私は慌てて首を振った。
『いや、そうじゃなくて。お前が書類の話をするためにここに留まっているのは分かるんだが、他の二人はどうなんだろうと、な。』
私は、私にすがりついている杏樹と、その横で和菓子を頬張る龍に目をやった。
『とくに、今団子を頬張っているやつ。』
条件を足す。
龍「お、俺？…んなわけないか。」
龍は一瞬だけ顔を上げたが、気にせずまた団子をを食べ始めた。
拓「龍以外に団子食べてる人がいる？」
拓斗が笑顔で龍に尋ねた。
龍がきょろきょろと周りを見る。
そして、亜莉亜、拓斗、杏樹の冷たい視線に気づき、龍はぎこちなく３人の方を向いた。
龍「いませんね。はい。」
亜莉亜は大きなため息をついた。
『見舞いに来てくれたのはありがたいんだが、いい加減隊舎に帰って書類をやってくれないか？』
拓「流石に、お見舞いっていうよりサボりにしか見えないよ。」
龍「むぅ…」
亜莉亜と拓斗にそう言われ、龍は頬を膨らませた。
龍「書類とかめんどいし。」
ボソッと龍が呟く。
ガタンッ
突然椅子が倒れた。
それは、杏樹が座っていたものだった。
杏「今、面倒くさいって言った？」
杏樹は物凄い形相で龍につめよる。
龍「え…あ、いやぁ…その…」
杏樹の勢いに押され、龍はしどろもどろになっている。
『…』
拓「…」
杏樹がこんな風に怒るのは珍しい。
そのため、亜莉亜と拓斗は、杏樹と龍のやりとりを興味深げに見ている。
杏「隊長の命令が面倒くさいっていうの！？」
杏樹はついに、龍の死覇装の襟元をつかんだ。
しかも片手で。
龍「そ、そうは言ってな」
杏「だいたいあんたはね、最近特にだらけすぎなのよッ！この前の戦闘でも何の役にも立たなかったし、もうっ！多すぎて思い出せないじゃない！」