セピア色のメモリー
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秋「拓斗!いい加減に気づいてちょうだい。あんなのと一緒にいることで、貴方の価値まで下がってしまうのよ?我妻の名に傷をつけるつもり!?」
あぁ、この人が何よりも大事にしているものは、貴族の名誉なのだ。
母が大事にしていたものは、俺ではなく、我妻という家。
それが痛いほど沁みて、拓斗は重い肩をがくりと落とした。
でも、それでも。
拓斗は悲痛な面持ちを、秋江へと向けた。
拓「それでも俺は、亜莉亜が大好きだよ。そのためなら、貴族の名誉なんて、そんなものどうだっていいと、そう思ってる」」
秋江がひどく憤慨するだろうことは、目に見えていた。
しかし、だからといって、もう母に従いたくはない。
沈黙。
秋江は、ふと顔を背けると、おずおずと立ち上がった。
秋「──拓斗、ちゃんと話をしましょう。お茶を淹れてきます」
立ち去る秋江の静かな足音を聞きながら、拓斗は少しほっとした思いでいた。
話をするということは、少しでも理解しようとしてくれるのではないか。
そんな希望を抱いて。
秋江が帰ってくるまでの間、拓斗は部屋の中をぼうっと眺めていた。
秋江の趣味である生け花がところどころに飾ってある。
よく整頓された、静かな空間の中で、その花々は引き立って見える。
床の間には高そうな掛け軸と、美術品としての刀。
元々は護身用に置いていたんだっけ。
母様はそのような刀を振るうことはないから、自然と愛でるだけの品になってしまった。
落ち着いた雰囲気の部屋のはずなのに、拓斗には、何か黒いものが渦巻いているように感じられて仕方なかった。
そうしている間に、秋江が帰ってきたのだろうか、床を擦る音が近づいてきた。
秋「お待たせしました。拓斗、ゆっくりとお話ししましょう」
秋江は手慣れた動作で拓斗の前に茶を置き、自分は反対側に座った。
拓斗は目の前の湯飲みを一瞥し、秋江へと顔を向けた。
拓「母様──」
秋「お飲みなさい、拓斗。そのように焦ってばかりいれば、通じる話も通じませんよ」
いつになく優しい口調で語り掛ける母に、拓斗は肩の力を抜いた。
やっと、ちゃんと話を聞いてくれるのか。
文月の考えは間違っていなかった。
もう大丈夫なのかもしれない。
自分の努力は無駄ではなかったのだ。
拓斗は温かい湯飲みを手に取り、口を付けた。
指先に伝わる暖かさが、喉を潤す熱が、秋江の優しさが、少し、嬉しかった。
もっと早くに話をしようと、すべきだったのかもしれない。
そうすれば、もっと──
拓「かはッ……!?」
拓斗は我が目を疑った。
拓「血、?」
異常な熱さが沸き上がる。
体の中が腫れあがり、息の止まるような圧迫感。
あまりの苦しさに、何も考えることができない。
拓「何……こ、れ……」
汗が吹き出し、拓斗の肌を濡らしてゆく。
回らない頭で、必死に状況を理解しようとする。
秋「──貴方がいけないのですよ、拓斗」
朦朧とする意識の中で、秋江の声だけが反響してぐるぐると責める。
拓斗は倒れ込みながら、秋江の動きを目で追う。
秋「我妻の名を汚すなら、貴方はもう必要ありません。貴方があの娘に執着するのなら、貴方ともども死になさい」
懐から短刀を取り出し、それを抜く。
銀色の刃が、拓斗を冷たく見据える。
秋「死ねッ!」
あぁ、この人が何よりも大事にしているものは、貴族の名誉なのだ。
母が大事にしていたものは、俺ではなく、我妻という家。
それが痛いほど沁みて、拓斗は重い肩をがくりと落とした。
でも、それでも。
拓斗は悲痛な面持ちを、秋江へと向けた。
拓「それでも俺は、亜莉亜が大好きだよ。そのためなら、貴族の名誉なんて、そんなものどうだっていいと、そう思ってる」」
秋江がひどく憤慨するだろうことは、目に見えていた。
しかし、だからといって、もう母に従いたくはない。
沈黙。
秋江は、ふと顔を背けると、おずおずと立ち上がった。
秋「──拓斗、ちゃんと話をしましょう。お茶を淹れてきます」
立ち去る秋江の静かな足音を聞きながら、拓斗は少しほっとした思いでいた。
話をするということは、少しでも理解しようとしてくれるのではないか。
そんな希望を抱いて。
秋江が帰ってくるまでの間、拓斗は部屋の中をぼうっと眺めていた。
秋江の趣味である生け花がところどころに飾ってある。
よく整頓された、静かな空間の中で、その花々は引き立って見える。
床の間には高そうな掛け軸と、美術品としての刀。
元々は護身用に置いていたんだっけ。
母様はそのような刀を振るうことはないから、自然と愛でるだけの品になってしまった。
落ち着いた雰囲気の部屋のはずなのに、拓斗には、何か黒いものが渦巻いているように感じられて仕方なかった。
そうしている間に、秋江が帰ってきたのだろうか、床を擦る音が近づいてきた。
秋「お待たせしました。拓斗、ゆっくりとお話ししましょう」
秋江は手慣れた動作で拓斗の前に茶を置き、自分は反対側に座った。
拓斗は目の前の湯飲みを一瞥し、秋江へと顔を向けた。
拓「母様──」
秋「お飲みなさい、拓斗。そのように焦ってばかりいれば、通じる話も通じませんよ」
いつになく優しい口調で語り掛ける母に、拓斗は肩の力を抜いた。
やっと、ちゃんと話を聞いてくれるのか。
文月の考えは間違っていなかった。
もう大丈夫なのかもしれない。
自分の努力は無駄ではなかったのだ。
拓斗は温かい湯飲みを手に取り、口を付けた。
指先に伝わる暖かさが、喉を潤す熱が、秋江の優しさが、少し、嬉しかった。
もっと早くに話をしようと、すべきだったのかもしれない。
そうすれば、もっと──
拓「かはッ……!?」
拓斗は我が目を疑った。
拓「血、?」
異常な熱さが沸き上がる。
体の中が腫れあがり、息の止まるような圧迫感。
あまりの苦しさに、何も考えることができない。
拓「何……こ、れ……」
汗が吹き出し、拓斗の肌を濡らしてゆく。
回らない頭で、必死に状況を理解しようとする。
秋「──貴方がいけないのですよ、拓斗」
朦朧とする意識の中で、秋江の声だけが反響してぐるぐると責める。
拓斗は倒れ込みながら、秋江の動きを目で追う。
秋「我妻の名を汚すなら、貴方はもう必要ありません。貴方があの娘に執着するのなら、貴方ともども死になさい」
懐から短刀を取り出し、それを抜く。
銀色の刃が、拓斗を冷たく見据える。
秋「死ねッ!」