓「なんか、大変なことになってるね。」
瀞霊廷全体の様子を見るため、双極の丘に登った二人。
だが、その表情は引きつっている。
『たかが侵入者二人で、こんなに大騒ぎすることあるか？』
拓「んー…多分、さっきの白伏のせいだと思う。あれができる程の実力の持ち主が侵入したなら、そりゃ大騒ぎになるでしょ。」
けたたましく鳴り響く警報と、慌ただしく動き回る死神たち。
もしかすると、以前黒崎一護ら旅禍が侵入したとき以上に、警戒されているかもしれない…。
『全く…私たちにどうしろと言うんだ』
頭を抱える亜莉亜。
拓「もしここが本当に異世界なら、味方はゼロ。それなら、向こうに帰るための策が見つかるまでは、とにかく身を守るしか…ないよね。」
最後の一言だけを、亜莉亜に向けてではなく、背後に向けて放った拓斗。