Happy Valentine ! (2016)
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何の変わりもない毎日。
それが、一番なんだ──。
拓斗は執務室に置かれた自分の机を見て、沈んだ肩をさらに落とすはめになった。
机だけじゃない。
椅子の上、ロッカーの中、道端でも何度も受け取らされたし、さらには我妻邸の玄関、あと、俺の私室にまで侵入したのは一体何?
むしろその執念を尊敬したいほど。
恐ろしいほどの数のアレを目の前にして、ため息が出てしまうのは仕方ないよね。
そんなことをしているうちに、ほらまた。
「あの、我妻副隊長……!」
背中にかけられた可愛らしい声。
嬉しいだろうって?いやいや、そういう問題じゃない。
でも、無視ってのはさすがに、ね。
「ん?どうしたの?」
作り笑い。大抵の女の子は気づかない。
せめて、察してくれさえすればなぁ。
もう少し、気遣ってあげられるのかもしれないけど。
「こっ、これ、受け取って、ください!」
顔を真っ赤にして、差し出したモノ。
綺麗に包装されて、鮮やかな朱色のリボンを纏って。
ごめんね、君の大切な役目は果たされません。
俺が受け取るのは、その器だけ。
「ん、ありがとね」
ソレを片手でそっと受け取って、背中を見送って、山の上に置く。
「うーん」
この山にどれだけの価値があるのか分からない。
目が痛くなるほどの「色」が溢れ出てるだけ。
その一つひとつが何を伝えたがっているかなんて、考えるほどもないんだろうけど。
でも、それが何だって言うんだ。
そういえば、さっきの女の子もこの惨状を見ただろう。
それでもアレを渡さなければいけないんだね。
女の子ってのはよくわからない。
別に、アレ自体が嫌いなわけじゃないんだ。
甘いものは好きだし、貰うと、嬉しい。
じゃあ何が問題かって言うと、この日だけは、アレはアレの形を被った別のものだってこと。
その重さに、俺は耐えきれない。
物理的にも、これはどうしようもない。
とりあえず何とか席についたけど、目の前の山のせいでどうも落ち着かない。
右の二番目の引き出しに手をかける。
ここに何が入っているでしょうか?
正解は、アレです。
でもこれは、視界を圧迫するカラフルな山とは違う。
この前現世に行ったときに、コンビニっていうとこで買ったもの。
どうやら、現世では有名なヤツらしいんだけど、これがまた美味しい。
ふわりと溶けて、やさしい甘さが広がって、心を落ち着かせてくれる。
変なものが混ざってる心配もないし、なんて素晴らしいんだろ。
よし、だいぶ落ち着いた。
けど、問題は山積みだ。そう、見ての通り。
これをどうにかしなければ、俺は仕事ができないんだよ。
作業スペースなんて皆無だし。
「早いんだな、今日は」
そう、だって、これが予想できたから、早く出てこなきゃ、仕事にならな……
「亜莉亜!?」
びっくりして振り返る。
亜莉亜は俺の机を見て、目を丸くした。
「また今年もすごい量だな……」
「そうなんだよ、これをどうしろって言うのか、全く」
「じゃあ、余計なお世話になってしまうかもしれないな」
何が?
首をかしげる俺の前に、花の飾りのついた紙袋が差し出される。
「えっ、これ……」
「いらないなら、別に、いいんだぞ?」
いらないなんて、そんなの、ありえない。
「もちろん、頂くよ」
大切に、大切に、紙袋を受け取る。
「?」
思ったよりも袋は重たく、膨らんでいる。
あぁ、なるほど。
そっけないふりして、実はすごく頑張って作ってくれたのかも。
そう考えると、頬が緩んでしまうのは仕方ないでしょ。
「亜莉亜のそーゆーとこ、好きだなぁ」
「……?何か言ったか?」
俺は首をふる。
「ううん、ありがとね。嬉しいよ」
「なら良かった。……じゃあ私は、一番隊に用事があるから、少し出る」
「りょーかい」
亜莉亜がいなくなってから、、俺は彼女にもらった袋を開け、一粒、口に入れた。
甘くて、ほろ苦くて、優しくて、温かい、それは、チョコレート。
それが、一番なんだ──。
拓斗は執務室に置かれた自分の机を見て、沈んだ肩をさらに落とすはめになった。
机だけじゃない。
椅子の上、ロッカーの中、道端でも何度も受け取らされたし、さらには我妻邸の玄関、あと、俺の私室にまで侵入したのは一体何?
むしろその執念を尊敬したいほど。
恐ろしいほどの数のアレを目の前にして、ため息が出てしまうのは仕方ないよね。
そんなことをしているうちに、ほらまた。
「あの、我妻副隊長……!」
背中にかけられた可愛らしい声。
嬉しいだろうって?いやいや、そういう問題じゃない。
でも、無視ってのはさすがに、ね。
「ん?どうしたの?」
作り笑い。大抵の女の子は気づかない。
せめて、察してくれさえすればなぁ。
もう少し、気遣ってあげられるのかもしれないけど。
「こっ、これ、受け取って、ください!」
顔を真っ赤にして、差し出したモノ。
綺麗に包装されて、鮮やかな朱色のリボンを纏って。
ごめんね、君の大切な役目は果たされません。
俺が受け取るのは、その器だけ。
「ん、ありがとね」
ソレを片手でそっと受け取って、背中を見送って、山の上に置く。
「うーん」
この山にどれだけの価値があるのか分からない。
目が痛くなるほどの「色」が溢れ出てるだけ。
その一つひとつが何を伝えたがっているかなんて、考えるほどもないんだろうけど。
でも、それが何だって言うんだ。
そういえば、さっきの女の子もこの惨状を見ただろう。
それでもアレを渡さなければいけないんだね。
女の子ってのはよくわからない。
別に、アレ自体が嫌いなわけじゃないんだ。
甘いものは好きだし、貰うと、嬉しい。
じゃあ何が問題かって言うと、この日だけは、アレはアレの形を被った別のものだってこと。
その重さに、俺は耐えきれない。
物理的にも、これはどうしようもない。
とりあえず何とか席についたけど、目の前の山のせいでどうも落ち着かない。
右の二番目の引き出しに手をかける。
ここに何が入っているでしょうか?
正解は、アレです。
でもこれは、視界を圧迫するカラフルな山とは違う。
この前現世に行ったときに、コンビニっていうとこで買ったもの。
どうやら、現世では有名なヤツらしいんだけど、これがまた美味しい。
ふわりと溶けて、やさしい甘さが広がって、心を落ち着かせてくれる。
変なものが混ざってる心配もないし、なんて素晴らしいんだろ。
よし、だいぶ落ち着いた。
けど、問題は山積みだ。そう、見ての通り。
これをどうにかしなければ、俺は仕事ができないんだよ。
作業スペースなんて皆無だし。
「早いんだな、今日は」
そう、だって、これが予想できたから、早く出てこなきゃ、仕事にならな……
「亜莉亜!?」
びっくりして振り返る。
亜莉亜は俺の机を見て、目を丸くした。
「また今年もすごい量だな……」
「そうなんだよ、これをどうしろって言うのか、全く」
「じゃあ、余計なお世話になってしまうかもしれないな」
何が?
首をかしげる俺の前に、花の飾りのついた紙袋が差し出される。
「えっ、これ……」
「いらないなら、別に、いいんだぞ?」
いらないなんて、そんなの、ありえない。
「もちろん、頂くよ」
大切に、大切に、紙袋を受け取る。
「?」
思ったよりも袋は重たく、膨らんでいる。
あぁ、なるほど。
そっけないふりして、実はすごく頑張って作ってくれたのかも。
そう考えると、頬が緩んでしまうのは仕方ないでしょ。
「亜莉亜のそーゆーとこ、好きだなぁ」
「……?何か言ったか?」
俺は首をふる。
「ううん、ありがとね。嬉しいよ」
「なら良かった。……じゃあ私は、一番隊に用事があるから、少し出る」
「りょーかい」
亜莉亜がいなくなってから、、俺は彼女にもらった袋を開け、一粒、口に入れた。
甘くて、ほろ苦くて、優しくて、温かい、それは、チョコレート。
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