前回はたまたま運が悪かっただけ。
そう思って、自分を信じて再チャレンジ。
今日は執務室に二人っきり。
日中だから亜莉亜は執務に集中してるけど、環境的には申し分ないはず。
今日こそ亜莉亜をドキドキさせるんだから。
気合を入れ直す。
もう今回は雑誌の手順に従ったりなんかしない。
無駄な時間は使わないんだ──
「亜莉亜はさ、俺のこと、す、す……すすす」
直球勝負にしすぎて辛い、恥ずかしい、どうしよう……
亜莉亜はきょとんとした顔でこちらを見ている。
「す、──ッ」
「何なに！？今日すき焼き行くの！？副隊長のおごり！？俺も！俺も連れてってよー！食べたい食べたい……んがッ」
龍が執務室に飛び込んできた。
興奮し、早口で喋る龍を反射的に殴り、説き伏せる。
この野郎……
「おい！痛いじゃねーか！副隊長のアホ、馬鹿、出べそー！」
「今の言葉、そのまま君に返してあげるよ。アホ馬鹿出べそ四席」
「っくぅ……」
鉄拳の痛みが取れないのか、顔をしかめた龍が非難の目を向ける。
「そんなにうるうるされたって、俺は許してやらないからねー」
一見笑顔、のように見える、凍りついた真顔に龍はびくりとし、拓斗の腰にある雷神を見て、一目散に逃げ出した。
「はぁ……」
また失敗。
落ち込む俺を見て、何を勘違いしたのか亜莉亜は言う。
『私がおごるから、そんなに落ち込むなよ』と。
そうじゃないんだってば……
拓斗は完全に肩を落とし、脱力する。
あぁ、もう。
また失敗だった。

結局その日は零番隊のいつものメンバーで、すき焼きを食べに行きました。
勿論、俺のおごりで……。
龍が幸せそうで、心から殴りたくなった。
けど、亜莉亜が笑っていたから、ちょっとだけ良かったな、なんて。
たまには、こんな日があってもいいよね。
──いや、俺のイメージではこんな筈はなかったのに。