零番隊第五席・桜ノ宮怜の場合

溺愛するただ一人の妹・魅月に対して以外では、常にクールでポーカーフェイスを装う怜。
そんな彼を慕う女性は後を絶たず、既に沢山の女性がその思いを告げ、一瞬にして散ってきた。
今日もまた、懲りずに女性たちが怜を捕まえる――。

「あの、桜ノ宮五席、少しよろしいでしょうか？」
「…」
嫌とは言えずに、のこのこと引っ張り出される怜。
彼に拒否権なんてものは元より用意されていないのだ。
「実は私は、桜ノ宮五席のことが――」
人気の無い場所で静かに語る女性。
「好きなんです！」
「すまないが、俺は」
断ろうとする怜。
これが彼女らのゲームの始まりである。
「どうしても、ですかぁ？」
上目遣いで怜に抱きつき、目をうるうると…
最高級（だと思う）の可愛さをアピールする。
「私は、桜ノ宮五席が…っ」
「すまないが、俺は貴女と付き合う気は無い！」
女性の言葉をぴしゃりとはね除ける怜。
何事もなかったかのように帰っていく怜を見送ったあと、女性は建物の影に向かって声をかけた。
「やっぱ私でも駄目だったわ。これはＫ．Ｏ．ね。」
「あんたならいけると思ったに…残念。」
女性の声に答えるように数人の女性が現れた。
「あぁ、今日こそ怜様のポーカーフェイスを崩せると思ったのに…」
「明日はあんたが行く？」
「え？私？もう5回も告白したよ？」
「いいからいいから。明後日は私が行くわ。」
「仕方ないわね。明日こそ、あの表情を崩して見せるんだからーっ！」
女性は真っ青な空に向かって叫んだ。

そう、これは女性たちの一種の遊びなのだ。
いくら怜を好きでも、怜が見ているのは魅月だけだから。
せめて怜の新しい表情を発掘しようと…
さぁ、明日の怜の運命はいかに！？