旅館は現世の喧騒には似合わないくらい、落ち着いた和風の内装をしていた。
あまり大きくはなかったが、逆に貸し切りのようで、気が休まって良い。
ただ、一組だけ先客がいるようだ。
まだ会ってはいないがな。

今日は既に、たくさんのことをした。
《零番隊メンバー》で現世用の服を買いに行き、着替えた。（護廷の奴らとは宴会だけで十分だろ？）
ちなみに私は、ブラウスと長いスカートに着替えさせられた。
これは杏樹の見立てである。滅多に私服を着ない私にとっては少々窮屈だ。
…視線がな。

杏樹や魅月たちに引っ張られ、カフェとやらにも行った。誰々がどうのといった話を山ほど聞かされた。
拓斗と二人で散歩もした。
懐かしい思い出話と共に…。

そして、先程やっと旅館に戻ってきたとこだ。
部屋に戻り、少しゆっくりしていた。
『はぁ…』
窓際の椅子に座って、外の景色を眺める。
夕日が現世の町並みを照らしている。
ふと、足音が聞こえた気がして、振り返った。
バンッ！
突然開いた襖に驚く。
姿を見せたのは…杏樹だった。
随分興奮しているようだ。
『…ど、どうかしたか？』
杏樹の意外な行動に、目が点になる。
杏「隊長っ！お風呂行きましょう！！」
『は、はぁ…。』
お風呂？
魅「露天風呂があるんだって♪"今入ったら、夕焼けが凄く綺麗だろうね"って話してたら、すっかりその気になっちゃったみたいで。」
杏樹のうしろから魅月が姿を見せる。
華恋や江恋もいる。
『そうか…よし、行こう。』
杏樹が目を一段と輝かせた。

着替えだ何だを抱えながら細い廊下を歩いていると、よく知った顔に会った。
龍「あれ？隊長じゃん。」
拓「え！？亜莉亜！？」
『そんなに驚くか！？』
拓「いや…まぁね♪」
龍「どっちだよ！！」