拓「多分、この辺だったと思う。」
拓斗はそう言って辺りをぐるりと見回した。
眞『そうか…特に変わった事は見当たらないな…』
拓「やっぱり…？」
がっくりと肩を落とす。
拓「そう簡単に手がかりが見つかるわけないよね。…じゃ、どうしよっか。もう帰る？それとも、どっか寄り道しちゃう？」
拓斗はいたずらっ子のようににんまりと笑った。
眞『あたしはどっちでもいいよ？どうする？近くの甘味行く？』
拓「ん、いいね。俺も、こっちの世界を少しは詳しく見てみたいし。」
眞『そうか、なら案内するよ。流魂街なんだけどね、めっちゃ美味いんだ。』
そう言った眞那は、ふわっと笑ってみせた。
拓「！！」
拓斗は一瞬目を見開いてから、優しく微笑んだ。
眞『どうした？行くぞ、ついてきて！』
そう言って眞那は瞬歩で甘味処に向かった。
拓「全く…行動に移すのが早いっていうか、何ていうか…」
一人残された拓斗は肩をすくめた。
拓「だけど、何か似てるんだよね。」
さっきの笑い方――顔も性格も声も、亜莉亜とは全く違うはずなのに、亜莉亜が時折見せてくれる微笑みにどこか重なって見えた。
拓「蒼峰眞那…嫌いじゃないかも。」
拓斗はフッと笑うと、すぐに眞那の後を追った。

眞『ここがあたしの一番のお気に入りのところなんだ。実はねここ、あたしとあたしの兄しか知らないんだ。』
甘味所に到着し、眞那は得意気に言った。
拓「へぇ…。いいの？俺なんかに教えちゃって。」
拓斗は眞那をちらりと見た。
眞『もちろん、内緒だよ。まぁ、気分気分！流魂街には他にも美味しいところあるし、皆とは別のとこと行ってるからさ。』
拓「そっか。ありがとうね。…じゃ、注文、する？」
適当な席に座ってから、拓斗は言った。
眞『だね。あたしはあんみつ。拓斗は何にする？』
拓「んー…俺もあんみつにしよっかな。」
眞那『うん、分かった。すいませーん、あんみつ２つお願いしまーす！』
「へいへい、あんみつ２つね。」
店の奥から中年の男性が顔を覗かせ、にっこりと笑った。