セピア色のメモリー
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ここは亜莉亜のいる虚圏。
差し向けられた刺客との一件があってから、既に数日が経っていた。
本来ならばとっくに尸魂界に帰っていたはずの亜莉亜だったが、刺客に呆気なく薬を吸わされ、眠っていたことを風兎に激怒され、追加指導を受けさせられていた。
しかし、それも、もう終わりに近づいていた。
何だかんだと言って、風兎は亜莉亜の実力を認めていた。
別れのときを前に、風兎は虚圏の乾いた空気の中、亜莉亜を前に、まるで幼い子どもを使いに出すかの如く念入りに言い聞かせていた。
風「亜莉亜、前に、お前に足りないのは心の持ちようだけだと言ったな。覚えてるか?」
『はい、師匠』
亜莉亜はコクンと頷く。
『誰にも負けない、取り入る隙を与えない、そんな揺るぎない心を持てば良い、と』
風「そうだ。だがしかし、俺は、大変なことを見落としていた」
風兎は落胆するかのごとく、ゆっくりと息を吐いた。
『そ、それは……?』
風「もっと根本的な物だ。戦う者としての基本。危機感だ」
ギロリと亜莉亜を睨めば、亜莉亜はばつが悪そうに目を逸らす。
風「いつか言ってたな、平隊士じゃないと。つまりは、少なくともお前は人の上に立つ人間だってことだ。そうなれば、当然のように危険に晒され易くなる。今みたいな、休めと言われて完全に気を抜いて休んでるようじゃ、命が幾らあっても足りねえぞ」
『はい』
風「本当に分かってんのか!?もう一度言うぞ、危機感を持て。もし持てないって言うなら、危機感の概念を持っている信頼できる誰かと、常に一緒にいろ。どうしても一人でいなければならないのなら、絶やさず気を張り巡らして、周りに異常が無いか探り続けろ。刀を抜いているとき、そうでないとき、寝ている起きているにも関わらず、常に、だ。この言葉、絶対に忘れるなよ?」
『……はい』
亜莉亜は、心配そうな様子の風兎に、しぶしぶと了承した。
風「お前は、刀を振ることについては全く問題ない。戦うことについてのセンスはなかなかのものだ。だが、それから一歩離れると、ときには見ていられない程にどんくさい。忘れるな、心に刻め。うっかりで殺られちまったら話にならねえぞ」
怖い顔で風兎は続ける。
いつまでも終わらない言葉に 、亜莉亜はだんだんと、それが面白く感じられてきた。
『……ふふっ』
思わず笑みがこぼれた。
風「あ!?何笑ってんだ、ちゃんと話聞いてたか?」
『いえ、何でも……』
風「てめぇ、人がせっかく!」
けらけらと笑う亜莉亜に、風兎はしびれを切らす。
『ありがとうございます、心配して下さって。でも、もう大丈夫ですよ、分かりましたから』
先程とはまた変わって大人びた笑顔を見せる亜莉亜。
その表情に引き込まれて、風兎ははっと口を閉ざした。
風「なら、良いんだけどな」
長いようであっという間だった、修業の日々が終わる。
亜莉亜は僅かな荷物を手に、尸魂界への入り口をじっと見据える。
風兎の温かい視線が背中を押している。
フードのついた薄い羽織をはためかせ、亜莉亜は足を踏み出した。
強く、強く──
差し向けられた刺客との一件があってから、既に数日が経っていた。
本来ならばとっくに尸魂界に帰っていたはずの亜莉亜だったが、刺客に呆気なく薬を吸わされ、眠っていたことを風兎に激怒され、追加指導を受けさせられていた。
しかし、それも、もう終わりに近づいていた。
何だかんだと言って、風兎は亜莉亜の実力を認めていた。
別れのときを前に、風兎は虚圏の乾いた空気の中、亜莉亜を前に、まるで幼い子どもを使いに出すかの如く念入りに言い聞かせていた。
風「亜莉亜、前に、お前に足りないのは心の持ちようだけだと言ったな。覚えてるか?」
『はい、師匠』
亜莉亜はコクンと頷く。
『誰にも負けない、取り入る隙を与えない、そんな揺るぎない心を持てば良い、と』
風「そうだ。だがしかし、俺は、大変なことを見落としていた」
風兎は落胆するかのごとく、ゆっくりと息を吐いた。
『そ、それは……?』
風「もっと根本的な物だ。戦う者としての基本。危機感だ」
ギロリと亜莉亜を睨めば、亜莉亜はばつが悪そうに目を逸らす。
風「いつか言ってたな、平隊士じゃないと。つまりは、少なくともお前は人の上に立つ人間だってことだ。そうなれば、当然のように危険に晒され易くなる。今みたいな、休めと言われて完全に気を抜いて休んでるようじゃ、命が幾らあっても足りねえぞ」
『はい』
風「本当に分かってんのか!?もう一度言うぞ、危機感を持て。もし持てないって言うなら、危機感の概念を持っている信頼できる誰かと、常に一緒にいろ。どうしても一人でいなければならないのなら、絶やさず気を張り巡らして、周りに異常が無いか探り続けろ。刀を抜いているとき、そうでないとき、寝ている起きているにも関わらず、常に、だ。この言葉、絶対に忘れるなよ?」
『……はい』
亜莉亜は、心配そうな様子の風兎に、しぶしぶと了承した。
風「お前は、刀を振ることについては全く問題ない。戦うことについてのセンスはなかなかのものだ。だが、それから一歩離れると、ときには見ていられない程にどんくさい。忘れるな、心に刻め。うっかりで殺られちまったら話にならねえぞ」
怖い顔で風兎は続ける。
いつまでも終わらない言葉に 、亜莉亜はだんだんと、それが面白く感じられてきた。
『……ふふっ』
思わず笑みがこぼれた。
風「あ!?何笑ってんだ、ちゃんと話聞いてたか?」
『いえ、何でも……』
風「てめぇ、人がせっかく!」
けらけらと笑う亜莉亜に、風兎はしびれを切らす。
『ありがとうございます、心配して下さって。でも、もう大丈夫ですよ、分かりましたから』
先程とはまた変わって大人びた笑顔を見せる亜莉亜。
その表情に引き込まれて、風兎ははっと口を閉ざした。
風「なら、良いんだけどな」
長いようであっという間だった、修業の日々が終わる。
亜莉亜は僅かな荷物を手に、尸魂界への入り口をじっと見据える。
風兎の温かい視線が背中を押している。
フードのついた薄い羽織をはためかせ、亜莉亜は足を踏み出した。
強く、強く──