冷たい空気に晒され氷のように冷えてしまった指先に、ふうっと温かい息を吹き掛けてみる。
吐いた息はすぐに白い蒸気と化して、もやもやと空に散っていった。
あぁ、冬だなと心の中では呟き、おもむろに空を見上げた。
純白で彩られた地に対し、冬らしい澄みきった空には寸分の曇りもない青が広がっていた。


「あ、おはよう、亜莉亜。」
『あぁ、おはよう。…今日は随分と冷え込んでいるな。』
ドサッ
亜莉亜はいつもとは違い、応接用のソファーに腰を下ろした。
それを見て、拓斗は亜莉亜の座った向かい側のソファーに座り、亜莉亜を正面から見つめにこりと笑った。
「ねぇ、亜莉亜。今日は何日でしょーか？」
『は…？』
何らかの意図が見え隠れする拓斗の質問に、亜莉亜は首をかしげた。
「だから、今日は何月何日？」
『…12月、25日。』
「正解！じゃ、今日が何の日かは知ってる？」
楽しげに拓斗は尋ねた。
『さあ？…お前一体何が言いたいんだ？焦らすのもいい加減に――』
突然亜莉亜は言葉を切り、目を見開いた。
「メリークリスマス。」
拓斗の手の中には、リボンで綺麗に飾られた小箱がある。
それを差し出され、亜莉亜は困ったように拓斗の表情を伺った。
『拓斗、これは…？』
「君にプレゼント。現世では今日を"クリスマス"って言って大切な人と一緒に過ごす日なんだって。」
拓斗は優しく温かい声でゆっくりと説明した。
『しかし…なぜ、それを…？』
亜莉亜の視線が拓斗の手に置かれた小箱に向けられる。
「クリスマスは、簡単に言うと《愛の日》でもあるから。俺の気持ち、受け取ってくれるよね？」
拓斗がそう言えば、亜莉亜は表情を弛め、小箱に手を伸ばした。
拓斗は亜莉亜の動作に合わせて小箱をしっかりと亜莉亜に握らせ、そして微笑んだ。
「開けてみてよ。」
亜莉亜は戸惑いながらも箱のリボンを解き、包装紙を丁寧に開いた。
中から出てきた真っ白な箱を開くと…
『！！』