零番隊第三席・末倉杏樹の場合

護廷十三隊総隊長と同等かそれ以上の実力を持ちながら、可愛らしいルックスで実は人気者な杏樹。
しかしそんな彼女にはある悩みがあった。

「はぁ、私も彼氏欲しいなぁ…。」
誰もいない席官用執務室。
口から漏れた嘆き。
自分で言うのもなんだけど、この状況かなりむなしいわ。
…私って、結構五月蝿いし、おしゃれとかも全然しないし、それでもって…可愛くない。
まさに、隊長とは正反対。
隊長は静かで落ち着いてるし、私服は何着てもおしゃれで似合ってるし、第一美人だし…側には副隊長がいるし。
私の側には誰もいない。
実際、恋人が欲しい訳じゃない。
私が欲しいのは、いつも側にいて私を愛してくれる人。
要するに、隊長と副隊長みたいな関係に憧れているのだ。
でも、こんな私の側にいたい人なんて、絶対にいるわけない。
…どうしたら可愛い女の子になれるんだろう。
《美しい女性》にはなれそうにないから。

そんなことを考えていたとき、執務室のドアがかチャリと開いた。
「あれ？杏樹一人だけ？」
「副隊長…！今日は非番なんじゃなかったんですか？」
「んー…まぁ、そうなんだけど…家にいても暇だから。」
「そう、でしたか。」
副隊長を見ると隊長を思い出して、隊長を思い出すと可愛くない私を思い出して…
切ない。
そんな私を見越してか、副隊長は言った。
「杏樹、暗い顔してるけど…何か悩み事？俺でよければ話聞くけど。」
優しく言われて、ついに私は覚悟を決めた。
「副隊長、可愛くなるためにはどうしたら良いんですか！」
「はい？」

私が話をしている間、副隊長は頷きながらしっかりと話を聞いてくれた。
笑われると思ってたから、少し驚いた。
「一体、私はどうしたら…？」
「杏樹、君は、君のままで良いと思うよ。」
「私、の、ままで？」
意味が分からない。
このままじゃ、何も変わらないじゃない。
「そのままの君を好きな人はいっぱいいるって事。」
「好き…？私を？」
「そう。君を。」
「…お世辞ですか？」
私が疑うと、副隊長はクスクスと笑った。
「もっとよく回りをみてごらん。案外近くに探し物はあるはずだよ。」
「？」
私は首をかしげた。